12.魔物の集落
病み上がりなので内容が薄くなったかも……後々改稿します
森の中を進む彼らの後ろを、鼻歌交じりで着いていく。
「なあ、その……なんだ。アルに言うのもなんだが、こんな場所で鼻歌か?」
「悪いか?」
「……いや、なんでもない」
あまりにも俺が悪びれることもなく自然と答えるものだから、レウルにも諦められてしまった。
よく考えたら普通に邪魔だったな、ちょい反省。
道なき道を進み続けていると、俺の感覚レーダーにいつもならないはずのものがもうビンビンに反応してきた。
「念の為に聞くが、その依頼内容ってのは?」
「よく考えれば、内容は言っていなかったか。つーか、伝説級とはいえそれでよく着いてくる気になったな……」
「……阿呆」
「ダメねー」
三者三様だが、ある意味全員から罵倒を受けてしまった俺は歯噛みしながらも、確かに正論であったために言い返すことはしなかった。
決して、ぐうの音も出ない程言い返せなかったわけでは断じてない。
「まあ、アルなら問題ないだろ……ただ、言いふらすなよ? 俺達は、俺達の住んでる街の近くから追われてきたデザートゴブリンキングと、デザートコボルトキングの群れを倒しに来たんだと思ってくれ」
「思う? どういうことだ」
実際、倒しに来たんじゃないのか。
「うーん、倒しに来たのはあってるんだけどね。少し違うのは、単体じゃなくて群れなのよねー」
「ああ、やっぱこの群れか」
「なに!? 知ってるのか!? 頼む、案内してくれ! そいつらの調査に来たんだよ!」
そんなことをほんの拍子に呟くと、とんでもない形相でレウルが食い付いてきた。
それもまあ、ガバッと大袈裟なくらいに。
ただレーダーに引っかかる気配があからさまに多いのと、今までに感じたこともなかった気配だったからそう思っただけなんだけどな。
「少し落ち着け。この森は俺の庭なんだよ。だから、本気で感覚を広げれば魔物の行動範囲圏内の3分の1の範囲くらいなら魔物の動きが簡単に分かる、それだけだ」
「いや、それだけだって……ねぇ?」
「やっぱり、竜なんだな」
「……凄い」
来た、これこそが三者三様。
人間、皆意見が違っていて当然なんだよ。
俺は人じゃなく竜だけど。
「さて、じゃあ案内しようか」
「ああ、お願いするぜ!」
「まあ、すぐ近くなんだがな」
でも一番の懸念は、あの量を倒せるのかだな。
正直言うと、3人であの量を倒すのは無理がありすぎる。
俺だって、取りこぼしなく倒すのは結構苦労するだろうし。
戦闘に参加? もちろんしないよ?
だってこの依頼受けたの俺じゃないし。
頼まれたら参加する可能性は無きにしも非ずではあるが、自分から参加するつもりは毛頭ない。
「さ、これくらいでもお前らなら見えるだろ」
「おう、ありが……って、うわぁ」
「こ、これは想像以上ね……」
「……危険」
これにはさしもの俺も意外であった。
確かに数だけはしっかりと把握していた……実に5912体である。
この量を3人で倒し切るのは無理だろうと、そう思っていた……が、これでは軍隊を派遣でもしないと無理なのではないだろうか。
これは感覚レーダーに反応しないのも、無理はない。
俺達の目の前に現れたもの、それは俺の守る村すら意に介さない程の、超巨大な大集落だった。
何もないないなら兎も角、こうまで色々と対外防衛線を築いているのであれば、完全に対侵略戦用の準備が必要になるだろう。
集落外にはしっかりと砦も築かれているために、不用意に突っ込めば外から挟み撃ちにされる可能性も大いにあった。
魔物のくせに、よく考えられているものである。
……言ってて気付いたが、俺も魔物だった。
「なんだこれ……しかも、どれだけ増えてんだこいつら」
「合計で5912体ってとこかな」
「げえ、そんなの無理に決まってんだろ! 撤退だ、撤退。こんな依頼やってられるか!」
当然そうなるわけで、自然とこの魔物達は放置されるということになる。
一応、住処はすぐ近くなんだけどなー……なんで俺、気が付かなかったんだろ。
それは兎も角、こんなところに放置していたら色々と取り返しのつかないことになりかねない。
ここまで追いやってくれた国にはきっちり例をしてくれないとな。
この魔物の名前は知らないけど、どの国から来たのかは俺にも分かる。
俺の住処がある山は、一応国境の役割も果たしている。
もうすぐ国との繋がりも出来そうだし、このことについても話しておいてやろう。
さて、どうしたものか……
「ここら一帯を吹き飛ばすのもいいが……」
「それをやったら俺達も吹き飛んじまうよ」
そうだよなぁ。
でもこの量を相手に捕り逃しなくって……いや、割といけるか?
