No,2「生徒会に入りなさい!」
No .2「生徒会に入りなさい」
入学式から数日が過ぎ、僕が生徒会副会長になったのには、次のような経緯があった。
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「こころ君こころ君!」
「なんですか? 優先輩」
「君…生徒会に入りなさいっ!」
…へ?
僕はとっさのことに腑抜け面を作ってしまった。
「だからぁ~生徒会に入ってって言ってるのぉ~」
「生徒会ですか…そういえば、4月12日にあるらしいですね、選挙。早くないですか?」
「うちの学校はそうね、早いかもしれないわね」
「1年生がまだ学校入ってすぐじゃないですか」
「いいからっ! 副会長だよっ! 私の傍で働いてよ~ね? 懐かしい中学時代を思い出しなさい? 二人で切磋琢磨してあの部活を持ちなおしたでしょっ!?」
「そうですけど…」
それは真実だ。
だけれど、部活と生徒会とでは訳がちがう。
まぁ、優先輩の傍で働けるのは凄く嬉しいことだけど…
僕には、学校を背負うなんて荷が重い。
でも、今思い返すと優先輩の傍に居たいから、この学校に入ったのだ。
入学式から数日立っている。
今は、9日。もうすぐ選挙ではないか。
資料は前日までに提出すれば大丈夫だけれど
演説とか準備がある。
「出てもいいですけど…」
「いいのっ!? 決まりっ! じゃぁさっそく!…」
「話は最後まで聞いてくださいっ! もう、先輩はいつもこうなんだから…えっとですね、資料は前日まででいいですけど。演説とか、タスキとか活動してないですよっ?」
「大丈夫~大丈夫~っ! 私と一緒に演説考えましょうっ タスキは作って来たわっ 活動は、毎日毎日放課後やればいいのよ」
「そういうもんですか?…ってタスキもう作ってきてるんですかっ!?」
「そうよ、作って来たわ。早速、今日の放課後活動を行って、夜に私の家に来なさいっ一緒に演説考えて、練習しましょっ」
「…わかりました、では放課後に…」
「うんっ! ありがとうっ! また放課後ねっ」
優先輩は覆いかぶさるように言うと、手を振り走って自分の学年の階へと向かった。
一年生の教室は3階。
二年生の教室は2階。
三年生の教室は1回。
分かりやすい設計だ。
そして僕は1年B組。先輩は2年C組。
今はお昼の時間だった。
お昼、日が射してぽかぽかと暖かい廊下に出て友達と一緒にお昼を食べていたら…
いきなり優先輩がやってきて、あんな突拍子もないことを言い出したのだ。
おかげで友達は唖然。
僕はお弁当の前に腰をおろし、ぽかぽかと差し込む日差しを背に、再びご飯を食べ始めた。
「ほんっと優先輩と仲いいよな、お前」
「まぁね、中学時代の縁だしね。」
「いやぁー、それにしても俺はお前が生徒会に入るなんて話し受けるとは思わなかったなぁ。」
「どうせ、落ちるでしょ。僕なんて」
「いやいやぁ、わっかんねーぞー。うかるかもしれんぞ」
「言うなって」
「でも、優先輩のお傍に居たいんじゃないか?」
「それは…」
…はぁ。こいつは鋭すぎる。
こういうところが僕は少し苦手だったりする。
だけど、悪い人じゃない。
むしろ良い人だ。良い人すぎるほどに良い人。
とにかく僕は、その日の授業をさらっと受け。先輩の待つ校門へと行った。
辺りは夕焼けでオレンジ色に染まり、この街を温かい色で染めている。
僕はオレンジという色が好きだ。
あたたかくて、やわらかくて、やさしい。
「あ! こころ君!」
優先輩が走ってくる。
僕は歩いて優先輩のところへと進む。
「こころ君遅いよっ はい、これっこころ君にぴっったりなタスキだよっ!」
「うん。シンプルでいいですねー」
流石優先輩、僕の趣味が分かってる。
僕はシンプルイズベストという思想の信者で、華美なものをとことん嫌う。
他の生徒は赤や青といったペンで自分の名前を書いている中、
僕はただパソコンでフルネームを書いてあるだけのタスキをかけている。
周りの人たちが熱心に活動し始めたので、僕らも活動を開始することにした。
「副会長候補! 会長であるこの私が推薦する。深井 心君ですっ! よろしくお願いしますっ」
「よろしくお願いしますっ! よろしくお願いしますっ!」
…効果はあるのだろうか。
一体どれほど票が入るのだろう。
というか、入んないだろう。票なんて、入れるのはあいつくらいだな。
活動を熱心に続けていると、日が暮れた。
日が暮れ、学校に誰もいなくなったところで候補者も皆帰りだす。
そして僕達は、優先輩の家で演説を考えて練習することになった。
家には電話を一本。
優先輩のところに行くとは言わない。
だって、後で絶対からかわれるじゃないか。
しばらく歩いたら、優先輩の家がある。
学校からは近いのだ。
「ここが、私のお家よっ」
「知ってますって、何回かお邪魔したことがあるでしょう」
「あははぁ~っ そうだったわねー」
