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伊勢

 政信は、高吉の助けによって釈放され、宇和島に三度、戻ることになった。

「面目ありません。ご迷惑をおかけしました。」

「よい。じゃが、父はご立腹じゃ。おって沙汰が下ろう。」


 江戸から東海道を通り、堺から船に乗り、宇和島城に戻ると、早速、高虎から呼び出しがかかった。

「大御所からの命により、辻政信を謹慎とし、農兵隊を解散する。よいな。」

「なにを!?私は、御屋形様御ため、働いてきたまで!!謹慎も農兵隊の解散も受け入れできない!!」

政信は、怒りを抑えきれず、高虎に飛びかかろうとしたが、護衛の兵に体を抑えられ、檻に入れられてしまった。これより、長い牢獄生活が始まる。


 牢獄での生活は、暇であった。飯は用意されるものの牢獄から出ることは、毎朝の散歩のみという状況で、ストレスが蓄積していき、体長が悪くなりだしていた。


 政信が謹慎処分となり罰を受けていた頃、幕府からの使者が宇和島に到来した。藤堂家の命運が転換する、あることを伝えてきたのだ。

「藤堂高虎殿に告ぐ。征夷大将軍の命により、藤堂家は、伊賀、伊勢合わせて二十二万石に加増し、今治に二万石の蔵入り地を与える。」

「ははぁーっ!! 徳川の天下のため精進していまいります!」

「しかと伝え申した。即刻、転封の用意をし、新領地に引っ越されよ。」

高虎は、笑みを浮かべていた。ようやく、四国という辺境の地を抜け出し、京・大阪に近い伊勢・伊賀を領有することが叶ったのである。


 藤堂家の加増は、これまでの勲功とともに政信を藩政から排除したことが評価されてのものであった。高虎は、政信の活躍を評価し、藤堂家に新しい風をもたらしたことを嬉しく思っていたが、そんなことよりも家康の信頼を損ねることの方が問題だと考えていたのである。農兵隊という農民や町人を戦力とする組織は、徳川家にとって思わしくなく、このような組織が他の藩に拡がることを恐れたのである。天海が主導し、家康、秀忠が後ろ盾となり、今回の政信排除が敢行されたのだ。当然、政信は、こうした徳川家と高虎の意図を見抜いており、彼らへの憎悪が増幅された。


 1608年、藤堂家は、伊賀、伊勢という新たな領地に移り、改めて藩政を開始した。

「ここ、伊賀、伊勢は、大坂・京と江戸の架け橋となり、江戸の防衛の関所となる!!徳川への忠義を忘れず、各々、しかと心得、天下泰平のため邁進せい!!」

「ははぁーーっ!!」


 高虎と家臣が一体化し、新領地の政治の采配を振るう中、政信と三島も一応、津城に来ていた。ただし、謹慎は、以前、解かれておらず、牢獄で臭い飯を食わされていた。

「よわりましたねー、大佐殿・・・・・。」

「ああ。しかしまぁ高虎の腰引きには参ったわ。家康しか目に見えてないのか知らんが。」

「あまりに我らに対する行いが酷いじゃないですか、大佐殿。なにか手立ては、ないのですか!」

「声がうるさい。小さく抑えい。」

三島は、政信に注意され、黙り込む。

「御茶頭様が津に参られるという噂を聞いた。織部は、豊臣の恩を忘れていないようだから、希望があるかもしれん。」

「そそうですか!!」

「だから、声を。抑えよと・・・。」

「す、すみません・・。」


 高虎の激励から二週間後のこと。江戸から古田織部が津城に労いに来た。

「高虎殿、お久しうのう。お主、家臣を監禁しておるとか。」

「辻政信のことでござりますかな。」

「そうじゃ。そやつじゃが、将軍からの命で監禁を解除せよと。」

「本当ですか。」

「うむ。これよ、花押で本物とわかろう。」

「・・・・たしかに。謹慎は解きます。」


 織部は、秀忠の命を携えて高虎を説得し、これにて政信と三島の謹慎は解除された。織部は、江戸城にて藤堂家の噂を耳にし、駆けつけてきたのである。秀忠の花押付きの文は、秀忠を説得して用意させたものであった。


「ようやく自由だな。高虎に期待は、もう出来ん。高吉様を説得せねば・・・。」

政信と三島は、ある算段を計画し、毎晩、話し合いを続けることにした。

その計画は、「クーデター」によって藩政を奪い、高吉を藩主とするものである。むろん、ことが実行されれば幕府との戦争は、避けられない。

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