~神様、下界に降りる~
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「姉様!大変です!」
美しい顔を青ざめさせながら双子の妹が部屋に駆け込んで来たのは、
穏やかな日差しが心地良い、春の日の事だった。
「どうしたのです、ジェミ?双子座の片割れともあろうものがそのように取り乱すのは、
あまり褒められたことではありませんよ?」
「そんなことを仰っている場合ではございません!」
双子座の片割れであるジェミネは、肩で息をしながら言った。
「姉様に向け、リリナ様から神託が下りました。・・・下界に降り、魔族の動向を監視せよ、と・・・」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「・・・成程。つまり、魔王が代替わりしてからの動きが全くないのが不自然だから、
十二星座神の中で最も年長のわたくしが魔族に扮し、魔王の真意を探ってくる、というわけですわね?
・・・分かりました。その命、謹んでお受けいたしますわ」
神官から詳しい説明をうけた姉、ジェミナがそう答えたのを聞き、ジェミニは悲鳴のような声を上げた。
「姉様!?どれほど危険な任務かはお判りでしょう!?」
「ジェミネ様、我々はジェミナ様を魔族に憑依させるつもりです。通常の変装と違い、憑依は体の乗り換 えですので、見抜かれる心配はほとんどありません。ですので・・・」
神官たちがそう言うも、まだ不安なようでジェミネは
「しかし・・・っ」
と食い下がる。それを見て、ジェミナは呆れたように口を開いた。
「ジェミ、神託は既に下ったのです。わたくし達がするべきことは、リリナ様のご意向に従う事のみ。
全てを統べる方に逆らうという選択肢はわたくしにはありません。それに・・・」
ジェミナはその傾国の美女もかくやというほどの美貌に不敵な笑みを浮かべ、まだ不安そうなジェミネに
向かって言い放った。
「わたくし、魔族に簡単にやられるほど、弱くはありませんわよ?」