ブルドルグ
「あれが首都ブルドルグだよ」
雲にすら届きそうな大きな城がそびえたっている。街は城壁に囲まれているが、城門はなく人々は自由に出入りしているようだ。
「なるほど、首都だけあって他の土地より随分と栄えているようだ」
「観光名所も複数あるからね。機会があれば見てみるといい」
「あの城にも入れるのか?」
「今は国会議事堂として使用しているから基本的に一般人は立ち入り禁止だけど、一部分は観光出来るように解放されてるよ」
禁止されたことはしたくなるのが人の性か。目立つ事も相俟って興味を惹かれずにはいられないな。
「君は記者だろう? あの城には行かないのか?」
「一応行く予定だけど、入れても専用の部屋までだよ。それでも構わないかい?」
「それで十分だとも。感謝する」
城の中は見た目以上に豪勢なものだった。廊下の壁には金の装飾に、とても興味深い絵画や骨董品の数々。国会議事堂と言うよりは博物館という言葉がよく似合う。
そしてその景色案内された部屋に足を踏み入れるとより顕著になった。
「ヴォルフさん? どうかした?」
「すまない、思わず部屋に広がる景色に目を奪われてしまった。少しこの部屋を見て回りたいのだがいいか? 無論目の届く範囲内に身を置く」
「それは――」
「構いませんよ」
不意に背後から声を掛けた男性は金髪碧眼の爽やかな青年。私よりも一回り背が高く、中々の威厳を醸し出していた。
「センディンス社の記者は男性が一人と聞いていましたが、こちらの可憐なお嬢様は?」
「妹だ。見聞を広めたいと兄に無理を言って同行させてもらった」
「それはそれは、中々に聡明な妹さんですね。さぞかしご両親が立派なのでしょう。初めまして、民選党党首ジェンキンス・ブロッサムです」
「これはどうも。ヴォルフと呼んでくれ」
握手を交わすと一見華奢な錯覚を覚える見た目とは裏腹に、力強さが伝わってくる。どうやら衣服に隠された身体は常人以上に鍛えているようだ。
「初めまして、センディンス社のレイモンド・パラッシュと申します。本日はこのような場を設けて頂き感謝します」
「通常ならばこのような一対一の取材は断るのですが、センディンス社は公平な記事を書く事で有名ですから。どうぞお座り下さい」
有名な、という事はレイモンドはそれなり以上の収入を得ているはず。しかし宿場町で持ち合わせが無いと言っていた。
ということは経済の流れが悪いのか、お金を必要以上に持ち運ばない主義なのか、はたまた別の要因があるのか。
「……今考えるべきことではないな」




