彼女の残り香
場所は小学校の校舎、その屋上へと続く階段。
自身と聖が通っていた事もあり、転送は容易く成功した。
転送された時は遅かった。
空間に現れた歪みが閉じたところだった。
「チィ!」
歪みがあった場所まで迫る。
だが、そこにはもう何もない。
あるのは屋上の扉から伸びた糸が階段を面にして歪な魔法陣となっているだけだった。
「これって……そういう事だよな」
その時、携帯電話が鳴った。
発信者は此方の予想通り、若月光治郎氏だった。
「……はい」
『二神君、君に……』
「お嬢様がいなくなったんですね」
『何故それを……まさか!』
「電話がもう少し早ければ間に合ってました。感知した時には遅かったんです」
聖にはどんな時でも着けておくようにとネックレスを送ってある。
母に教えられた魔法の技術と自身の『悪』の力によって作られていて、装着者……つまりは聖に危害が及ぼうという時、相手に向かって衝撃波と此方の脳へ信号が発信される仕組みになっている。
『どういう事かね!?』
「……呪いの跡、空間の歪み……恐らくは異空間に飛ばされたんでしょう」
人間相手ならそれでなんとかなっていた。
仮に事故などなら、ただ転ぶだけでも聖を守っていた。
だが、今回は違う。
そんなモノ、比べものにならない脅威だった。
『なんて事だ!セキュリティ共はなにをやってたんだっ!』
「今は責任の所在を追及する時間はありません」
『あ、ああ……そうだった。二神君、頼めるかね?』
「転送装置を使えば、或いはですが向かえます……ペンダントの残光を辿る以上百%とはいきませんが」
『それでも頼む』
正直に言えば勤務時間外での事に責任はないと思うが、後々の事を考えればここで光治郎氏に恩を売っておくのも悪くないだろう。
「……了解」
残光を頼りに転送装置を使用した。




