仕官
大合戦に勝利を収めた東軍は、次に三成の本居城であった佐和山城攻略に取り掛かった。佐和山城攻めは、裏切者の小早川、朽木、脇坂らが先鋒を務めた。佐和山城は、城内の裏切りがきっかけとなり天守が脆くも落城する。
石田一族は、揃って自刃し果てたという。この悲劇の報せを聞いた三成は涙を浮かべ唇を噛む他無かった。
藤堂軍も大坂へ向けて進撃し途上の攻城戦に参加していた。
そんな中、政信と三島は御屋形様への面会を行う運びとなる。
「頭を上げられよ。」
そう高虎が声を書けると二人は揃って顔を上げた。政信の方は、堂々とした顔つきであった。
「家中の者による尋問によれば、お主らは未来から来たという。たわけた話じゃが、関ヶ原でもお主らが投げた爆弾が我らの劣勢を跳ね除けたという。そう申す兵が多数居る。これは、まことかの?」
事前の尋問の報告を受けた高虎は、にわかに信じがたい話ではあるが、二人が身に着ける衣服(軍服)や手榴弾のこと、珍妙な火縄銃(縄がない!)を見てそれを信じることに決した。
「まことすよ!!命だけは助けてくださいー!!」
三島は泣き崩れながら助命嘆願を行った。これには高虎と勘兵衛も腹を抱えて笑った。
「まことです。ウソ偽りありません。我々は今から340年後の世界から来ました。そして、あなた方の子孫でもあります。」
政信の真剣な眼差しを見て高虎は、腹を固めた。
「あい、わかった。そなたらは今より伊予宇和島藩の足軽として受け入れる。我が嫡男高吉の直臣として支えてやってほしい。」
「ありがざぁーっす!!うっうっう・・・・」
三島が泣き崩れ、政信は、それを見向きもせず頭を深々と下げ、
「有り難き幸せ。主君のため精一杯働かせてもらいます。ただ、一点お願いがあります。」
「なんじゃ?」
「それは、我々が未来へ帰ることが出来たら、そのときは無条件で帰らせて頂きたい。それだけです。」
高虎と家老勘兵衛は、なんだそんなことか、というような顔を浮かべ、高虎が軽く同意をし、ここに政信と三島の再就職先が決定した。
「こちらも一点、約束してほしいことがある。そなたらの存在を秘匿し、口外しないということじゃ。これが知れたら藤堂家は、どうなるかわからん。怪しき者を囲んで企みを図っていると思われては、まずいゆえ。」
そう、勘兵衛が申すと政信もそれをすぐさま承諾した。未来人政信、三島の二人にとっても面倒ごとに巻き込まれてはかなわない。斬首という最悪の結末も十分予想されるのだから。
面談の終わりに高虎から二人に命令が下された。
「行方が未だわからぬ石田治部の捜索が本格化される。我らも捜索隊を出せと命じられたのじゃ。長連房が指揮する捜索隊に参加して功を上げてくれ。」
「ははっ。承りました。」
濃密な面談は、実に1時間に及んだ。依然、足取りが掴めない謀反人、石田三成を追う追討軍が東軍諸大名連合により編成されるに至った。
「これで終わるわけには、いかんのじゃ。大坂城へ戻り毛利様に御目通りをせねば。毛利勢は、ほぼ無傷!天下の城に籠城し、徳川打倒を再度掲げれば寝返りを図る者も現れるかもしれぬ!!」
近江の山中の隠れ家にて石田三成は、再起の作戦を練り続けていた。
果たして、三成は、再起を果たし源頼朝よろしく富士川の戦いを再現できるのか!? しかし、現実は、無常。家康が放った追悼軍が三成が篭る村を着々と包囲しつつあった。