20,物語の続き2
【成人の儀】
それはウィリアム王国建国の時から受け継がれている王宮の儀式の一つ。
500年余り続いた神聖な儀式に嵐が投下されたのです。
王族に次ぐ権限を持つ“三大公爵家”の出席もその一つ。
数十年ぶりの参加となる大公家の親戚たる“ガーネット公爵家”の存在は大きいものでした。
王国唯一の王宮魔術師一族“ウール公爵家”。
現在最も勢いのある“ゴールディー公爵家”。
【翡翠の王】が各重鎮達に挨拶回りしながらも彼の頭の片隅には可憐な少女の存在が気にかかっていました。
元婚約者が話しかけてきても上の空。
もうすぐ儀式が始まる……
そんなときざわざわと騒がしかった会場が一気に静まり返ったのです。
王は原因に視線を向けるとホッとしたように息を吐きます。
現れたのは王族特有の白銀の髪と大公家特有の深紅の瞳の男と、王が会いたくてしかたがなかった異国の漆黒の髪と大公家特有の深紅の瞳を持つ可憐な少女だった。
“ルミナール王家”と同等の権限を持ちし初代国王の直系“ウィリアム大公家”の来訪でした。
十数年ぶりの大公家の登場に周りの貴族は呆然とし目を見張るのです。
【大公家の魔女】と侮蔑されている少女。
あまりにも可憐で柔らかな空気を纏う彼女の存在に貴族達は誰もが“噂”の真偽を疑ったのです。
翡翠の王は彼ら……いや、少女を歓迎します。
王の歓迎に少女は柔らかく微笑み兄共々礼をとるのです。
その瞬間、会場はざわつくのでした。
数十年ぶりに王家に頭を下げた大公家。
それは事実上“王に仕える”ということでした。
同時に様々な人間の欲望が浮き出た瞬間でした。