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11.冒険者

B型インフルにかかってしまいましたので、暫く更新打止めにします_:(´ω`」 ∠):_ ...

 辛くも窓から逃げ出すことが出来た俺は、人の姿のままで翼だけを生やし、なんとか近くの森の中へと逃げ込むことが出来た。

 流石に逃げる際に元の服に着替えるだけの余裕はなかったので、一番安全に着替えることが出来る場所を考えたら、恐らくここだろう。

 ただ、入り口付近だと村人達にも遭遇する確率が高いので、魔物が出るくらいには奥に進む必要があった。



「ここなら誰にも見られないか」



 俺は元の服を取り出すと、早速着替えようと思った、その時、



「ゴガアアァァ!」



 魔物の出現である。



「こんな時に……」



 現れたのは、明らかに森には似つかわしくない虎の魔物。

 こんな魔物、森に居たかと俺は疑問に思うが、もちろん魔物は思考する時間を待ってはくれない。

 俺が身構えると同時に、虎は飛びかかってきた。



「どっせえい!」



 と同時に、虎の横から男が飛び出してきたかと思うと、虎は男の持っていた斧によって吹き飛ばされてしまった。

 俺は呆然としていると、男が俺の元に駆け寄ってきた。



「大丈夫だったか?」



 どうやら、助けてくれたらしかった。

 正直言うと助けてくれなくても問題はなかったのだが、一応礼は言っておく。



「あ、ああ。ありがとう」



「嬢ちゃん、こんな所に1人で何しに?」



「嬢ちゃん?」



 俺は一度首を傾げるが、そういえば今の服装が完全に女物であることを思い出した。

 ライナ達は俺のことを女顔と言っていたので、完全に俺のことを女だと勘違いしているようだ。

 ここは、あえて訂正しないでおこう。

 第一、女装しているなんて思われたくないし。



炎の槍(フレイムランス)!」



 いきなりそんな声が聴こえてきたかと思うと、直線状に伸びた炎が、男の真後ろを通り過ぎ、今にも飛びかかろうとしていた虎の魔物へと命中した。

 虎の魔物の全身を、炎が焼き尽くす。



「グオオウ……」



 今の攻撃が決定打になったようで、弱ったような唸り声をあげてから、音を立てて崩れ落ちた。



「レウル! 詰めが甘いわよ!」



「……うん」



 草むらから現れた2人の女性が、それぞれ抗議するような目線をレウルと呼ばれた男へと向ける。

 はっとなったレウルは、慌てて頭を下げる。



「す、すまん。完全に油断してた」



「もう! 特に、今は一般人も居るんだからね?」



 そう言いながら、俺の方に視線を向ける女性。



「私、エル。ねえ、あなた。大丈夫だった?」



 エルと名乗った女性は、俺の身を案じて心配くれているようだ。

 最も、俺はこの3人よりも強い自信があるし、あの程度の魔物であれば傷一つなく倒すことが出来ただろう。

 今は人の身ではあるが、これでも竜なのだから、当然最高位の魔物でもなければ、俺に傷をつけることすらかなわない。

 一方、ずっと俺に問いかけてくるエルとは別に、もう1人の女性はずっと俺の顔を直視していた。

 不意に、彼女の口が開かれる。



「……その人、人間じゃない。魔物」



「「えっ!?」」



「……!?」



 彼女の口から放たれたとんでもない爆弾発言によって、レウルとエルは俺から離れるように瞬間的に飛び退いた。

 明らかに、俺のことを警戒している。

 まさか俺もこんな早くにバレてしまうとは思わず、溜め息を吐いてしまった。

 折角の冒険者と遭遇したのだから、もう少し喋りたかったのだが。

 そう思っていると、意外にも俺の正体をバラした彼女によって助け舟が出された。



「……大丈夫。敵意は感じない。多分、知能が高くて友好的な魔物。それも、相当高位の」



「そ、そうか。まあ、そうだよな」



「え、ええ」



 寡黙な女性は相当信頼されているのか、その発言だけで警戒を見せていた2人はすぐに警戒を解いた。



