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国家反逆罪

「ジェンキンスさん!!」

「どうしました? そんなに慌てて」

 こんな朝早くに駆け込んでくるとは、余程の事があったのでしょうか?

 サドラが寝返ったとか? いや、彼は損得勘定で動くのが常。そんな事は誰でも予想はしているはず。

「それがっ……ゴホッゴホッ」

「一旦落ち着きなさい。ほら、水を飲んで」

 相当喉が乾いていたのか報告に来た秘書は一気に水を飲み干した。

「それあ……はぁ、ヒトラーが……!」

「ヒトラーがどうしました?」

 やはり彼か。動きが読めない上、常にこちらの二手、三手先を行くような人物。何かを仕掛けてきたのは明白。しかし一体何を──「ヒトラーが議事堂を占拠しています!!」

 彼は今何と? 議事堂を? 占拠? ヒトラーが!?

「そんな馬鹿な!!??」

 このタイミングで何故そんなことを!?

 サドラがこちらに付き、ことを急いた? いや、そんな愚直な行為をするような人間ではないはず。

「どうしますか!?」

「魔導士団を呼びなさい! 一旦議事堂を制圧するのが先です」




「どうしますか? 配置は正しく素人ですが、数はそれなり以上です。正面からの突入は避けたほうが懸命かと」

「いや、正面から行きます。彼女のしている行為は立派な国家反逆罪。このようなテロ行為に卑怯な手を使えば同じ思想を持った人たちが増長しかねません。だからこそ正面から圧倒的な戦力差を示し制圧します。それにいくら数が多くとも彼女の親衛隊は魔法が使えない人々のはず。問題ありません」

「了解いたしました」

「それともう一つ。あくまで制圧だけです。決して殺してしまわないようお願いします」




 魔導師団とは国中から集められた、与党党首のみが命令を下せる魔法のエキスパート。

 故に魔法の使えない素人など相手になるはずもなく、制圧はスムーズに進んでいった。

 しかしだんだろうか、この違和感は。本当にこの程度の戦力で、この国を乗っ取る気でいたのか?

「ヒトラーを発見しました」

「案内して下さい」

 彼女は議事堂の大統領席に深く腰を下ろしていた。

 魔導師団に囲まれ、自身を守る者が誰一人いないこの状況で、まるでこの席は自分のものだと主張するかのように、威風堂々と。

「事を急き過ぎましたね。あなたはもう少し聡明な人物かと思っていたのですが、残念です」

「聡明かどうかは大多数の人間が客観的に決めることだ。個人の主観ではない」

「あなたと口喧嘩をする気はありません。あなたを拘束し、裁判を受けていただきます。罪状は国家反逆罪。有罪になれば、禁固刑でも無期懲役でもなく、死刑になります」

「有罪になればの話だがな」

 そう言うとヒトラーは不気味に口角を上げた。

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