灰は灰に、塵は塵に
「……よし、準備は終わりだ」
全ての行程を終え、やり残した事がないかの確認も終わっていた。
後は魔法陣を起動させるだけ。
その後の事は、正直比屋根玲がどう動くかで変わってくるのだが、恐らくは此方の予想通りに動くとは思う。
その能力はどうであれ、比屋根玲の精神は見た目通り小学生の頃から成長はしていないと思う。そして、今まで自分に対する対抗手段・策を持ち得る者も現れなかった事から駆け引きのような事も考えてさえいないだろう。
勿論、それらは証拠がある訳ではない希望的観測なのだが、今はそれに縋るしかなかった。
「起動完了」
魔法陣を中心に学校自体が揺れていく。
「聖お嬢様、私が言うまで手を離さないで下さい。」
「は、はい……あ」
此方が差し出した手を掴もうとして聖は固まった。
「どうしました?」
「あ、あの……わたし、手を洗って……あ、ごめんなさい。なのに先程裾を……」
構わず手を握った。
「今はそんな事を気にしてる時ではありません」
「あ、はい……」
聖のほうを一瞬気にかけたがすぐに魔法陣に視線を移す。
魔法陣は余剰したエネルギーが電流を走らせながらもその中心部が接続したラインの役割を果たさんと光の柱が空に向かって伸びて行った。
「なに、これっ!」
異変を察知し、現れた比屋根玲の絶叫だった。
魔法陣を中心にして此方の反対側にふよふよと浮いていた。
聖の手を離し、庇うように前に出る。
「遅かったな。ゴースト」
「おにーさん……何をしたの!?」
「……この世界を現実世界に引き上げる。その為のラインを繋げた」
「な、なにそれっ!でたらめだよ!」
「出鱈目か……果たしてそうかな?元々は現実世界を模倣した世界だろう?ならば繋がれば元の世界に帰れる」
「わ、訳のわからない事を!」
「安心しろ……お前の居場所はないよ、ゴースト」
「!?」
「お前の魂はこの世界がある事で保たれている。それが現実世界に帰るんだ……潮時という訳だ。成仏の時間が来たと言ってもいい」
「そんな事許すと思う!?」
比屋根玲は魔法陣に向かっていく。
「それは此方の台詞だ!」
銃を抜き比屋根玲に迫る。
「遅い!こんな物!」
比屋根玲は魔法陣の中心にあった本に呪いを働きかけ、本は破裂した。
「ああ!」
聖が声を上げる。
その声を背にして――――比屋根玲に引き金を引いた。
「本命は此方だ」
「っ!?」
「――――ライン接続――完了」
魔法陣から透明な手が吹き出し、近くまで迫っていた比屋根玲を捕えた。
「な、なにこれぇっ!?」
比屋根玲は透明な手によって魔法陣の中心の空間へと磔にされる。
「本命はこっちだよ、ゴースト……いや、比屋根玲」
「な、なによ!?なんなのっ!?」
叫ぶ比屋根玲に向けて魔法陣の中に歩みを進める。
「言ったはずだ、お前の復讐は当に成っていると」
「は、離せぇぇぇええええぇえええっ!!」
「かつて加害者だった存在以外への呪いは単なる八つ当たりか力を得て気が大きくなったお前の遊びだ」
魔法陣の指定の場所に左足を打ち込む、それでこの身は新たなラインを繋げる為のコードとなり、コードの役割を持った左手を一時的に解放出来た。
学校の中にある死体は魂を肉の檻に縛られたまま、比屋根玲への怨念を抱き続けていた。
学校中の死体を水と『悪』によりラインを繋ぐ事でその怨念を今、比屋根玲へと叩き込む。
「その報い――受けてもらうぞ」
コードの先端……左手を比屋根玲に撃ち込んだ楔――自身の『悪』と連結した。
それにより、自身のものではない怨念が比屋根玲へと流れていった。
「怨念はただ……怨念に還れっ!比屋根玲っ!」




