No.3「とある人物の悩み相談」
No.3「とある人物の悩み相談」
生徒会では、悩み相談も行っている。
これは人の為に働くのが大好きな優先輩の思いつき。
結構評判も良い。
今日も一人、相談に来る。
「1年C組天井 恵です…今日は、私の恋愛相談についてなんですけど…」
「恋愛相談かぁ…キタコレ!」
「ちょっと、優先輩まじめに聞いてあげてくださいよ。いくら恋愛事が大好物とはいえ…」
僕はお茶を出しながら優先輩を注意する。
生徒会の皆は優先輩をお構いなしに叩くのだ。
物理的な叩くではなくて、いじる。突っ込みを入れる。という意味での叩く。
「あのぉ…続けてもいいでしょうか?」
「いいわよー。続けて頂戴っ」
「実は、私の恋の相手というのが…3年生の宮野 修二さんなんです。写真を見てそれで一目ぼれ。あったことはないんですけど…」
「なるほど、写真で一目惚れかぁ…」
「それでですね…相手の事を調べてほしいんです。お願いしますっ!」
恵ちゃんは椅子から立ち上がり、ぺこりと頭を下げる。
優先輩は腕を組んで
「まっかせなさいっ!」
と自信満々。
僕は気付かれないようにため息をつく。
何でこんなに自信があるのかわからない。
「私達生徒会が責任を持って貴方の恋を叶えてあげるわっ!」
「いや、優先輩。頼まれてるのは調べる事までですよ?」
「どうせならくっつけましょうよ!こころ君!」
今度は大きくため息をついた。
すると恵ちゃんが困った顔をするので、ため息を途中で飲み込む。
「でも、任せっきりじゃぁ悪いので、私も一緒に調べます!」
「わかったわ、早速明日から調べましょう」
恵ちゃんはいい子だ!
ここで任せっきりにされたら僕はこの変人の集まりもとい、生徒会の中に飲み込まれながら調べさせられるところだった。
…あれ、そう言えば二人はまだ来てないのかな。
「失礼しました!」
恵ちゃんが部屋から出ていくと、僕と優先輩は二人きりになった。
そして、部屋の中を見渡すと…
会議室にあるような長いテーブルを四角形に並べている。そして、ホワイトボードのところに僕の椅子。
その向かい側に会長・優先輩の椅子。
左がまだ来ていないが 会計・金谷 信一の椅子。
右が、同じくまだ来ていないが…書記・綿釧 利津の椅子だ。
僕はお茶をすすっている。
時計を見ると短い針は4と5の間を刺してい
て、長い針は2と3の間を刺している。
…まだ来ないのか、変人2号と3号は…
「二人とも遅いわねぇ。」
「そうですね、遅いですねーあの人たち。」
僕ら二人以外の席はガランガラン。
変人2号と3号。そして顧問の先生という名
の変人4号はまだ来ていない。
「ごっめぇ~ん! 遅れたわぁっ」
やれやれ、やっと変人2号のお出ましだ。
生徒会書記の綿釧 利津。
才色兼備のお嬢様。
ナチュナルな茶髪。
身長は会長より普通に高い。
でも会長より少し、いやかなり変人。
「遅いよぉー、利津ぅー」
「ごめんねぇー、優ちゃんーこころくんー」
「全く…で、会計は?」
「あぁ、信一君だけどねぇーさっきそこで会ったから、もうすぐ来ると思うわよー」
なにかとあいつとこの書記は一緒の事が多い。一緒ではなくても、わざわざ時間をずらしたり…二人で何をやっているんだろう。
「おはようございます。」
扉を開けて開口一番で間違えているこいつが生徒会会計の金谷 信一。
黒髪短髪。四角い眼鏡をかけていて、その奥に潜む瞳に映るものは誰にもわからないような謎キャラ。
にもかかわらず、変に天然。
そして、以外とオタク。
「今は夕方だよ、普通はこんばんはか、こんにちはでしょう」
「さらりと天然出すのはやめましょう~私の立場ないから!」
「そっちですかっ!?」
「優ちゃんの立ち位置よっ」
「ちょっ、それはいいから。早く今日の議題をっ!」
「はわぁっ! そうだったわね、そうだった! こころ君! ごめん、そしてありがとぉっ」
「はい、では今日の議題は…元々は秋の文化祭のテーマについてだったんだけど…」
「たった今、新しい相談があってねっ! それについての事を今日から話し合ったり、調査しましょう!」
「どのような相談なのですか?」
「それは、紙にまとめたから見て」
「ふむふむ。なるほど、んなっ! これは!」
「あぁーあ。出たよ。」
「謎の男子ルートを辿るちょっと危険でビターな女性視点ギャルゲ! これは攻略が難しいぞ!」
「おぉーぃ、帰って来いー」
「よぉし、解決しましょう! そうしましょうっ! あらゆるフラグを立てたこの僕が役に立つ時が来ました!」
