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3.意外な効果

早いですが、本日1回目の投稿

今日も2回投稿です

 その後、女性を宥めて説得するまでに、小一時間はかかってしまった。

 時計もストップウォッチもないから、時間なんて適当だけど。

 まず、この世界にストップウォッチなんてないだろうし。



「落ち着きました。ありがとうございます」



「う、うむ。気にするでない」



 まさかの竜の本能さんがたじたじ。

 人間のあんなみっともない姿を見てしまえば、逆に激化しちゃうんじゃないかと思ったのに、思いもよらぬことで竜の本能がぶれてしまった。

 多分、守護神なんて慣れないことを言われたり、いきなり生贄を捧げられたりと予想外のことばかりが一気に起きてるからなんだろう。

 俺の仮説が本当だったことが分かったのは嬉しいけど、それでいいのか遺伝子よ……



 ところで、俺はなんで村の人達に守護神なんて言われたんだろう。

 正直、空からずっと森に入っていく村人を観察してただけで、俺自身は何もしてないはずなんだけど。

 ああ、でもある意味、あれも守ったって言えるのかな……結局、俺の居る時には誰も危ない目に遭うようなことはなかったんだから、どっちにしろ守護神って言われるようなことはやってないはず……



「守護神様は、ずっと我らのことを空から見守って下さっていましたよね?」



「な、なに……?」



 えっ、見られてたの?

 それに気付いてて村人達、森の中に入ってたのか?

 すごくたくましいんだな、おい。

 俺もそんなに低くは飛んでない……あ、でも確かに、森の中をはっきりと確認するためと、俺の気配察知能力の範囲を広げるために、以前よりは結構低空を飛んでたな。

 そのせいか。



 でもそれだけだと、まだまだ生贄を出すには理由が弱すぎる。

 きっと、また別の理由もあるはずだ。



「実は、守護神様を空で見かけるようになってから、魔物や凶暴な動物が、一切現れなくなったんですよ! その上、弱い動物達は、奥地の魔物を恐れるようになって、比較的森の浅い部分に動物達が現れるようになったため、肉の供給も増えたんです! 全部、守護神様のおかげなんです!」



「なん、だと……」



 ……ああ。

 俺は、一体何の思い違いをしていたんだろう。

 普通に考えれば、俺が森に頻繁に通うようになり、その上人にも見えるような高さを飛ぶようになったとなれば、魔物も逃げて当然じゃないか。

 自分で魔物を追い払っておいて、その上で魔物の居なくなった森で村人が魔物に襲われるのを待つ。

 なんて矛盾だらけなんだろうか。

 てことは、今まで俺がやってきたことは無駄だったってことか……うわあ、それは流石にショックだな。

 ドラゴン的には、かなり頑張ったというのに。



 俺がショックで項垂れている時も、女性は嬉嬉として話すことをやめない。

 何がこの人をそこまで駆り立てるんだろうか、俺はこの人自体には何もやってないのに、ここまで懐かれる理由は……あれ?

 今気付いたけど、確かに俺が考えた方法は失敗したけど、また別な感じで仲良くなってね?

 まずそもそも、俺があんなことをやってたのは全部人と仲良くなるためにやったわけなんだから、結果的には仲良くなれた……むしろ、村人達にも好印象を与えることが出来たんだから、こっちの方がラッキーか?



 まさか失敗したと思ったら、別の方面からその失敗を大きく上回るような成功を果たしてしまっていたとは。

 これはあれだ……結果オーライってやつだな。

 しかも、そのおかげで竜の本能までもがブレブレになっちゃってるし。

 思わぬ副産物をもらってしまったようだ。



「そこで、守護神様を一度、私の村に招待したいと考えているのですが」



「な、なんだと?」



 すげえ飛躍したな、おい!?

 つーか、俺の反応もさっきから「なんだと」としか言ってないぞ!? 語彙力皆無か!

 それにしても、あの村も随分とぶっ飛んだことを考えたな……まだ、俺のことを知らない人だって居るだろうに。

 大体、なんで生贄がそんなことを任されてるんだよ。

 本当、ちゃっかりしてるな。



「ああ、村長さんが村全体に通達はしているので、大丈夫ですよ。直接私に頼まれた理由は、まあついでです」



 心の中で疑問に思っていたことを的確に読み取られた上、ちゃんと適切な返事まで返されてしまった……

 ドラゴンが来るなんて、通達したところで意味ないと思うんだけどな……



「だが我はドラゴン。村の中には入りきらぬと思うが?」



「そこはほら、ドラゴンって人間の姿になれるんですよね? それでお願いしますよ」



 確かに出来るけど、どこ情報だよそれ。

 過去にドラゴンが人の姿になったことなんてないだろうが。



「守護神様が何をお考えになっているのかは分かりませんが、過去にドラゴンが人の姿になった例ならありますよ?」



 分かってるじゃないか……って、そういうことじゃなくて!

 過去にドラゴンが人の姿になった例が本当にあるのか?

 だとすれば、一体どうやって竜の本能の束縛から抜け出したんだろうか。



「そうなのか?」



「ええ。そのドラゴンのことを見た旅人達は、ドラゴンに対して『つんでれ』と仰っていたそうです。でもそのドラゴンは返事に、『ドラゴンは全員こんな性格だ』と言ったらしいですね」



 なんつーことを言ってくれんの、その旅人とドラゴンは!?

 あとその旅人、絶対俺と同じ転生者だよね!?

 更にそのドラゴンよ、お前のせいで俺までツンデレっていう風評被害を受けたじゃないか。

 確かに内心と口調が噛み合ってないわけだからツンデレと言われても何らおかしくはないけど、それは口調だけで本心はそうじゃないからな?

 断じてありえない。



 ……話が逸れてしまった。

 人変化に関してだが、やれることが分かっただけでも、大きな収穫だ。

 っていうか、今の俺でも出来るんじゃね?

 もはや口調だけで、態度なんて完全に軟化しちゃってるし。

 それなら、一度村に行ってみるのもアリか?

 どうせ一回ちゃんと村を見てみたかったし、丁度いいか。



「良かろう。我が着いていってやる」

「ありがとうございます! では、早速行きましょう!」



 もう行くのかよ、早くないか?

 俺はむしろ歓迎だけどさ。

 よし……今度こそいざ、人間との関係を持ちたい。

 その前にレッツ、人化だ!



 今回は特別に、この女性には背中に乗せてやることにしよう。

 背中に乗せるなんて本当なら竜の本能さんが激しくタブーを起こすはずなんだけど、その様子はなさそうだしね。



「背中に乗るがいい」



「えっと、あの、いいのですか?」



 いいんだよ、別に。

 女性がようやく背中に乗ったのを確認すると洞窟の外に出て翼を広げてから気付いたけど、そういえばこの女性、なんて名前なんだっけ?



「おい、人間。お前、名前は何と言う?」



「私ですか? ライナです」



「そうか。ではライナよ。精々、振り落とされないようにしっかり掴まっておくがいい」



 要約。

 出来るだけ安全運転は心掛けるけど、万が一ってこともあるから、しっかり掴まっておけよ? ということだ。

 今まで人間を乗せたことがない分、何かと加減が分からないから仕方ない。



 ライナを乗せた俺は翼を広げ、村へと向けて飛び立った。

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