「いきなり警戒して悪かったな。俺はレウルだ」



「……ニア」



「私も、いきなりごめんね? ねえ、あなたは何の魔物なの?」



 いくらなんでも、魔物相手に気を許しすぎな気はするが、俺としては逆にありがたい。

 誰だって警戒されるより、親しみを持って話してくれた方が嬉しいだろう。



「黒竜、だよ。名前は……アルとでも呼んでくれ」



「「竜!?」」



「……伝説の魔物」



 俺の告白を聞いた3人は、度肝を抜かれたようで、驚きで目を見開いた。

 表情に出にくく寡黙なニアですら、同じ表情になっている。

 まあ、この反応も当然だろう。

 竜は人間が踏み入れられない程の奥地に住んでるし、その種族の性質故か、住処から出てくることは全くと言っていい程にない。

 唯一、狩りの時ですら1ヶ月に1回、住処のすぐ近くでちょっとの間狩りをするだけなので、普通は人前になど現れることはない。

 例外は、人間が何度も竜の縄張りを侵犯した場合である。

 昔にあった例だが、人間が何度も同じ竜に討伐隊を送り込んだせいで竜の逆鱗に触れて、その国はたった一体の竜によって滅ぼされたことがある。

 何を隠そう、これは当の本人である隣人の田中さんポジである数少ない話し相手の竜に聞いたので、間違いない。

 ……それでも、一度しか会話をしたことはないのだが。



 結論を言うと、竜はそれくらいに珍しくて、そして危険な魔物なわけだ。



「そ、想像の真上を振り切ってきたわね……大体、最上級かもしかして厄災級(ディザスター)クラスだと思ってたけど、まさか伝説級(レジェンド)の魔物だなんて……人は見た目によらないとは言うけど、まさにその通りだというわけね」



 確かに今は強制の形で女装させられてはいるが、俺自身は男なので見た目にはよってないな。

 にしても2人よ、もうそろそろ冷静になってくれないか。

 驚くのは分かるけど、ニアはもう落ち着いてるぞ。



「……2人共。依頼」



「それもそうだな。悪いが、依頼があるからもうお暇させてもらうぜ」



「ちょい待ち、それなら俺も連れて行け」



 俺がそう言うなり「えっ」と顔を引き攣らせる2人。

 ニアは何やら考え込んでいるようだ……恐らく、俺が居た方が役に立つんじゃないかと勘定しているのだろう。



「でも、それだとアルを恐れて魔物が来ないんじゃ……」



「それはないな。元の姿であれば兎も角、さっき普通に襲いかかってきただろ?」



「……確かにそうね。それなら、是非着いてきて貰いたいところだわ」



「おい、エル?」



 レウルは俺の強さをしっかり理解していながらも、この姿のせいで危険なところに連れて行くことに躊躇しているようで、エルに向けて何を言っているんだといった視線を向ける。

 その反応には、流石に俺も不満を覚えた。



「おいレウル。俺は英雄級(ヒロイック)程度ならそこまで問題なく倒せるぞ? だから、見た目で侮るのはやめてもらいたいな」



「ひ、英雄級(ヒロイック)……確かに、それは俺らでは考えられない次元だな。分かった、それならよろしく頼むよ」



「……うん」



 俺の同行が決まるなり、突然駆け寄って抱きしめてくるニア。

 ……胸が当たってるんですが。

 普通の男であれば歓喜するであろうが、生憎俺は元人間だったとはいえ、500年間引きこもり生活を続けて耐性が全くない竜である。

 喜ぶよりも前に、ニアによる急な行為で俺の理性は決壊し、放心を始めていた。



「あっ、ずるいよ!」



 そんな俺に追い打ちをかけるように、反対側からエルも抱き着いてきた。

 ……いつも思うのだが、俺って好かれやすくなる特殊体質でもあるのだろうか?

 俺が動けないでいると、レウルは呆れてその様子を眺めていた。



「お前ら……」



 その後、すぐにレウルに止められたことで、ようやく依頼を再開するのだった。

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