プロローグ 2 『少女、名乗る。』
孤児院に連れられて来た少女は、
一先ず水浴びを行う事になった。
「綺麗!」「お人形さんみたい!」
以上。孤児院年長組からのコメントである。
則ち、引き籠り生活で必要以上に光を浴びなかった為、
異常なまでに地肌が雪の様に白く、
更に使用人達に良く手入れされた燻銀の長髪は
数日の奴隷商館生活では衰えず、
寧ろ精神的に憔悴した事で儚さが増して居たのである。
「ねぇねぇ。名前何て言うの?」
その問いを聞いた少女は、
されるがまま無表情になっていた表情を少し歪ませて
少し躊躇った後、言った。
「セリス。セリス=ルージニア。」
プロローグ 2 『少女、名乗る。』
水浴びを終え、用意されていた服を着た
セリスは孤児院長に呼び出されていた。
「セリスちゃん?
この場所は今日から貴方のお家なの。解る?」
その台詞を聞いて、
セリスは表情を変えずに首を傾げた。
「おうち?」
実はこの孤児院、奴隷商館の番頭の出身地である。
あの気の良い番頭の青年は、世話になった老院長に
『放って置けないガキンチョが居る』と伝えたのだ。
その話を聞いた老院長は、様々なコネを使いセリスを
自由の身にする為に動いたのだ。
「そう。お家よ。」
セリスは少し考え込む仕草を見せたが、少し経つと、
無邪気な笑みを浮かべた。
「わかった!」
この日から、セリスはこの孤児院で暮らすのだった。