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美少女村人に転生致しました

ここは、ファインダル王国の王都ファインザイトと交易都市クラリスを結ぶ交易路から少し外れたのどかな農村、ピオネイト。


私はこの村唯一の宿屋である『星降りの宿』の娘として生まれ変わりました。


ピオネイトは農村ではありますが、近くに大きな交易路と宿場町があるので、少人数ではありますが、旅の方がいらっしゃいます。


また、大交易路と比べるとかなり道は悪いですが、交易都市のクラリスまで続く道もあり物好きな方が利用するのです。

道は悪いけれど、風光明媚な場所が多いので、冒険者の方や吟遊詩人など、特に急がず世界中を気ままに旅している方に人気なのだそうです。

よって、毎日お客様はいらっしゃいますので、齢8歳の私も毎日手伝いに励んでおります。


前世が公爵家でしたので、どうしても暮らしのレベルに差はありますが、掃除や洗濯などの家事は嫌いではありません。

前世では、王都の端にある別邸に暮らしており、使用人も1日1回やってきて私の部屋以外の掃除と必需品の調達はしてくれましたが、その他の調理や洗濯といった仕事は自分で行っておりました。

多少不便はありましたが、村人として転生した今を思えば、とても良かったと思えます。自分で出来ることが多いというのはやはりいいことですね。





宿屋の朝は、早いです。

お客様が起きてくる前に支度をして朝食の用意をしなくてはなりません。


今日も空が明るくなる前に起き、支度を整えて一階の食堂に下りると、すでに朝食の支度をしているお母様と、剣の手入れをしているお父様がおりました。


お母様はこの村で一番の美人と言われています。金色の輝くウエーブのかかった髪にアイスブルーの瞳、二人の子供を産んだとは思えないスレンダーな身体。お顔立ちも、美人と呼ぶにふさわしく美しく整っています。母はこの宿の美人女将として、宿を切り盛りしています。

社交界にもお母様レベルの美人は滅多におりませんでした。


お父様は、日の出ているうちは猟師として、日が落ちてからは、宿の仕事を手伝ってくれます。

お父様の腕がとてもいいので、うちの宿ではいつもおいしいお肉などを提供することができています。父は元冒険者で旅の途中に立ち寄ったこの村でお母様に一目ぼれされたそうです。冒険者を引退するまではそこそこ名のある冒険者だったと、冒険者のお客様に聞いたことがあります。

引退したと言っても、普段から鍛錬を怠らない父は、今でもよく鍛えられた引き締まった体をしていて、とてもかっこいいと思います。

身長が高く、切れ長のダークブルーの瞳に銀色の髪でお顔も整っているのですが、冷たく鋭い印象を与えるようで、村のこどもたちには怖がられています。


そんな二人から生まれた私は、母からアイスブルーの瞳を、父からは輝くような銀髪を受け継ぎ、前世の姿をかけらも残さない美しく可愛らしい姿で生まれました。きっと転生させてくれた女神様のお心遣いなのでしょうね。


「お父さん、お母さん、おはようございます。」


「おはようアリス。うふふ、今日も元気ね。今日のお野菜は井戸のそばに置いてあるからよろしくね!」


「まだ外は暗いから気をつけてな」


「はーい、行ってきます。」


毎朝お野菜を洗うのは私の日課です。

家族で消費する量であれば、台所にある水瓶の水を使えばいいのですが宿泊用のお客様の分となると、水をたくさん使うので直接井戸の傍で洗ったほうが効率がいいのです。

私がお野菜を洗う時は、ちょっとだけ魔法も使います。

洗い桶に溜めた水に、光魔法の浄化をかけて、その水で野菜を洗うと汚れも落ちやすくなり、野菜自体にも光魔法がしみ込んでとても新鮮で美味しい野菜になるのです。


光魔法の適正を持つ方は、あまりいらっしゃらないようなので私のようなやり方で野菜を洗っている方はみかけませんが。


野菜を洗い終わって、宿に戻りお母様を手伝って朝食の提供もひと段落すると、やっと私たちの朝食の時間になります。


お父様は朝早くから狩りに出るので、朝食はお母様といつも2人です。


「そういえば、アランから手紙が届いているわよ。」


「アランお兄ちゃんから?」


アランというのは、私の8歳上の兄です。

武芸の才能があったので、去年から特待生として王都の騎士学校に通っています。


アランお兄様はお母様似でとても優しそうなお顔立ちですが、剣の腕はお父様譲りでとてもお強いのです。私の自慢の兄です。


前世で弟であったシャノンもそうですが、私は兄弟には恵まれています。


「3日前にもアランから手紙があったばかりなのにねぇ?まぁアリスはこーんなにかわいいから毎日でも手紙書きたくなるのもわかるわ。」


そう言って、お母様はぎゅっと私を抱きしめてくれました。


前世では、母に抱かれた記憶が皆無なので、こういった家族からのスキンシップはとっても嬉しいです。母の腕の中がこんなに安心して心地よいものであることを私は転生して初めて知りました。


忙しい毎日ではありますが、やさしい家族に囲まれて私は今とても幸せです。

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