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魔女と呼ばれた少女  作者: 夜桜
成人の儀
23/36

23,三大公爵家








この国の頂点には“ルミナール王家”と“ウィリアム大公家”が存在する。

彼らは俗に【王族】と呼ばれる高貴な血筋。

そのすぐ下には国の中枢を支える三家がいる。


先代国王の腹違いの妹を母とする、現国王の親族“ゴールディー公爵家”。

彼らは“ウィリアム大公家”が政治から手を引いた後、この国の中枢を担った。


“ウィリアム大公家”の親族、“ガーネット公爵家”。

大公家の右腕的な存在たる家柄でここ数十年は王家とは断絶状態だったが、“大公家の姫”が表舞台に立つということで儀式に参加する。


王宮専属魔術師、“ウール公爵家”。

国内唯一の魔術師一族で建国の時から王家に仕えている。


三家は俗に【三大公爵家】と呼ばれ国を支えてきた家柄だ。










王宮では【成人の儀】に向けての貴族たちの夜会が始まっている。

現国王ウィル=ルミナールはいつも通りの無表情な鉄仮面で彼等の挨拶を受けていた。

はっきり言うとウィルはこう言うきらびやかな事が苦手だ。

だが、今回は建国から続く儀式。

いくらこの国の王だとしても避けることはできない。

だから心のなかでため息をつくのも仕方がないだろう。

「(文句を言っても仕方がないのは分かっているが……

いい加減うんざりするぞ)」

入れ替わり立ち代わりでやってくる貴族たちにうんざりしていた頃、彼等はやって来た。

「お久しぶりでございます、陛下」

「……」

「……ゴールディー公爵に叔母上」

出来れば会いたくなかったが会ってしまった……無表情の裏でウィルは頭が痛くなるのを感じていた。

【王家】に次ぐ権力を持つ【三大公爵家】の一つ“ゴールディー公爵家”。

その現公爵 ジニア=ゴールディーとその妻にしてウィルの叔母 シレネ=ゴールディーがいた。

下心ありまくりな薄汚い笑みを浮かべるジニアとは違い流石は王族の一人なだけありシレネの立ち振舞いは堂々たるもので美しい。

何人ものの視線をさらっていく。

だが、ウィルは知っている。

美しい(もの)には棘があることを。

「……(ゴールディー公爵家は実質、叔母上の手のなかだ

おそらく親父たち兄弟の中で最も狡猾で英才な方だろう)」

油断したら喰われる、漠然とだがウィルは感じている。

だが、シレネはそんなことも感じさせない美しい笑みを浮かべながら親しげに話しかけてくる。

「本当に久しぶりですね、陛下」

「そうですね、叔母上」

「最近は家にも寄り付かないではありませんか

……何かあったのですか?」

心配そうに眉を寄せるがウィルには仮面にしか見えない。

いつも通りの無表情で彼は返す。

「大丈夫ですよ

むしろ肩の荷が一つ降りてホッとしています」

「?」




「それは“我々”の事か?ウィル陛下」





ウィルの言葉にシレネが首を傾げるが後ろから聞こえた声に顔を歪める。

それはゴールディー公爵もだった。

現れたのは紅いタキシードを来た金髪と“大公家特有”の蒼い瞳を持つ美丈夫 リアトリス=ガーネット。

“ウィリアム大公家”の親族“ガーネット公爵家”の若き公爵だ。

年齢には会わない不敵な笑みを宿している。

「ガーネット公爵」

「お久しぶりです、陛下

我らが“大公家の姫”はいかがでしたか?」

「ガーネット公爵!!」

意地悪なリアトリスの質問に過敏に反応したのはジニアだった。

彼はかつては整っていたであろう顔を真っ赤にして歪めている。

さらにはシレネも眉をひそめている。

一人、リアトリスだけは平然としていた。

「陛下になんという無礼を……!」

「無礼?

我が聞いたのはあくまでも姫の事だ

何が無礼なのかな?」

思い当たる節がないと言わんばかりにわざとらしく肩を上げるリアトリス。

洒落た彼の動作にウィルは無表情をかすかに綻ばせ口許に笑みが浮かぶ。

だが、すぐさまいつもの無表情に戻り気づいたのは一番そばにいたシレネだけだった。




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