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魔女と呼ばれた少女  作者: 夜桜
成人の儀
21/36

21,ウィリアム兄妹、双方の今









“【成人の儀】にウィリアム大公家が参加する”

その言葉は王宮だけでなく国中が知ることとなった。







“大公家の森”の中央に位置する大公家の邸は今回の主役たるカグヤ=ウィリアムの支度で少しばかり忙しそうだった。

特に専属のルリの気合いのはいりかたは他のもの達を凌駕している。

「姫、髪型はいかがなさいましょうか?

オススメといたしましては一つにまとめ横から流すのもよろしかと」

「……いつもどおりではダメですか?」

「他には上半分を団子にして下はカールにしてとかございます」

「……(無視は少し辛いです)」

「髪飾りは奥様の使いましょう!

姫の漆黒の髪には蒼い髪飾り……いや、白銀か?

それとも……」

主が黙っているのも気にせずにドンドン話を進めるルリ。

その表情は生き生きとして主役のカグヤよりもはしゃいでいるように見える。

対して本日の主役たるカグヤは不気味なまでに落ち着いていた。

どこまでも透き通った深紅の瞳は彼女の手元をうつすだけだった。


あまりにも危うい主に少なからずルリは気づいていた。

だがそれに手を差し伸べるのは自分でないことを知っていた彼女は何も言わない。

ただ会場中の人間達が主から目を逸らさずにはいられないぐらい美しく可憐に着飾らせるだけ。

「……(悔しいけど姫の“唯一”に託すしかないのね……)」






同時刻、書斎には群青色のタキシード姿のサクヤとアルが対面していた。

アルはにこやかにサクヤはどこか不機嫌さを隠さずにだが。

「そこまで苛つかなくてもいいだろ?

少し早いだけだ」

「15歳と言うのは早すぎるのでは?」

「……」

「……黙ったままにこやかに殺気を出さないでください」

口でいえと態度で示すサクヤの言葉など完全に無視して話を進める。

「今日この日この瞬間からお前が“ウィリアム大公”だ、サクヤ」

「はい」

「決して“ルミナール王家”に心を許すな

彼らを見定めるのが“ウィリアム大公家”だ

例え愛し子が心を許してもだ」

「かしこまりました」

先代の言葉に今代が頭を下げる。

静かにだが確実に今、当主が交代した。

「我、サクヤ=ウィリアムは今を持って先代、アル=ウィリアムより“ウィリアム大公”の名と業を承りました」

「……頼んだ」

どこか物寂しげな微笑むアル。

歴代の中でも異例の長さで“単独で”大公家を支えた彼の思いは若年であるサクヤにははかりしれない。











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