数分で優先輩の家に着いた。
外見は…うん、普通。
安心するほど普通。
かなりアットホームな感じな家なのだ。
いろいろ癒される。
「お邪魔しまぁーす」
「ただいまでしょ、先輩は。 お邪魔します」
「ちょっとぼけたのよ~っ こころ君ナイス突っ込みっ!」
…今のは突っ込みじゃなく、ボケ潰しのつもりだったんだけどなぁ。
それにしても、やっぱり優先輩の家は落ちつく。自分の家より落ちつく。
落ちついた色の壁紙、ふかふかでやわらかい赤色のソファー。
リビングにはごちゃごちゃしたものが置いていなく、シンプル。
優先輩の部屋は、女の子の部屋という感じの物もあるのだけれど、ところどころ僕が模様替えを手伝ったので僕の趣味も入っている。
薄茶色の勉強机。木の椅子。
ふかふかのベッド。その上にはかわいらしいぬいぐるみ。数人で作業するための身にテーブルが真ん中に。
その周囲にはオレンジ色の座布団。
本がいっぱい入っている棚。
どれをとっても僕にとってはすごく落ちつくのだ。
「さぁ、こころ君! 演説考えなきゃねっ」
「ここにはいっぱい資料があるんだからぁ」
「資料って…また本とか、過去のアメリカ大統領の演説とか?」
「…なんでわかったのっ?」
「先輩が本の影響受けやすい事はしってますし、他に先輩が用意する資料といったらそういう分かりやすいのしかないでしょう」
「…あばば」
…まったく、学校の生徒会選挙の演説であんな国際的な演説が参考になるわけないじゃないか。先輩は、こういうところが抜けている。
本当にどうするつもりなのだろうか。誘っておいて、ノープランはないよね、うん。
そう考えたい。
「わかったわよぉ…一から考えましょう」
「そうしてください。」
「やっぱりあれよね、自分の経験を織り込むべきよねっ!…こころ君、中学校時代の副部長経験を語りなさい」
「え、え、え、えーーーー!?」
「あれが一番いいじゃないの、演説のネタにしてはねー。私と手を取り合ってあの部活を再興した時のことを演説にしましょう」
「いいですけど…なんか少し気が引けます。」
中学校時代の副部長した経験。
あれは…一種の黒歴史だ。
優先輩と一緒に楽しく働いたのは、いい経験だけれど。
できればあの部活のことは思い出したくないなぁ。
「じゃぁ、それで考えましょう」
「ここからは無言ですよ? 先輩。」
「ぶ~。こころ君と喋りたいもんっ」
「後にしてください。」
先輩はふぐのように頬をぷっくりと膨らましている。
拗ねていても全く怖くもないし。
逆に可愛らしい。
結構拗ねると怖い人がいるのだけれど…
そして先輩も無言で作業に移り、二人別々の演説文を書いた。
それを掛け合わして良いのを作ろうということになったのだ。
先輩と一緒に作業をするのは久しぶりだな。
なんだか少し嬉しい。
「できたわっ!」
「僕もできましたよ」
「せーので見せ会いましょう!」
「「せーの!」」
僕は先輩の書いた演説文を、優先輩は僕の書いた演説文を読む。
…ふむふむ、なるほど。こういう感じか。
優先輩の演説文の良いところは、自分の経験を多彩に取り入れ、そこから学校生活への事につなげている。
これは演説文としてはいいな。
だけれど一つ欠点。
…お笑い要素がある。
先輩の文だからしょうがないか。とは思えるんだけど、やっぱりお笑い要素が強すぎる。
僕はそんなキャラじゃないぞ、全校生徒にどういうキャラを植え付けるつもりだよ、この人。
僕はその意見を率直に先輩に伝える。
すると、先輩も僕の文について良いところと悪いところを挙げた。
「こころ君の文はね、演説には良いかもしれないけど…やっぱり固い! もう少し崩した文じゃないと、多くの人に受けないわよっ
それに、あんまり自分の経験を入れてないじゃないの。だけど、まぁ最初のつかみはいいかもしれないね。」
「じゃぁ、この二つを掛け合わせますか。」
「待った、それは私に任せてっ! こころ君」
大丈夫なのかな。
でもまぁ、一応尊敬しているので信頼して任せることにする。
数分立って、優先輩がいきなり大声をあげて叫び出した。
出来たらしい。
「よし、出来たよぉっ! これで本番に臨みましょう! 早速練習よ!」
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まぁ、そう言った経緯があって。
今の生徒会副部長という役職に就いたのだ。
そして、毎日毎日大変な人達に囲まれ、刺激的な日々を…否応なく送らされている。
…はぁ…
エンジェルマジック(今の名前は天と大地と魔界と○○)
お休みします。
構成をもっと練りなおします。
2年後くらいには復活するんじゃないでしょうか。
その変わりの物を書きます。
3つ位書いてないとなんか落ちつかなくて
それがこれです
今回は、ファンタジーはなく
学園物。
ただちょっとミステリアスな
ビターな感じです