「それはゲームの話でしょう、現実には役に立たないと思いますよその無駄な知識。」
「何を言っているんだ心は! そんなことじゃこの生徒会はやってけないぞ!」
「はいそれ微妙に違うから、間違ってますから。」
「二人とも! 脱線しない!」
「僕も入ってるんですかっ? 金谷が勝手に脱線してるだけじゃぁ…」
「こころ君もそれに一々突っ込むからねぇー、同罪よっ」
「そうだよぉ~」
「と、いうことでぇ~。早速明日から調べましょう! こころ君は私と一緒に恵ちゃんと3人で調べるわよ、利津と信一君は二人でどうにかして調べて頂戴」
「ガッテン!」
…うわぁ、妙にやる気だ。なんなんだこいつは、気持が悪い。
「じゃぁ、明日からそういう運びで行くわよっ! あ、そうそう。文化祭のテーマだけど、私とこころ君で考えておくから」
「え!? ちょ、勝手に決めないでください!」
「君は副会長なのよっ? ちゃんと会長の補佐をしなさいっ」
「んぐ…」
こういう時に副会長の義務の話を出すのは卑怯だ。ずるい。
でも、やるしかないと諦めてため息を一つ。
文化祭のテーマくらい早く決めて、あとは…
お悩み相談の解決に心血注げばいい。
よし、そうしよう。
「では! 本日は解散!」
本日の生徒会の集まりは終わり、生徒会室を去るみんな。
僕も有先輩と一緒に片づけをしてから、生徒会室を出て、二人一緒に帰る。
もう既に外は薄暗くなっていた。
若干夜の色を帯びている空はほんの少し神秘的で、優先輩の横顔がどこか寂しく見えた。
「優先輩っ」
「ふぇ? なぁーにー?」
「今日、うちに寄りませんか?」
「え? いいけど~、なんでー?」
「文化祭のテーマですよ、今日決めちゃいましょうよっ。ほら、この前選挙の時優先輩の家でやったじゃないですか、だから今度はうちでやりましょうよ。優先輩ならうちの親も大歓迎しますし」
「いいわよっ! じゃぁ、今日はこころ君のうちにねっ!」
途端に優先輩の顔が明るく開いた。
優先輩をうちに呼ぶのはかなり久しぶりだ。
母さんもきっと喜ぶ。
それに、優先輩もどこか嬉しそうに見えるし。
この選択で間違っていなかった。
〒±
「こころ君のお家だぁーっ」
「あら、優ちゃんいらっしゃいっ」
「お邪魔してますっ」
部屋に優先輩をあげたら、案の定母さんは喜んだ。
そしてはりきって食べ物を作り、周りの環境を整えてくれている。
優先輩を家に連れてくると、いつも母さんは嬉しそうだ。
何故なのかはよくわからないけれど、どこか保護者的な感情を抱いているのだろう。
「じゃっ! こんないい環境で会議できるなんて滅多なことじゃないわっ! 早速テーマを考えましょうっ」
「んー…うちの学校の文化祭って、どんなことをやるんでしたっけ?」
「合唱コンクールとか、クラスで出し物とか。まぁ、一般的ね」
「んー…競争…とかは?」
「悪くはないわねー。」
「合唱コンクールも言わば競争ですし、なにか競え合えるような事を今年はするとか。」
「例えば?」
「例えば…劇をするクラスを何クラスか集めて、コンクールをするとか。出店の売上を競うとか」
「よし、候補に決まりね」
優先輩はノートに「競争」と書く。
そして優先輩からも候補を求める。
「私はね、“なんでもあり”がいいと思うの」
なんでもあり…若干放棄気味なテーマだけれど、よく考えればいいかもしれない。
なんでもありということは、いろんな事ができる。
テーマと言うには少しおかしいかもしれないけれど、結構いいかもしれない。
「なんでもあり…かぁ、いいと思いますよ?」
「じゃぁ候補ね」
…久しぶりの有意義な会議だ。
いつもいつも話が脱線してこんないい会議はできない。
今日は脱線させる人がいないからか、環境が整っているからかとてもいい会議ができている。
「でも…これ、どうやって決めます? 今二人だし、多数決では決が採れないと思います。」
「そうねぇー…」
「候補だけ今ここで決めて、決は後で取りますか? 相談解決に向けて調べる途中でも、決める事くらいはできるでしょうし。
とりあえず、相談の解決を最優先させて、後からでもいいんじゃないでしょうか」
「そうね、そうしましょう!」
「じゃぁ、今日は終わりですね」
僕は大きく伸びをして、立ち上がった。
「これ、食べてからでいい?」
「いいですよ」
今回で少し、この小説の方向性が分かったんじゃないかと思います
というか、最近更新遅くてごめんなさい
忙しくて…
感想は、ぶろぐのほうによろしくです
http://playlog.jp/gzza/blog/