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2.ファーストコンタクト

2話目です

 翌朝、意を決して作戦を開始する時が来た。

 やることは単純明快、まずは人間と仲良くなる!

 ……今までは、それすら出来ていなかったんだけどな。

 ただ、それが出来なかったらそもそもが始まらない。

 もうこの時点で頓挫してる気がしないでもないけど……いや、今までは積極的に関わろうとしなかった分、しっかり向き合えば成功する……はず。

 ひとまず、やってみないことには変わることはない。

 なに、もし上手くいかなくてもまた今までの生活に戻るだけだ。

 何も問題は……いや、問題があったからわざわざこんなことをやろうとしてるんじゃないか。

 訂正、何がなんでも成功させてやる。



 もしちゃんと話をしてくれる人が現れたら、第二段階だ。

 竜の本能に抗う方法……これが成功すれば、多分人の姿になることが出来る。

 それは、俺に人間から恩を売ってもらうという方法だ。

 これだけじゃ分かりづらいけど、簡単に言えば、もし俺が人は下等生物じゃなく、悪い生物でもない……それこそ、俺が人間に助けてもらうようなことがあったら、遺伝子も納得してくれるんじゃないかと勝手に推測してみた。

 正直理屈にもなってないし、全くもって理由にすらなってないわけだから、本当にそんなことがあるかと言われると疑問ではある。

 大体、自分で言っておいて遺伝子が判断するってなんだよ。

 それでも、俺はやれるだけやると決めたのだから、失敗するまではやめることはしないつもりだ。

 


「よし、やってやる!」



 改めて意気込んだ俺は、翼を広げて飛び立った。

 人が来る場所なら、事前に目星をつけていた。

 俺の住処は、他の竜と比べると比較的近くにあるから、そこまで行くのもすぐだ。

 この近くにある人の村は、俺の住む山の横穴の麓にある森に、よく村人が薬草を摘みに来ていることを知っていた。

 適当に飛んでいれば、きっと村人を見つけられるはずだ。

 そして村人が魔物に襲われたところを華麗にドン!

 これが、俺の考えたファーストコンタクトだ。

 これなら完璧だろ!



 ……などと思っていた時期が、俺にもありました。

 まず村人、これに関してはすんなりと見つけることが出来た。

 でもよく考えてほしい。

 よくラノベであるような展開が、いざ現実に起きるとは限らない。

 というか、普通なら魔物が出るような奥地に行くような村人なんてほとんど居ない。

 この世界の人は、魔物というのがどれくらい恐ろしい存在であるのか、ちゃんと理解しているからだ。



 結局その日、俺が望むような展開にはならなかった。

 ……そりゃそうだよねぇ!

 よくよく考えたら、魔物に襲われているところをばったり助けるなんて展開、現実にそうそうあってたまるかっての。

 そんな頻繁に起こるようなら、今頃あの村は滅んでるよな。

 当然といっちゃ当然なんだけど、これは困ったぞ……

 まさか、早速俺の計画が根本からほとんど奇跡的な運が必要になるとは思わなかった。

 兎も角、今後も継続して見守るしかない。



 それから俺は、毎日森に入ってくる村人を見てきた。

 ただひたすら、重い身体を鞭打ち早朝に起きては、夜間まで村人が入ってこないかを見守り続けるだけの日々。

 基本、日が落ちてから森に入る村人は居ないんだけど、万が一ということもあるからね。

 それに、魔物に襲われるのなら魔物の活動が活発的になる夜中の可能性が一番高かったからだ。

 なんかここまで何もないと、俺がやってることがただの警備員にしか見えなくなってきた。

 ただひたすら、そんな毎日を過ごしていると、流石につまらない……そろそろ、何か起きてほしいんだけどなぁ。



 とか思いながら、気付けば作戦を考えてから数年が経っていた。

 俺の我慢もそろそろ限界になってきていた。

 だってさあ、いつまで経っても代わり映えのない生活が続くんだぞ?

 いくら500年を生きているからと言っても、限度があるわ!

 しかも、竜の本能のせいで朝から起きるのすげえ辛いんだよ!

 本来1日の3分の2を寝る生活を送っている竜だけど、俺は目測で朝5時くらいに起きて、深夜きっかりに住処に戻ってようやく寝る生活を続けてるんだぞ。

 人間で言うなら、数年の間ずっと毎日2時間しか寝ていないと言えば分かるだろう。

 このままじゃ、ストレスで禿げてしまいそうだ。

 禿げる毛を持ってないけど。



 とか思って俺はもはや習慣となった見回りに行こうと身体を起こす……その時、俺は住処の入り口から生き物の気配を感じた。

 こんなところに動物が来るなんて珍しい、と思っていたが、俺はすぐにそれが誤りであることに気付いた。



 気配の正体が、人間だったからである。

 人間の気配は恐る恐ると言った感じで、洞窟の奥へと進み始めている。

 日本だったら不法侵入だ、訴えてやるなんてことを言っていたかもしれないけど、ドラゴンに不法侵入なんて言葉は存在しない。

 そりゃそうだ、だって自分から住処に呼ぶこともないんだから。

 俺の住処はそこまで深い洞窟ではないので、このままだと、俺の寝床にまで来てしまいそうだ。

 仕方がないので、俺の方から出向くことにした。

 どうせ鉢合わせてしまうのなら、こちらから迎えた方が体面的にはいいだろうし。



 俺は欠伸をしながら、侵入している人間の元へと向かった。

 ドラゴンである俺は人間とは違い、一歩一歩が大きいので、すぐに侵入者と対面することになった。



 侵入者はビクビクと身体を震わせながら、俺の顔を見上げている……って、女性?

 女性が1人で、こんなところにまで来たのか?

 ひとまず、俺の方から話しかけてみるとしよう。

 表情筋を豊かに、気軽な口調を心がけて……



「そこの人間。我の住処に、一体何のか」



「ひゃい!?」



 余計にビビらせてしまった。

 えっと、すまんな、竜の本能だからどつやってもこんな口調になるんだよ。

 むしろ、これでもかなり抑えてる方なんだ、許してくれ。

 他の竜だったら、人間とすら言わずに下等生物だからな?

 特に言葉の最後には「生きて帰れると思うな」はもはや定型文だからな?



 女性が勿体ぶるので、疑問に思った俺は少し急かしてみることにした。



「どうした。早く言わんか」



「は、はい! 守護神様!」



 ……え?

 今なんて言った? 守護神様だって?



「……おい、どういうことだ」



「わ、私は守護神様への感謝を込めて、村から生贄として捧げるために選ばれ、やって参りました! どうぞ、私の身体を煮るなり焼くなり好きにしてください!」



 いや、そんなこと言われてもね。

 まだ俺、何のことだかさっぱり分かってないんだけど。

 とりあえず言わせてもらおう。



 ……どうしてこうなった!

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