「今から俺は元の姿に戻る。お前達は俺の背中に乗れ」
「は、え、はぁ?」
人なんて乗せたことないから乗り心地については分からんが、まあ命と引き換えだと思ったら安いもんだろ。
最低でも尻は痛くなるだろうが、そこは勘弁してくれ。
元に戻ると、仰々しく見上げていた彼らを風の魔法で強制的に背中に載せると、反論を聞く前に空へ飛び上がった。
「「「おお……」」」
いきなり背中に乗せられて恐怖でもするんじゃないかと思ったが、そこは流石一流冒険者。
むしろ空からの景色に感動しているようだ。
それも当然だな、俺だって生きてきて空を飛ぶ人間も、飛行船みたいなものも見たことないし。
空を飛びたいと思ったら、人が乗れるような翼を持つ大きな魔物をテイムする必要がある。
それくらい大きな魔物となると、竜かグリフォンしか居ないだろう。
グリフォンも災厄級の魔物なので、とてもテイム出来るような魔物ではない。
「地帝壁」
最初に魔法で土の壁で50メートル四方程を囲んでやる。
だいぶ広いが、何分魔物の量が量なので、これくらい大規模になってしまった。
背中の冒険者達の目が点になっているのが目に見えるが、こいつらの魔力量だとあと100パーティ居ても無理な程に無茶な魔法を使ったからだろう。
俺? 魔法だから問題ない。
「水神流」
もうここまで来ると、やることが分かった人も居るだろう。
そう、俺がやろうとしていることは戦術級の大規模な水攻めである。
普通森で使えば森中に被害を撒き散らすだけの魔法だが、対象をしっかりと壁で囲んでいる今なら別だ。
壁自体も、水圧に耐えられるようかなり厚くしてあるので、破れることもない。
とんでもない量の水が、津波のごとく囲い内の魔物を一方的に流し尽くす。
壁のせいで逃げ場もなくなっているので、まさに一石二鳥だ。
5分もしないうちに水は囲いの中を浸し、死屍累々といった状況を引き起こした。
「「「うわぁ……」」」
背中の冒険者達もドン引きである。
「これで依頼完了、だよな?」
冒険者達は、何も言わずに首を縦に何度も振る。
念の為気配探知で生き残りが居ないのを確認した後、空間に作用する魔法で水だけを指定して消滅させると、ものの見事にぐちゃぐちゃになった森と、あちらこちらに散らばる魔物の死体だけが残った。
「俺ら、何もしてねえよな……」
「……うん」
「そうね……」
彼らは完全に尻込みしてしまったようで、恐る恐るといった感じで必要な量の報告部位だけを剥ぎ取っていく。
ちなみに他の素材は全部俺が貰うことになった。
正直言ってこれだけの量はまた出すのも手間なのだが、まあ俺の空間魔法は時も止まっているので貰っても損はない。
「じゃあ、俺達は一度国に戻るよ」
素材を剥ぎ取り終えたようで、手のひら返しの早い彼らは満足気な顔を浮かべている。
まあ、依頼が上手くいったのだから仕方ないのだが。
「分かった。今度は俺の方も街に訪問させてもらうことになるかもしれないから、その時はよろしく」
「ああ。俺達はアテリナって街でいつでも活動してるから、たまには来てくれよな。いつでも来ていいぜ!」
こうして彼らは帰っていった。
またあの山を抜けて帰って行くのか? とも思ったが、俺が竜になって行ったらそれはそれでややこしいことになるので、まあ帰りくらいは自分の足で帰ってもらおう。
元々、そのつもりで来てたわけだし。
俺の方も、一度報告のために村へ戻ることにした。
流石にあれを報告しないわけにもいかないからな。
と、その前に着替えないと……
このままで戻ったらとんでもなく面倒なことになるのは間違いない。
ようやく元の服に着替えた俺は、一度村に戻るのだった。




