支持
「なるほど、支持政党なし。ではやはり選挙では白票を?」
「いや、メラフ・カインドルフに入れるよ」
「それは何故ですか?」
「ドワーフだからだよ。俺がエルフだったらエルフのラミド・メーテッドに入れてる。どうせ今回も人族のジェンキンス・ブロッサムだろうからな。せめてもの抵抗だよ」
ということは支持政党なしという事か。
先程から数人に聞いたが、どの人たちも答えは似たり寄ったり。人族の中にもジェンキンス氏を支持しない人達が増えてきている。
やはり皆辟易してきているのだろう。もし、こんな中圧倒的カリスマ性を誇る人物が出てきたら――
「仕事熱心で何よりだ」
「ヴォルフさん……」
石鹸の香りが嗅覚を擽る。女性は長風呂が多いと思っていたけれど彼女は例外のようだ。
「お前さん、なんでも人間の女なんか連れてるんでぇ」
「あ、これは――」
「妹だ」
予期しない言葉に思わず言葉が詰まる。幾ら気を和らげるためとはいえ妹で通るのか?
「耳が違うじゃねぇか」
「義理の妹だ。その男、レイモンドの姉が人族と結婚してな。一応エルフとのハーフなのだが、どうやら人族の血が濃ゆく出てしまったらしい」
確かにそんなエルフもいるにはいるが、それでも人族とは若干見た目が変わってくる。どう考えても苦しい言い訳だ。
だが余りにも堂々と言い切るため、ドワーフの男はそんな嘘を信用してしまったらしい。
「私には構わず仕事を続けてくれたまえ」
「……あっはい。では続いて質問なのですが新政府に求める事は何ですか?」
「求める事ねぇ。取り敢えず経済回して生活を楽にしてくれたらそれでいいや」
まぁそうだろう。寧ろそれを求めない人々など存在しない。
「ところであんちゃん、さっきから質問ばっかしてるが、あんたはどこ支持するんだ?」
「え、私ですか? 私は特にどこでも……」
そう言えば考えたこともなかったな。いつも聞くばかりで白票すら入れようとしなかった。
「全くこれだから最近の若いもんは。自分の国の事なんだから票入れることくらいしろよな」
話を聞いていた周りの人々からも同意の声が上がる。
選挙に関する仕事をして自分自身は何の関心も無いんだ。ああ、恥ずかしくて逃げてしまいたい。
「ご老人、それは違うぞ」
「……ヴォルフさ――」
私の口を止めるように掌が差し出される。黙っていろ、ということなのだろう。




