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悪と善と妹(仮)  作者: 結城コウ
33/59

ハッピーエンドじゃ終われない

「……」

左手が動く、怨念のラインは既に切れていた。

そのラインから比屋根玲……玲を取り込んだ事で左手の呪いは玲の元へ還っていった。

「兄様!」

聖が背中に抱き着いた。

それが成功したという実感だった。

「聖……お嬢様」

「兄様、お怪我はありませんか!?」

「ええ……大丈夫、です……帰りましょう、聖お嬢様」

空を見上げると主を失った事で世界が崩落しかけていた。

此処で死んだ者達は怨念を此方に遺し、輪廻(りんね)へと還っていくだろう。

だが、生きている自分達は此処から脱出する必要がある。

「……玲」

『分かってる。元は自分の世界だもん。やってみせるよ』

「兄様?」

玲のイメージが空中に浮かんでいるが、聖には見えないのだろう。

恐らくは玲を取り込んだ、自分にしか……

「大丈夫です、聖お嬢様」

聖の手を握った。

『行くよ!』

一瞬視界は消えた。

手に感じる聖の温もりだけを確かめていた。


視界が復活すると、夜の暗闇に満ちた空が映った。

都会である以上星は見えなかったが、暗闇の中に浮かぶ月が自分達の生還を証明していた。

「兄様!わたし達、帰ってこれたんですね!」

場所は最初に跳んだ屋上への階段ではなく、彼方(あちら)の世界で最後に居た屋上だった。

「ええ、帰りましょう。聖お嬢様」

携帯を確認すると電波によって時間が修正される。

それによると自分が跳んだ時間から十分程度しか経っていない。

光治郎氏に十分で戻ったと伝えれば、拍子抜けするだろうな、と光治郎氏に電話を掛けようとした。

「本当に、本当、に…………よかっ……」

そこで聖が倒れた。

「聖お嬢様!」

聖に駆け寄り、抱えると聖の身体は熱を帯びていた。

「これは……」

暗示の時や手を繋いだ時はこんなに熱は帯びていなかったが、緊張から解放されて疲労が一気に来たせいだとでも言うのだろうか?

とにかく、光治郎氏に連絡を取ろうとした――その時だ。

「――――なにをしてるの?」

上空からの声……その声に聞き覚えがあった。

頭を上げ、声の主を見る。

予想は当たる。

声の主は純白の死神――あの魔法少女だった。

「……なにって」

「ここは小学校だよ?そして深夜……さらについさっきよくないモノを感知したの……ここで」

「……」

玲の世界が開いた事を言っているのだろう。

「更に、キミにはそのよくないモノを感じる」

魔法を使う者の中には悪の力を探知出来る者もいる。

目の前の魔法少女はその厄介な類いだ。

取り込んだ玲と『親殺し』、扱う『悪』の力……心当たりはいくらでもあった。

「そして、キミの声を聞いた事がある」

「……」

誤魔化す事は出来ない。

仮に事実を伝えたところでこの身が『悪』である事と魔法少女の仲間を消した事に変わりはない。

――――問題を解決し、聖や玲を助けた。

それでハッピーエンドで終わらない、終わるはずがない。

この身は『悪』の具現なのだから。

「……」

携帯の通話ボタンを押し、聖に持たせる。

聖の虚ろな目に必死に視線で訴えかけた。

そのうえで聖に銃口を突き付けた。

「……人質のつもり?」

「察しがいいな……なら、次に何を言うかわかるだろ?」

「『こいつの命が惜しければ』……その後は何を要求するの?」

「なら、謙虚に見逃せと言おう」

「…………そう」

背筋に悪寒が走るより早く、死の一閃がこの身を貫こうとした。

『アクトおに――』

玲が叫ぶ――――選択の余地はない。

自分が出来る最大の力――『親殺し』でそれを受け止めた。

「!?」

だが、力負けした。


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