この出逢いは…、友紀は運命を、 千尋は…。ふたりの時間が、 ゆっくりと動き出す。
「一緒にいて。」
「大丈夫? 外にいるから。」 「お願い、ここに…、 ここにいて。」 シャツを握る小さな手に力が入った。
「わかったよ、
ここにいるから、 とにかく、
トイレを済まそう。」 千尋に背中を向けて立った。
「普通じゃん…。」 小さなつぶやきだった。トイレを出る。 電車で帰ると言う、 始発までには、 まだ時間がある。 「家まで送るよ。」 「いい…、大丈夫。
始発で帰るから…。」 そう言うと、 その場にしゃがみこんだ。 「ひとりにはしていけな いよ。」 「あたしは、 大丈夫だから…。」 うつむき、泣き出す。
肩を抱き、促す。 小さな身体を預け、 車へと。
助手席のドアを開け、 千尋を座らせる。
シートベルトも友紀が。
微笑む。
車はゆっくりと滑り出した。