きっと
「頼まれていた射録石だ」
「ありがとう、これで明日は心置き無く写真が撮れるよ」
「それは何よりだ。……今日の取材はどうだった?」
「まぁ、それなり……かな」
「そうか、それならば良かった」
気まずい沈黙。私はレイモンの口から放たれた言葉は嘘だと知見し、レイモンド自身も嘘を見抜かれたことを察している。
「……ごめん、嘘。全然駄目だった。表面上はにこやかだったけど、僕に対する嫌悪感が透けて見えて……当たり障りなことしか訊けなかった……!」
「そうか」
最早挽回は不可能。店主の話から察するに此度の取材は相当に無理をした願いだったはずだ。
それが完全な失敗。夢が破れたと言っても過言ではない。
「レイモンド、一つ聞いてもいいか?」
「なんだい?」
「この国の選挙は立候補者に何かしらの制限はあるか?」
「いや、無いはずだよ。誰でも平等にチャンスがあるよう選挙費用も国から支給される」
「昼間に選挙ポスターを見かけたのだが、その制度にしては立候補者が少ないな」
「あれはあくまで現在の立候補者だからね。具体的には明日エントリーの時正式決定することになる」
私の言わんとする事を察し、レイモンドの表情が一瞬明るさを取り戻すが、すぐさま元の陰鬱とした表情へ戻った。
「無理だよ。君の言いたいことは分かる。明日飛び込みで立候補する人の中に当選する可能性のある人がいればって事だろ? だけど飛び込みで立候補する人はほぼ記念にって人達だ」
それもそうか。本気でやるとすれば党首達同様事前にポスターを掲示するなどしているだろう。
「明日演説終了後に一回目の投票がある。仮に本気で出たとしてもそこで脱落するのが目に見えてるからね」
「一回目ということは二回三回と複数回に分けられるのか?」
「まず明日の投票で六人に絞られる。その後一月ごとに三回、三人、二人、一人と数を減らしていく」
「ポスターにあった党首は六人、その六人が勝ち上がるのは明瞭か」
「取り敢えず僕はもう寝させてもらうよ。寝れば頭が少しはスッキリするだろうし、出来ることは殆ど無いのかもしれないけど、あればそれに全力を尽したい」
「そうだな、それがいい。──きっと明日は忙しくなる」




