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魔女と呼ばれた少女  作者: 夜桜
空白の時間
14/36

14,ガーネット公爵家訪問




もう夏が過ぎ秋がきた初秋。

広大な森の木々も鮮やかに色づきはじめている。

大公家の邸の周りも鮮やかに色づいており貴族の邸にしてはこじんまりとした庭のベンチに座る少女がいる。

ウィリアム大公家の直系の娘 カグヤ=ウィリアムだ。

何者にも染められない美しい漆黒の髪を風に遊ばせている。

いつものパンツスタイルの服装ではなく貴族の子女達が着用する外いきのドレスを着ている。

淡い桃色のドレスは彼女の柔らかい空気を表しているかのよう。

澄んだ深紅の瞳は森に向けている。

「カグヤ」

「!」

ふと名前を呼ばれ慌ててベンチから腰を上げ声のする方を見ると白銀の髪と深紅の瞳の誰もがみとれる美貌の青年がにこやかに立っている。

来年の誕生日には大公なるカグヤの兄 サクヤ=ウィリアムだ。

あまり似ていない兄妹だが大公家の直系たる証の深紅の瞳と大公家の直系の“とある性質”により彼等が兄妹だということは周知の事実。

見目麗しい兄は妹を慈しむように微笑んでから声をかける。

「そろそろ出よう」

「はい、お兄様」

多くは語らない兄の言葉にカグヤは躊躇いなく頷きゆっくりと歩く兄の背中をついていく。





二人が向かった先はウィリアム大公家とは古くから繋がりのある公爵家。

三大公爵家の一つでアル=ウィリアムの妹が嫁いだ家“ガーネット公爵家”。

大公家の邸よりもはるかに大きな屋敷の前で待っていたのは燃えるような赤髪と大公家特有の深紅の瞳をもつ妙齢の美女だ。

兄の手をかり馬車から降りたカグヤは彼女を見ると満面の笑みを浮かべて挨拶する。

「お久しぶりです、ルージュおば様」

「久しぶりね!カグヤ、……それにサクヤも」

「まるで今思い出したかのように言わないでください、叔母上」

苦笑するサクヤの視線の先にはガーネット先代公爵夫人にしてウィリアム兄妹の叔母 ルージュ=ガーネットがにこやかに立っている。




ルージュ=ガーネットこと旧姓 ルージュ=ウィリアムは先代大公(カグヤ達の祖父)の四人の子供の末子に産まれながらもいち早く結婚した。

歳は50歳になるアルより6歳若い44歳。

もう美貌が衰える年齢なのにまだまだ若く美しいのに3人の子持ち。

一番上は現公爵でサクヤの親友もある。

ちなみに堅物兄のアルが自分より若い異国の妻を連れてきたときは半目になりながらも、

「狼に捕まった哀れな兎ね

……ごめんなさい、アルお兄様は私の手には負えないわ」

と心底異国の妻に同情したらしい。

歳が近いこともありすっかり仲良くなった二人は遠い所に居るのにも関わらずよく同じ時間を共有していたようだ。



ガーネット公爵家は貴族らしく沢山の使用人がいるが隠居した先代公爵と妻たるルージュが暮らす離れには二人しか使用人はいない。

兄妹が今日お世話になるのはその離れだった。

「よくお出でなさった、サクヤ殿 カグヤ姫」

「お久しぶりです、先代公爵殿

今日は妹共々お世話になります」

先代公爵 トレニア=ガーネットはにこやかに兄妹を迎え入れる。


ルージュが44歳でトレニアは64歳と親子程離れておりトレニアはルージュが二人目の妻だ。

しかしトレニアは前妻と政略結婚で、仲はかなり不仲。

自分の爵位にしか興味のない前妻にうんざりしてたころに偶々、先代大公に付き添って公爵家にやって来たルージュに一目惚れしてしまう。

年齢のこともあり中々前に踏み出せないトレニアだったがルージュもトレニアに惹かれたことと先代大公の後押しにより二人の婚姻は叶った。

(前妻は先代大公に連れられ消えたらしい……?)

以来歳の差なんて感じないぐらい有名な鴛鴦夫婦なのである。

閑話休題。


トレニアは血の繋がらない甥と姪を歓迎しルージュは久しぶりにキッチンに立ち料理を振る舞う。

久しぶりに料理が出来るのが嬉しいのか鼻歌混じりでテキパキとこなしている。

「やっぱり自分で作れるって最高ね♪」

「だからと言って怪我しないでくれよ……」

手際のいいルージュを見て無駄に怪我の心配をするトレニア。

昔、ルージュが庭のバラのトゲで怪我したときトレニアは国一番の医者を呼んだこともある。

少しの怪我にもトレニアはルージュのことならば敏感の反応してしまうので公爵家に来てからルージュはほとんど怪我をすることがなかった。

カグヤはサクヤと共にその光景を目の当たりにして思わず苦笑してしまう。

と、同時にかつての自身の両親を見ているようでどこか近親感が湧いている。





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