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鎮圧

 日が昇ると同時に戦線が動き出した。髑髏軍の攻勢を前に藤堂勢は、猛攻を抑えるのに四苦八苦していた。まさに窮地だった。その中で、高吉は香車という駒を敵陣に放った。それが、政信率いる農兵隊だったのである。


「策は、以下の通り。敵軍の衣服を着て紛れ込み、砦の中で手榴弾を放つ。そして、敵が混乱に陥っているのを合図に我が本隊が砦に攻め入り、占拠する。隊長の作戦は、以上。奮戦を期待する!」

三島が農兵隊から選抜した五名を前に辻隊長の作戦を訓示した。それを理解した遊撃隊五名が敵に紛れて砦に向かっていった。


「よし、まんまと。まんまと入れたぞ。敵の将の名を聞き誰か把握し、そいつが篭る部屋を襲撃しよう。」

「ああ。なんとか生き残れればよいな。」

兵士が伝達し合う。そして、敵兵に接近を試みる。

「もし、我が軍の大将は、誰であったか。」

「!? わしも遠目にしか知らぬが、名は八兵衛と申す。」

「そうであったな。何処におわすか。」

暫くの沈黙から敵兵が口を開く。

「何やら怪しいのう!!ひっ捕らえよぉ!!!!!」

「やべ!!」

自らの危機を目前として、農兵隊員は、保持していた手榴弾を投擲した。

ドッカァーン!!!


 手榴弾は、政信が改良した殺傷力の強い者であり、敵兵の腰を折るのに凄まじい効力を発揮した。

「ほげぇー!!!!!」

「ぎゃぁ!!」「曲者じゃぁ!!!!出会え!!出会え!」

髑髏兵が吠え、狼狽する。その混乱を前に農兵隊員は行方を暗まし、敵大将の捜索を試みることにした。

「何事か!!?? 内部に間者だと!しかし、ここを離れれば裸も同然。ここを動くことは、できぬ!」

「しかし、八兵衛様。我が兵から離反者が出ております。ここは、退くべきかと!!」

「なに!?えーい!くっそたれがぁ!!ここは、突撃を敢行し潔く散るまでじゃ!我に続け!!」


 手榴弾が功を奏し、髑髏軍は、藤堂軍精鋭に突撃をした。だが、これを待ち構えていた高吉と勘兵衛が冷静に事態を対処し、側面に潜ませた部隊を動かし、敵軍にぶち込ませた。

「なんと!側面からぁ!」

「これは、したり!!」

「敵が狼狽しておるぞ!!今じゃぁ!」

準備を整えた鉄砲隊が勘兵衛の命により砲撃を始める。これが、戦の趨勢を決するのである。


「御屋形様!!敵軍が篭る砦にて我が軍が勝利を収め申した!!」

伝令が宇和島城に駆け寄り、吉報を届けた。

「左様か。傷が深まらぬうちに蹴りがついたのは、よかった。では、城におる部隊の一部を差し出し、連の部隊に合流させよ。山方面も一気に蹴りをつける。」

「はっ!」

高虎は、懸念していた。それは、この乱が拡大し、幕府にこの乱の動きが漏れることだった。統治能力無しだと家康に判断されれば、そのときは、改易を免れないし、家康個人の藤堂家に対する信頼を一気に崩しかねないからである。


 戦は、昼前にだいたい決着を見た。髑髏軍の大将は、生け捕りされ、ほとんどの兵は怖気づいて、宇和島の海岸から船に乗船し脱出していった。我先にと兵が撤退していったのである。

「して、この乱を起こしたのは、誰か?」

尋問に当たった政信が八兵衛に問いかけた。だが、彼は、黙ったままだった。

だが、水責めや爪剥ぎという拷問が八兵衛を襲う。

「それでも、わしは、言わんぞ」

八兵衛は、毛利の差し金だという事実を口外せず三日三晩耐えた。だが、遂に口を開き、毛利家の扇動であることを高吉、勘兵衛、政信らに漏らした。

その忍耐力を評価した高虎は、八兵衛を赦し、寺院に蟄居させることに決した。


「して、御屋形様。この乱を幕府あるいは、大坂に居る秀頼様に知らせますか。」

「いや、よい。これは、我が内政の問題ゆえ。漏れれば何かと面倒じゃ。」

「かしこまりました。それがしも、それがよいと思おておりました。」

高虎と勘兵衛の判断により、この件は、これにて一件落着となった。


しかし・・・・・

「なんと!やはり。やはり。やはり!!!!」

「天海様、やはり藤堂は、怪しい者を匿っておるのでしょうか。」

「そうじゃ。何か不吉な者を匿うておる。報せによると妙な兵器が用いられたと。見たこともない爆弾の威力だったとか。臭いわ。」

「将軍に報告するため使者を遣わします。」

「いや、よい。も少し探ってみよう。宇和島の監視を倍に増員せよ!」

天海は、藤堂家に潜む遺物を嗅ぎとっていた。さすが天海である。

藤堂家の命運は、今後、どうなるのだろうか・・・・。

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