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魔女と呼ばれた少女  作者: 夜桜
大公家訪問
10/36

10,因縁と噂






その話は貴族だけでなく庶民の間でも有名なこと。




ウィルの父であり先代王 スカリ=ルミナールは当時でもそうだが死んだ今でも“愚かな王”と言われている。

その理由はいくつもある。

一つはかなり女ぐせが悪く直ぐに手をだす好色家。

正妻の他にも国内外を会わせると10人以上の側室がおり意外なことにウィルの母親もその一人だ。

そのくせ飽きるのも早く長続きしないかったという。

他にも“政治は側近任せ”“次期国王の選任はくじ引き”等々。

あげ出せばキリがないのも有名な話。

そのなかでも有名な……いや、愚かなことがある。

それは先代大公の前で大公の婚約者、当時はまだ次期大公だったアルの婚約者を侮蔑したことだ。

しかも正妻と共にだ。


その当時、大公家はなかなか婚約者が決まらなかった堅物次期大公が惚れ込んだ異国の婚約者を絶賛歓迎ムードだった為にそれは酷かった。

たった一言

「大公家にはこんな変わったメイドがいるのだな」

「ホントに

黒いメイドとは私も欲しいものですわ」

そう言うと先代大公夫妻はぶちギレ、相手は自国の王夫妻だと言うのに直ぐ様彼らを森から追い出し先代王夫妻が生きている間はウィリアム大公家は王の手助けを一切せず、国中に住んでいる親族全員に「ルミナール王家を助けるな!彼らはアルの婚約者を侮蔑した!」と言う徹底ぶり。

大公家の自分たちの対応に気を悪くした王夫妻は彼らの許しを得ることなくそのまま王宮に帰り、悲惨な人生を歩むことになる。


まず、先代王はウィリアム大公家の後ろ楯がなくなったことによりまず、ウィリアム大公家と親類関係のある貴族達が王宮から離れたしまう。

それにより残った貴族で国を回すことになったのだが、これがいけなかった。

今まで王が側近に任せていても政治が回っていたのは王族の血を受け継ぐウィリアム大公家が王しか決断出来ない事柄でさえも彼らの采配で国を導いてきた。

だがウィリアム大公家が居なくなったことにより王に沢山の書類が回ってきたがいままで何もしてこなかった先代王では回せず政治が混乱し始めた。

さらにウィリアム大公家が必死で貴族の私腹を肥やさないように調節していたが貴族の私利私欲での政治が始まってしまった。

正妻は正妻で今まで呼ばれていたホームパーティーに呼ばれることなくさらには懇意にしていた商家からも尻尾を向けられ新しいドレスが新調できない。

派手好きの正妻にとっては死ぬほど辛いことだった。


ウィリアム大公家の後ろ楯が亡くなりウィルが即位するまでのおよそ15年間、国は確実に疲弊していた。

いくら“愚かな王”でもさすがにウィリアム大公家に謝ろうと何度も使者と共に向かったが何故か森の入り口に帰ってしまう。

結局、謝ることが出来ないまま死んでしまった。

以後、ウィリアム大公家を(おおやけ)で怒らせてはならないという不律問ができたのだ。

以上の経緯により当代国王 ウィルはウィリアム大公家との仲を良くしたいと考えここまでやってきたのだ。





ウィルとイルは緊張のあまり顔を強張らせながらカグヤの専属使用人 ルリのうしろを歩く。

騎士団は別室で待機しているため広い廊下には3人しかいない。

ウィル達の緊張感が伝わったのかルリは大きくため息をついてからチラリと二人を見てまたため息をつく。

「……何を緊張なさられておいでですか」

「緊張しない方がおかしいのではないのですか?」

「……」

イルの返しにルリは呆れ顔をしてから前を向き一瞬固まってしまう。

それに違和感を感じたウィルは前を向き思わず破顔してしまう。

視界に入るのは部屋の前に立つ漆黒の少女。

「姫!?」

邸中に響くのではないかと思うぐらい大きな声でルリは少女を呼ぶ。

遠目からでもわかるぐらい肩をびくんと上げてから恐る恐る少女をこちらへ顔をやる。

そして小さく微笑みながらこちらに手を振ってくれる。



イルは思わず目をみはる。

大公家の愛娘はこの国では“魔女”の代名詞でもある黒色を持つために貴族の間では“大公家の魔女”と呼ばれ社交界でも話されている。

曰く、毎夜毎夜森の草木を採る。

曰く、高い魔力を持つ。

曰く、呪いを使い大公家の邪魔者を消している。

上げれば悪い噂しか流れていない。

だが今、イル達に向かって微笑む少女は何処にでもいる普通の女の子だ。

「……(たしか、大公の亡き奥様によくにた容姿だったはず

……とてもではないがメイドには見えないな

それに噂は所詮噂か)」

奇しくもイルは昨夜のウィルと同じことを考えていたのだった。





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