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作戦

 支度を終え、何時ぞやの如くベッドに二人並び腰掛けると、レイモンドが静かに私に視線を送ってくる。

 早く聞きたいという意味と、言葉にしてまで急かすつもりは無いという二つの意味を合わせた意思表示。

「何故全員で報告させる形を取ったか。理由は二つある。まずは共同意識の刷り込みだ。隊という形をとる以上、必要不可欠。そこで全員が同じ行動を取ることに、より強い連帯感で結ばれる」

 人は他者に共鳴する。同じ時に、同じ行動をすれば更に効果は増す。

「そして寮舎という環境。衣食住を共にすればその効果は最大限まで高められる」

「しかしそれはついでで、もう一つの理由が本命、だろう?」

「そう、正しくそちらが目的そのものと言っても過言ではない」

「その理由とは?」

「実例を作ることだ」

 顎に手を当てて思案を巡らすが、今ひとつ確信は得られないようだ。当然だ。寧ろこれで勘付いたのならばジェンキンスにも勘付かれる恐れがある為、作戦を変えねばならなくなる。

「今回の訓練の目的は話したか?」

「碓か忠誠心を試して、スパイを炙り出す為のものだって聞いたけど」

「建前上はな。だがはっきり言ってしまえばスパイを炙り出す必要はないのだ。そもそも炙り出せなかった時のリスクが高すぎる。親衛隊募集の名目で集めた以上多少の訓練には耐えられる者を送り込んでいるだろうからな」

「え? でもそれじゃあこちらの作戦がダダ漏れじゃ――」

 思考によるもの、と言うよりは直感。だがレイモンドの表情は見る見る疑問が確信へと変貌を遂げる。

「そうだ、何も炙り出す必要はない。そうだ、引き入れてしまえばいいんだ!」

「そう、私が今回努力すれば報われるという実例を作った。人を従わせるには恐怖か報酬どちらかが必要だ。だが恐怖による支配はまず間違いなく寝返る。となれば報酬が相応しい」

「だけど報酬を先に与えてはそのまま逃げられる可能性があるから、その線はなし。即ち後払い」

「しかし人はその手に貰うまでは不信が拭えない。だが私はどうだ? ブクブクと太り、汗だくのオークに肩を貸し、共に歩んだ。あの光景を見た者達は例外なく思ったはずだ。彼が評価されるのであれば自分でも、と」

 人は恐怖や痛みには耐えられるが、甘美には耐えられない。それが偶発的に発生するものではなく、他者から確実に齎されるものであった場合尚の事。

「こんな敵地に送られるのだ。雇い主との信頼は推して知るべしだろう」

「スパイじゃない人達は評価された実例が有るから、皆より一層努力するはず。皆のやる気を刺激した上で、忠誠心を高めるこれ以上無い作戦だ」

「明日から私はやる気のないもの、規律を破るものはとことんまで罰し、才があるものを厚遇する。人間は競争心から嫉妬する生き物だ。我こそはとより一層奮起するだろう」

 私の浮かべる笑顔に、レイモンドは引き攣った笑顔を浮かべた。そう、ついに彼には尊敬とは別の感情が生まれ始めたのだ。

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