下準備
「よし、次だ」
聖の手を引き教室を出る。
比屋根玲の打倒方法は得ていた。
後は下準備と実行。
とは言え、初めて試す事というのもあり多少の不安もあった。
「は、はい……」
聖の疲労は目に見えて明らかだった。
「聖お嬢様?」
「だ、大丈夫です」
顔色は明らかに大丈夫ではない。
「少し休みましょう」
休める場所として先程の保健室を考えたが、自分はともかく聖があの場所で休めるとは思えなかった。
「兄様、わたしは……」
「空き教室が先程あったのでそこにしましょう」
有無を言わさず、聖を背負いあげた。
ちなみに空き教室とは死体のない教室という意味でもある。
比屋根玲は殺した死体を適当な部屋に入れているようだ。
犠牲者は小学校という事もあって大抵が子供。
その子供の背丈に合わせて学年毎に振り分けるように教室の机に座らせたり、壁にもたれ掛らせてそういう死体を何体か集めて談笑させてるように見せかけていた。
悪趣味な人形遊びだ。
ちなみに、津田は小学校にしては背丈のあるほうだ。
保健室に置かれたという事は大人のかわり=保険医という事だろう。
その割には適当に置かれていたのは……遊んだ後という事だ。
「に、兄様?」
「ん……どうしました?聖お嬢様」
「そ、その左手……」
「左手……ああ、これですか。隠してたのにバレてしまいましたね」
左手はどす黒く濁り、まともに動かない、比屋根玲の呪いだ。
聖の手を引くのも作業を行うのも右手で行っている。
「兄様、どうして……」
「流石に無傷で勝つのは難しかったので」
比屋根玲を取り込めば解除できると思っていた事もあり、左手は盾にした。
あの場面ではあれがベストだと思っている。
しかし、余り時間を掛けすぎると心臓にまで呪いが届き死に至るだろう。
そうはならないにしてもこのままでは左手は壊死する。
まぁ、自分に限れば壊死くらいは大した問題ではない、帰りさえすれば義手の一つでも用意出来る。
「え……でも、兄様はあの時、幽霊を圧倒してたじゃありませんか?」
「あれは挑発ですよ。簡単に乗ってくれて助かりました」
比屋根玲は一方的に相手をいたぶる事しかしていなかった以上、そういった一種の駆け引きのようなものには疎いと感じる。
「でも、だったらもっと安全な方法で……」
「そんなものはありませんよ……殺し合いなんですよ、あれは」
「っ……兄、様……」
聖は何か言いたげだったが、それ以上何も言わなかった。




