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魔女と呼ばれた少女  作者: 夜桜
大公家訪問
9/36

9,温かな朝食と目論見





翌朝、太陽が大公家を照らすとともにカグヤ=ウィリアムは目を覚ます。

微かに自室の窓から射し込む太陽の光がカグヤの瞼にあたり眩しそうに擦りながら起き上がる。

そして窓に近付き白いカーテンを大きく開けると太陽の光が目に入ると同時に生き生きと輝く美しい広大な木々映る。

「……おはようございます」

カグヤの挨拶に答えるように木々の間を風が吹き抜け揺れる。

力強い生命を感じカグヤは小さく微笑み着替えるためにその場から離れる。



ウィリアム大公家の邸は王族の血筋だと言うのにこじんまりとしており他の貴族と比べるとわずか1/3ぐらい。

へたしたら町にある宿屋と変わらない大きさだ。

その代わり土地はこの広大な森全てで王家の土地の数倍はある。

およそ500年に渡り大公家はこの森の中で暮らし自然と共に生きてきた。

その生活はこの先も変わることはないと言われている。



寝間着からパンツスタイルに着替えたカグヤが向かった先は自室のある二階を出て一階のキッチンとリビングが一緒になった広間で庶民に昔から親しまれるダイニングキッチンだ。

大公家は通常住み込みで働く使用人などは雇うことはなく自分達の生活は自分達で行っている。

今いる使用人は昔から大公家に仕えている老執事とその妻である料理人、そしてカグヤの専属使用人のルリのみ。

今日はその他に王の来訪を聞き届けて現大公 アル=ウィリアムの妹 ルージュが3人の信頼できる使用人を連れて手伝いに来てくれている。

カグヤは幼い頃から教育の一貫として2年前に亡くなった先代の妻に料理を初めとする家事全般を教えて貰っている。

今だって王に出す料理を作るのを手伝いにきている。

ちなみに今は朝5時を少し過ぎたところで父や兄はまだ起きていない。

キッチンでは老執事の妻がキビキビと動いて準備をしておりその後ろではルリが必死に下準備をしている。

時折、老執事の妻がルリに何やら教えておりまるで祖母と孫のような光景にカグヤは小さく微笑んでから声をかける。

「おはようございます、マーサ、ルリ」

声をかけると老執事の妻 マーサとルリはカグヤの方へ顔を向けると二人揃って嬉しそうに微笑む。

「「おはようございます、姫」」

あまりのそろいっぷりにカグヤは微笑ましげに笑ってから自身もキッチンに入りエプロンと三角巾をつけて王家の一つ、ウィリアム大公家の愛娘とは思えないぐらいの手際の良さで次々とルリと一緒に下準備をしていく。

いつもより倍は違う量だが三人で下準備を終えるとルージュが掃除を終えた使用人と共に戻ってきて使用人達は食べるダイニングを綺麗にしていきルージュはカグヤ達に混ざって調理を手際良くやっていく。

「家じゃやらしてくれないのよね♪」と、言って公爵夫人とは思えないぐらいの速さで次々と仕上げていく。





朝6時30分になると大公家父子とウィル達もやってくる。

大公家では使用人達も同じ席で食べるため王族直属騎士団の人達も大きな身体を小さくしながら王と同じ席につく。

慣れた様子の大公家の使用人達は遠慮なしに座り、ルージュが連れてきた使用人達も慣れているのか主人と同じ席についている。

だが、この中でいない者が二人いた。

ウィルはそのうちの一人に気づき自分の正面に座るアルに問う。

「ウィリアム大公、娘殿がいらっしゃらないようだが?」

「今日はルリと一緒に自室で食べていますよ

……空気を乱さないようにと言ってました」

そう言ってにこりと微笑むアルに心当たり有りまくりなイルはいまだ大公家があの(・・・)に怒っていることに気づき口元がひきつる。

言うまでもなく騎士団もだ。

そんな彼らに気づきつつもウィルは特に深く聞くことなく食事を再開する。

「……(にしても王宮の料理より温かく美味いな)」

「今日の魚は随分身が引き締まっているな……」

ウィルが心のなかで思っていると感心したようにサクヤが言葉をもらす。

すると彼の右隣に座るマーサがまるで孫を見るかのように目を細めて答える。

「若様、こちらの魚全て姫様が朝早くに【白銀の狼】様と共に採られたものでございます」

「ああ、成る程な

それは美味い魚が手に入るわけだ」

マーサの言葉にサクヤは満足そうに頷くもののウィル達には全くわからない。

それが顔に表れていたのかアルは表面上はにこりと笑い答える。

「【白銀の狼】とは我ら大公家の守護者みたいなものです

彼の者はひどく鼻がきき目がよくそう言うのを探り当てる術を持っております」

「その【白銀の狼】が手伝ってくれたと?」

「左様

あの者は気紛れで娘の言うことしか素直に聞きませんからくれぐれも無闇に近付かないように」

大公の言葉でようやく昨晩、少女を護るかのようにいた狼を思い出す。

確かに無闇に近付けば噛み殺されるなと漠然に思ったウィルはしっかりと頷くのだった。





食事が終わるとウィルはイルだけを連れて部屋に戻る。

変な緊張感から解放された二人はだらしなくソファーに座り込み息を吐き出す。

「食事は美味いが正面にいる大公には困った」

「私はサクヤ様からのただならぬ圧力が怖かったですよ……」

昨夜のこともありイルは情けないことに泣きそうになっていた。

そんな右腕を見てウィルは一抹の不安を覚える。

「イル、俺は大公家と“仲直り”出来るか不安になってきたのだが……」

「真顔で言われても困ります!

……ですが少し不安ですね」

ウィルの意見にイルも眉を寄せる。

そう今回の大公家訪問にはとある目論見があった。

それはウィルの父であり先代王の失態を大公家に許してもらう事だ。




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