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壊れた世界  作者: 夜桜
3/3

神埼美桜2




神埼美桜は自他共に認めるぐらい“仕事人間”。

朝礼の一時間前には仕事をしているぐらいだ。

9時始まりなので8時には仕事をしている。

朝礼を軽く終えるとまた仕事に打ち込む。

以降よほどのことがない限り定時の5時から一時間過ぎた6時まで仕事続ける。

まるで機械のようだ。

そんな彼女に好き好んで近づく人間はいない……ただ一人を除いてだが。




「美桜ちゃん♪」

「……」


カタカタカタカタカタカタ


「ええ!!スルーしないでよ~」

「…………」

お昼、いつの間にか隣に座っている男 椎名弥生が悲痛(?)の叫びにも全力でスルーしている。

視線はただ一点、パソコンに釘付けだ。

弥生が美桜に構うのは2年前、美桜が総務課に配属された時からの風景。

だからか総務課の人たちは「またか」と呆れたように見守るだけだ。

……だからなのか容姿端麗な俗に言う“イケメン”な弥生に構われている美桜が女たちの嫉妬の対象になるのは。

当の本人はまったく気にしていないのが幸いと言えるのか。

「美桜ちゃん、今日こそ一緒にごはんを食べようよ~」

「……」

「美桜ちゃん♪」


カタカタカタカタカタカタカタカタカタ……


不意に美桜のタイピングが止まる。

微かに息を吐き出し(おそらく“ため息”)、弥生を見据える。

何もない無感情な黒い瞳に弥生のにこやかな笑みが写っている。

「……必要ありません」

「ええー食べないともっと痩せちゃうよ?」

「気にしません」

「いやいや、気にしようね?」

「……」

話すだけ無駄だと即座に判断した美桜は彼の存在を無理矢理自分の中から消し去りパソコンに向かう。

しかし、美桜がパソコンに目をやった時には“シャットダウン中”の文字が。

さすがの冷静沈着な美桜でも異常な事態に目を丸くするがよく見ると弥生がニコニコしながらマウスを持っている。

おそらく彼が消したのだろうと判断した美桜は苛立ちからか思わず舌打ちをしてしまう。

それは数少ない女の感情だった。

時折目にする女の感情に弥生はご機嫌がいいのかニコニコではなく、だらしなく頬を弛めている。

「パソコン消えちゃったから仕事出来ないね~」

「誰のせいですか…」

「んー、僕かな?」

「分かっているなら今後このような事はお止めください」

そう一言言ってから珍しく盛大にため息をついてから椅子から立ち上がりその場から立ち去ろうとする。

だが、いつの間にか手首をつかまれていることき気付き顔を歪めている。

対して弥生はニコニコ。

「ご飯なら買ってきたからね」

「飲み物を…「美桜ちゃんにはブラックのホットを買ってきたよ」

「…手拭き「入ってるよ♪ちゃんと食後の分もね」…」

弥生の用意周到さに少しばかり引きつつも、彼に自分の事を“知られ過ぎた”ことに自身の迂闊さに気づいた美桜。

一先ず数年ぶりの昼食をとるために椅子に座りなおすのだった。



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