咎人
少女は怨念の海の中に溺れていた。
自分はただ、他人事してそれを観測する。
何故ならこれは報いなのだから。
――どうして、みんなわたしをいじめるの!?――
少女は叫ぶ。
己の咎を忘却して。
だから、怨念に喰らわれる。
少女は元から小さかった身体を更に小さくしながらも必死に抗い続ける。
それを同情したりなどしない。
ただ、自分の行く末も似たようなモノだと他人事でも完全にそうだと思わないようにした。
そしてその思いが無意識に自分を怨念の海へと足を進める。
激流がこの身を比屋根玲へと押しやっていく。
この怨念は比屋根玲に対するものだ。
自分を必要以上に傷つけようとはしなかった。
「……」
――やめてよ。やめてぇっ!――
「比屋根玲」
――わたしをいじめないでっ!――
「比屋根玲っ!」
――……あ……――
掌に収まる程に喰い散らかされた比屋根玲の魂をすくい上げると、イメージが変化した。
「此処は……?」
自分か相手なのか何方の声なのかわからない。
「怨念の本流の中……ただ、此処だけは清流」
それは境界線が曖昧になったからだ。
「強いて理由を上げるなら此処が境界だからだろう」
自分は相手であり、相手は自分。
「……自身の咎を自覚した。私はずっと自分を見失っていた」
同化していた。
「自分を失っていた間に悪魔のような所業をしていた」
性質としては酷似している。
「自分を失っていた間に復讐も終わっていたなんて認めたくなかった」
ただ、彼女の方が不幸だったと思う。
「だから、私は見て見ない振りをして……そんな事はないと抗っていた」
その分、彼女の心は弱かった。
「だけど、咎は咎だ。裁きは下る」
彼の心は彼女よりは強かった。
「仕方のない事だと思う。だけど、私の人生はなんだったのだろう?」
その分、いずれは彼女より罪深くなるだろう。
「生前はいじめられ、死後は正気を失い、知らぬ間の罪で地獄に堕ちる」
ただ、彼の場合は承知の上だ。
「先送りぐらいなら出来る。地獄があるなら、いずれは堕ちる」
幾つかの不可抗力はあったが。
「どうせ、地獄に堕ちる者同士だ。力になってほしい」
だから、彼女を消す事は出来なかった。
「互いの咎を互いに背負おう。地獄には一緒に堕ちよう」
彼女は不可抗力によるところが大きい。
「少し前にあったばかりの貴方と?」
だから、救う事は出来なくとも。
「確かに。でももう時間も選択肢もない。一人で堕ちるというなら構わないけど」
一緒に抗いたいと思った。
「ううん。私……わたしはあなたを信じる事にする」
正しいモノに抗いたいと思った。
「わたしを取り戻してくれたあなたを……」
いつかはこの身に返ってくる罪だとしても……
「宜しくね、アクトおにー……ちゃん」
「ああ、最後まで一緒に戦おう……玲」




