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2.

2話目!ちょい短めです。よろしくお願いします!

口の中が妙に甘い。身体に力が全く入らない。


腕も足も、もがこうにも動いてはくれない。


頭の中がぐるぐるする。目を開けようとしても固く閉じられている。


いや、目を開けることにすら力が入らないのだ。


真っ暗だ。全身を縛られて棺桶に入れられたような気分だ。これが死んだということなのだろうか?




そう、俺は死んだ。


たっちゃんに言われて渋々学校に来て見たものの、久しぶりに来た教室は不気味な魔法陣が輝いて、そこには混乱するクラスメイトがいた。


みんなそこから逃げ出そうとしていたが教室から逃げようとしたが、そこから出ることは叶わず、たっちゃんまでも白い腕のような何かに引き込まれてしまった。


そして、たっちゃんを教室へ引きずり込んだ途端に教室はより一層明るく光ると次の瞬間、身体に受けた強い衝撃によって俺は教室から弾かれて四階の校舎から体を外に放り出された。



痛みはあった。


奇妙な感覚だけが頭の中にこびりついて離れなかった。



最後の瞬間まで頭の中はくだらない事で溢れていた。



そんなくだらない事も今は血と一緒に流れて行ったみたいで、随分すっきりしている。



しかし、頭がいかにスッキリしていても体が動かないと言うのはどうにも耐え難い。


自由に体を動かせないのは言葉にするよりかなり苦しい。



俺は今、一体どんな状態なのだろう?そう考えていると突然体が揺れはじめた。



まるで波に揺られる船の様に体が浮かんでは沈む。凄く気持ち悪い。船酔いなんてした事はなかったが、きっと今のこの状態がそうなのだろう。



そんな状態も数分すればすぐに終わった。


俺は浮遊感から突如硬い地面に叩き出された。


痛みがある、血生臭い匂いがする。周りはぼんやりと暗い。


ここが地獄なのだとしたら、地獄でも感覚はこんなにはっきりしているのだなぁと少しだけ関心してしまいそうだ。



徐々に目が慣れ、周りが見えてくる。







そこで俺がはじめに目にしたのは、傷ついた女性の裸体だった。














(…………………………は?)








現状を全く理解できず、俺はその場で呆然とその女性を見てることしかできなかった。目に生気は感じられず、口元からには乾いた血のような跡が暗がりでもはっきり見えた。


ふと、その女性と目が合うと、女性は悔しそうにこちらを睨みつけた。


しかし、その顔はすぐに恐怖に塗り替えられた。


後ろから聞こえる腹に響く足音。


その音を鳴らす何かが俺のすぐ後ろで止まった。


振り返るとそこには鬼がいた。


発達した下顎は岩でさえ噛み砕くのでないかと思うほどしっかりしており、頭から生えた一本の大きなツノは何かで切られたかのような跡がある。


ぎょろぎょろと動くその目が女性の姿に目をつけると、山脈のごとく隆起した筋肉と、女性の体と同じだけの長さのある腕が軽々と女性を持ち上げた。



女性は恐怖のためか俺を睨みつけた目から涙を流し、なにかを喚き散らしている。

しかし、なんと言ってるのか俺には聞き取れない。


ただ、俺はその光景を黙ってみることは出来なかった。



震える足を無理やり立たせて、おぼつかない足取りで鬼に体当たりをする。


しかし、鬼の山のような巨体は一切動じることはなく、鬼は俺を一瞥して再び女性に目を向ける。



女性は体当たりをした俺を見ると、先程の恨むような目つきではなく、どこか諦めた、そして少し嬉しそうにこちらを見ていた。



「ーーーーー」



女性は喚き声を止め、優しい声音で何かを言った。だが、俺はそれを聞き取れない。



すっ、と女性は手を伸ばしてきた。俺もその手をつかもうと自らの手を精一杯伸ばす。そこで気づいた。


自分の腕が、人の手じゃないことを。



瞬間、俺の頰に生温い液体が飛び散った。伸ばされた手は生気を失いだらりとしている。



鬼は顔を赤くさせ、バリバリとその何かを食べていた。


その様子を見て俺は酷い空腹感に見舞われた。



そこで気づいた。気づいてしまった。



「アァ…アアァ…ッ‼︎ガァァ⁉︎」



俺はもう人では無いのだと。


頰に着いた血は、口の中に流れ落ち、少し塩気を含みながらも甘い、トマトジュースのような味がする。


人を、こんな風に味わってしまう化け物だと。




そしてこの瞬間、俺をこの地獄に産み落としてくれた母親を、この鬼に食い殺されたのだと。

最後読んでくださりありがとうございます!

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