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最弱ルーキーのナイト・スレイド  作者: フランジュ
ダブル・チェイサー編 第一章
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ロスト・ボディ


スレイドとミライはガウナ・リナを出て、すぐにガル・アーナムへと向かった。


この町の奥にある大きな屋敷。

元はセラフィーナのものだったが、今となってはスレイドの屋敷だ。

スレイド自身、いまだに大金持ちになったということが信じられなかったが、いざ屋敷を目の前にすると現実なのだと実感できた。


2人は豪華な食事と綺麗な風呂を堪能して新たな気持ちでミディアランまで向かうことになる。


しかし、この時、2人の知らぬ間にミディアランでは大きな事件が起こっていた。



___________




ミディアラン



スレイドたちが町に到着したのは昼頃だった。

砂漠地帯の空、中央にある日の光のせいで、立っているだけで汗が滲むほど暑い。


そんな中、町の入り口には涼しい顔をしたセラフィーナの姿があった。

やはり服装は黒色の三角とんがり帽子にドネージュの制服、その上から黒のマントローブを羽織り、手には大きな杖が握られている。


「セラ、すまない遅くなった」


「スレイドが寝坊したのよ」


「悪かったな。何回も謝ってるだろ」


「はいはい、次やったら"大寝坊のスレイド"って呼ぶからね」


「お前なぁ……」


このやり取りを無言で見ていたセラフィーナはため息を漏らす。


「兄妹喧嘩はそこまでにしなさい。それどころじゃないから」


「どういうことだ?」


「それは……」


言いかけて止まった。

スレイドとミライは顔を見合わせる。

彼女の反応を見るに何かただならぬことが起こっていると推察できた。


「何があったんだ?」


「それが……()()()()()()()


聞いた2人は言葉を失った。

彼女と別れてから3日しか経っていない。

そんな僅かな間に何があったと言うのか?

それ以上に『ジーナの死』という悲惨な現実を受け入れられなかった。


「……冗談よね?」


「私は冗談なんて言わない」


「でも、どうして?」


「"何者か"に殺された。騎士団が調査し始めたから、犯人は特別な人間だと思う」


スレイドは眉を顰める。

ジーナが殺される理由が全くわからない。

彼女の戦闘能力は冒険者ランク、カッパー(銅)以上はあったように思う。

それなのに簡単にやられるとは考えづらい。


「特別な人間って……一体、誰がやったんだ?」


「さっき騎士団の知り合いから聞いた。恐らくミライとエレノアをさらった盗賊団が関わってるわ」


「なんでそんなことがわかるんだ?」 


「遺体……と言っていいかわからないけど、そこに残された痕跡よ」


「痕跡?」


セラフィーナは少しだけ間をおいた。

言葉にすることを迷っているようにも見える。

だが意を決したように言った。


「遺体は首から上の"頭"しか残ってなかったみたい。なぜか"体"だけが持ち去られてる」


「なんだよそれ……異常じゃないか」


「ええ。だから騎士団が必死になって犯人を探してるのよ」


息を呑み、顔を顰めるスレイドをよそにミライは落ち着いた様子で口を開く。


「でもさ、なんでそれが盗賊団の犯行に結びつくわけ?」


「"盗賊団の犯行"というのは、ちょっと語弊があるかもしれないわね」


「どういう意味?」


「今回の冒険者殺害事件、騎士団は盗賊団の全体の犯行というよりも、"盗賊団のボス"の犯行と考えているのよ。以前に騎士団が捕まえた盗賊団の団員が、ボスがおこなう異常殺人の話をしてたみたい」


「それが頭だけ置いて、体だけ持ち去るってやつ?」


「そう。あとは周囲の証言。決まって同じことを言うみたい」


「どういうこと?」


「ボスの情報を集めても皆が口々に"わからない"、"見ていない"、"覚えていない"、"男か女かもわからない"と言って全く特定できない。盗賊団の団員ですらもそう。だから騎士団が何年掛けても"ボス"を捕まえられないのよ」


「それじゃ、あたし達にはどうしようもないじゃない」


「そう、つまり私たちは大人しくゴールド・バラッシに行くしかない。彼女のことは忘れてね」


非情とも思えるセラフィーナの言葉。

だがミライが言った通り、自分たちにできることは何もない。

なにせ騎士団が何年も掛けても捕まえられない人物を、たった3人で見つけ出すなどできるはずがない。


しかし、そうだったとしても、これで終わらせていいわけがない。

そんな怒りに満ちた表情のスレイドを見たセラフィーナが口を開く。


「納得いかない様子ね」


「ああ。俺はその盗賊団のボスを許せない。ジーナとは少しの間だが仲間だったんだ。仲間を殺されて黙っているわけにはいかない」


セラフィーナはミライへと視線を送る。

彼女への意思確認の視線だ。


「そこまで言うなら、あたしも協力してあげようじゃないの。ジーナさんの弔い合戦」


「すまない。ゴールド・バラッシュに行くのは先になりそうだ」


「あたしはいいわよ。セラっちは?」


「私も構わない。もとはと言えば私から頼んでパーティに入れてもらってるから。方針はリーダーに任せるわ。だけど犯人を見つけると言ってもアテはあるのかしら?」


「あ……」


「やっぱり。何もないのね」


呆れ顔のセラフィーナはため息をつく。

そして少し考える素振りを見せてから言った。


「ならリカルドのところへ行きましょう。何か知ってるかも」


「リカルド……ああ、そうか!」


宝石加工店の店主リカルドは元盗賊団のメンバーだ。

もしかすれば"盗賊団のボス"についての情報を得れるかもしれない。


こうしてスレイドたちはジーナを殺害したと思われる人物を探すことになった。

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