募集
「頼みたいこと?」
「人手が欲しい。それも相当数で、信頼出来る赤の他人だ」
「何故?」
「情報を流すためだ」
偽情報を看破するには先に偽情報を流してしまえばいい。
あいつは嘘つきだと叫ぶ人物が、オオカミ少年であれば誰も信用はしない。
「ジェンキンスかサドラかは分からんが、予想以上の私の躍進に奴らは必ず妨害行為に踏み切る。その一つが偽情報の流布だ」
「なるほど。情報を流される前に流してしまうと」
「そうだ」
特定の人物への評価は無関係な第三者の口から語られて初めて効果を持つ。
ラミドが珍しく考え込む。当然の反応ではある。
この作戦はジェンキンスに察知されてはいけない。その為信頼関係が必要不可欠。
しかし噂を流す人間が親類や懇意にしている相手では聞く人間が身内びいきとしか思わない。
だからこそ信頼出来る赤の他人という相反する二つの要素が必要になる。
「正直に申し上げますと、無理難題と言う他ありませんな」
「だろうな。こちらも無理を承知で言っている。そこでだ。一つ提案がある」
「提案とは? 是非ともお伺いしたい」
「親衛隊を育成する施設が欲しい」
ラミドの眉が一瞬顰める。言葉は違えど武器が欲しいと言ったのだ。この反応を想定できない方がどうかしている。
「私の記憶が確かならば、今は情報の流布について話していませんでしたかな?」
「ああ、間違ってなどいない。情報の流布について話していた」
「では何故親衛隊などという単語が出てくるのですか? 説明していただきたい」
「無論だとも」
言葉の節々から漏れる情報を統合し、私の真意を図ろうとしているのだろうが無駄だ。
何せ情報の流布も真意なのだからな。
「人員を集める際、最も警戒すべきはジェンキンスやサドラの犬が紛れ込むことだ」
「当然ですな。偽情報を流そうとしていることを知られたら、それを逆手に取られこちらが追い込まれる」
「だからこそ親衛隊という名目で人を集め、徹底的に選抜訓練を行う。それこそ血反吐を吐く程に」
レイモンドならばここまで説明すれば理解するだろうが、この豚にそこまでの知能は存在しないようだ。
「血反吐を吐くほどの訓練、耐えられるものはそれこそ私に命を捧げてもいいという程の忠義を持つ者くらいだろう。しかしそれなりの忠義があればある程度は耐えられる。だがスパイはどうだ?」
「金で雇われているから忠義はない。あってもヒトラー殿にではなく、ジェンキンスに対して」
「そしてジェンキンスの性格からして、その訓練に耐えられる程の忠義を尽くす者を、正体不明の私の元へは送らないだろう」
ラミドが再び顎に手を当てて思考を巡らす。恐らくは私の言葉に矛盾がないか思い起こしているのだろう。
矛盾はない。何しろ判断できるほどの材料を渡していないからな。
「情報の流布の件はどうするのです?」
「ある程度の訓練を耐え抜いたものの、脱落した者達を厚遇して迎え入れる。スパイとしてな」
「全員を使えばいいのでは?」
「表立って親衛隊として集めた以上数人は採用しなければ怪しまれる。その者達にはこの屋敷の掃除でもさせてればいいだろう」
合点がいったか、ラミドは初めてあった時同様、醜悪な笑みを浮かべた。
「なるほど、分かりました。私は場所の提供だけすれば宜しいですかな?」
「ああ、あとは私がやる」




