目立つ場所
「やはりジェンキンス・ブロッサムですか」
最早一強状態。他有力と考えられる五つの政党すべての票数を足しても並ぶかどうか。
しかしそれ以上に目立つのは白票の多さだ。五人に二人は白票。
そうでない人でも今まで入れていたからという惰性の人が多い。
ジェンキンスさんが人気、と言うよりはその他が不人気と言う方が的を射ている。
「よぉあんちゃん」
「ああ、これはこれはいつぞやの」
声をかけてきたのは数日前宿場町でインタビューしたおじさんその人。あの時と同じ酒に酔い紅く染まった顔を緩ませていた。
「随分と仕事熱心だねぇ。もう日も落ちきってるぜ?」
「これが私の仕事ですから」
しかしおじさんの言うことも一理あるかもしれない。時刻ももう十二時すぎた頃。早ければ子供が寝る準備を始める時間だ。
不意に知り合いの記者に『お前は頑張る方向が違う』と言われたことを思い出す。
……確かにそうなのかもしれないな。
「で? 投票する気にはなったか?」
「そうですね。まだどこを支持するかは決めていませんが、しっかりと調べて自分の意思で誰に投票するか決めようと思います」
この返答におじさんは満足したようで、ただでさえ緩んでいた頬がより一層解れた。
「そういやお前の連れはどうした? フられたか?」
「そんな関係じゃありませんし、別行動してるだけですよ」
そう言えば次当たりが最後のはずだしそろそろ探した方がいいかもしれない。
しかし目立つ場所に立っているとは言ってたけど、どこだろうか。こんなことなら具体的な場所を聞いておくべきだった。
あたりを見回して探してみるが、まるで見当たらない。そんな折肩を叩く感触が伝った。
「お、おい」
「何ですか?」
見ればおじさんが目を丸くして何かに驚いていた。
「あれ……」
「あれ?」
おじさんの指差した方向。広場の前方、即ち演説台。
そこには丁度最後の一人が立っていた。
──とてもよく知った顔が。
「あれ、お前の連れじゃねぇか?」




