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謀議

 高虎は、丹羽長秀の子、高吉を養子とし、跡継ぎに決めていた。しかし、1602年に実子である高次が生まれる。高虎は、内々に我が子である高次を継嗣とすることを重臣に話していた。高吉も高虎の心中を察し、世継ぎを高次に譲ることを決心した。二番手に甘んじること、その宿命を受け入れたのである。


 世継ぎの問題は、政信も耳にしており直轄の主君である高吉がそのことで苦悩していることを近くで見てきた。

「これだ。継嗣問題こそが藤堂家の分裂を引き起こしうる核だ!使えるぞー!」

政信は、閃いた。二日後に高吉と囲碁を打つ約束をしてある。そのときにこの甘言を吹き込もう。そう決めた。


 二日後、昼間に高吉の間にて恒例の囲碁大会が催された。

「やはり強いのう。政信は。はっはっは。」

「かたじけのうございます。勝負ごとは、遠慮しない趣味なもので。」

「嫌な男じゃの。ほんに。」

囲碁大会は、二時間近く続き、近臣の者と高吉は、日頃の疲れを癒すとともに意思疎通をしあった。

「これを後で。」

すっと懐から政信が紙を差し出す。高吉は、怪しげな神を受け取る。

「今晩、殿の間に伺います。」

と、これだけ書かれた内容だった。密談をしたいという意味である。


 その日の夜、政信が高吉の間を訪れた。

「何用じゃ。申せ。」

「・・・・・・」

「申せと申しておる。びくびくする必要はない。」

「はっ。申しにくいことですが、殿は、大助(後の高次)様が世継ぎとなられることについて、それでよいとお考えですか。」

単刀直入であった。高吉は、それでも驚かず、口を開く。

「そのことか。世継ぎは、大助に決まっておる。」

「よいのでしょうか。徳川様の天下となられたものの未だ豊臣は健在で西国には加藤や福島、毛利、島津がおります。再び世が乱れ、大殿が蟄居すれば。そのとき我が藤堂家は、どうなりましょう。」

高吉は、政信の言葉に聞き入り、口を真一文字に閉じて頷く。


「お主の説は、一理ある。じゃが、そのときは、大助を我らが支えるまでじゃ。」

「先の太閤殿下、そして大御所様が何をしたか。幼き主君を乗っ取り、自らが天下を統べるにいたった!」

「何を申すかぁ!!控えい!」

「いや、控えません。殿も、野心を持たれてよいと。そう言いたいのです。」

政信は、諭す。高吉がこれまで辿った人生は、苦難の連続であった。恵まれることがなく二番手、三番手に甘んじる。そういう生き方が染みついていた。だが、日頃接している中で、政信は、主君が抱える孤独、名誉心といったものを汲み取っていたのである。


 話始めから、小一時間を過ぎていた。突然、高吉は、一通の文を差し出し、それを政信に見せた。

「なっ!・・・・・」

「織部殿が、わしを勧誘しておるのじゃ。」

なんと、古田織部が高吉に文を出していた。内容は、

「狸狩りをいたしませぬか。秀頼君と真田安房守が高吉殿を誘っております。ついでに虎狩りもしたいと思うており申す。」

というものであった。徳川討伐に参加する意志を確かめたのである。


「わしは、迷うておる。どうすればよいかと・・・・・。」

「殿!これに乗るべきであります!!」

政信は、士気がすこぶる上がった。やはり、織部は、幕府を快く思っていなかったのだ。豊臣方と連携が出来、さらに西国の大名が付けば流れが変わる可能性がある。

「藤堂家は、継がぬが、丹羽家を継ぎたい。わしは、そう結論に達した。迷うておるが、そういう無茶は、できぬか、政信!」

「できます。私に全てお任せください。計画実行には1,2年要します。その間に戦力を蓄えるのです。」

密談の結果、高吉と政信の気持ちが一致した。


 徳川シンパである高虎を暗殺、または追放処分とし、継嗣高次を人質とする。そして、高吉は、実父である丹羽長秀の丹羽性に戻り、丹羽家を継ぐ。現在の丹羽家とは、一戦交える覚悟、それは、もちろんである。

そして・・・・

「徳川幕府を討伐し、丹羽家は東海道、関東を領有する大大名となり、西は、豊臣が統治する。丹羽と豊臣による連合政権の樹立。」

最終目標が、ここに決した。

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