抜刀
ポニーテールの一振りはこの身を肩から腰に掛けて二つに両断していた。
もっとも、その刀身が残っていたなら、の話だ。
根本からこちらの一発で撃ち抜かれ、宙を舞い、今、地面に突き刺さった。
此方はほぼ無傷だ。
二発撃った以上の消耗はない。
父がこの武器を遺した意味がわかった。
『悪』の波動を厳密には変換するのではなく、水で薄める事で少ない『悪』で戦える。
その濃度の薄い『悪』で十分、レーザー兵器並の威力を出せる事を父は知っていたのだ。
「なっ……にをっ?」
ポニーテールは放心していた。
ただ、それは命取りになる。
「和菜っ!」
ポニーテールは咄嗟にしゃがんだ。
彼女の頭があった場所を『悪』の波動……黒い光が通過した。
「体勢を立て直してっ!」
援護担当がスカートから新たな銃を出そうとする。
「させるかっ!」
援護担当に銃を向けようとした瞬間、横腹に衝撃が走った。
ポニーテールが低い体勢のまま蹴りを見舞ったのだ。
「ぐっ……」
此方が体勢を立て直した時には援護担当の手には銃が完成しようとしていた。
組み立て式の――――機関銃
それに気づいた時には遅かった。
援護担当のマシンガンが火を噴いた。
「冗談……!」
遮蔽物になる噴水の中心に逃げ込む。
それでもマシンガンは弾丸を発射し続ける。
此方を追い込む為に。
「公共の場でも関係なしか、STRIKERS……!」
此方が毒づくと同時に――また、鈴が鳴った。
「助かった、遥香。其方は回り込んでもらいたい」
ポニーテールの腰には二本目の刀がある。
「挟み撃ちにするつもりかっ!」
低い体勢のまま腰を上げる。
流石に背後を晒しながら戦うのは避けたい。
後退は駄目だ、目の前の女は背中を見せた瞬間に此方を両断するだけの技量を持っている。
やるなら正面突破。
それさえ叶うなら、むしろ回り込まれるのは好ましい。
援護担当を背にしてポニーテールは戦わなければならない。
そうなれば、援護担当が他の場所に移動する僅かな間とは援護担当も迂闊に手を出せない一対一の状況を作れる。
一対複数の定石は各個撃破。
一瞬でも一対一を作れば、勝機は見えてくる。
「其方が先の以上に連射できていれば負けていた。だがもう無理じゃ、諦めるがいい」
丁度、今飛び出せば援護担当の死角になる。
「……ぬかせ」
足のばねを使い勢いよく飛び出す。
「『風迅』――」
「もう一度だ」
互いの視線が絡みあう。
ポニーテールの太刀筋を見逃すまいと、その肘の動きを見極める。
「――抜刀」
「そこっ」
完璧な場所に撃ちこんだ確信があった。
刀は再び宙を舞うのが、脳裏に浮かぶ、先程のお返しとばかりに此方の蹴りを見舞わせてやろうと思った瞬間、疑念が浮かんだ。
ポニーテールは何故、あれ程の自信を抱いていたのだろうか?
一度、破られた居合抜きを何故それ程の自信を持って放つ――?
否、先程とは違う。
違う何かを、言葉を口走っていなかっただろうか――
「つあっっっ!」
咄嗟に身を守った。
後先を考えずに与えられた唯一の武器である銃を盾にした。




