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最弱ルーキーのナイト・スレイド  作者: フランジュ
冒険者ギルド編・第二章
31/32

第一秘剣・刃隠


カルガラ・クロウは不思議な感覚に襲われていた。

過去を思い返すに、同じような出来事があった気がするが全く思い出せない。

思考を重ねるよりも視線の先にいる青年から目が離せなかった。


左足を下げて腰にショートソードを構え、右手を軽くグリップに添えている。

赤く染まった瞳は美しさ、妖艶さを感じさせた。

同時に、その赤い眼光がカルガラ・クロウを不思議な感覚へ導いていた。


徐々に心臓の鼓動が早くなる。

こちから先手を取らなければならない……


焦りからかカルガラ・クロウはすぐに動いた。


「行け、"雷撃鳥らいげきちょう"!!」


そう叫んで、自身の体の周りを飛び回っていた烏の群れを放った。

行先は構えを取っているスレイドだ。


烏が一羽当たると爆散して雷撃を走らせ、たった一撃で大きな爆煙を上げた。

さらに一羽、一羽と確実に狙いを定めて突撃していく。

数十もの烏の群れが連続飛来して爆雷を生じさせていた。


もはや爆発によって発生した黒煙によってスレイドの姿は見えない。


「首を切り落とす前に跡形もなくなりそうネ」


ニヤリと笑うカルガラ・クロウ。

しかし、なぜだかわからないが胸騒ぎがおさまらない。

どうすれば安心できるのだろうか?

自分が持てる魔力を全て注ぎ込んででも目の前の男を葬らなければならないのか?

そうすれば、この不快な心臓の高鳴りは抑えられるのか?


様々な思考の中、カルガラ・クロウはさらに魔力を使う。

空中を飛び回っていた無数の烏がスレイドを包み込んでいる黒煙目掛けて突撃し、幾たびも雷撃を走らせた。


どれだけの時間が経ったのか。

ようやく全ての烏が爆散し尽くした。


「これでようやく……」


言いかけた時、いまだに立ちのぼる黒煙の中から殺気を感じた。

今まで経験のないほどの凄まじい殺気。


カルガラ・クロウの体は自然に動いていた。

すぐさま、その場にしゃがみ込んだのだ。


瞬間、黒煙の中でほんの一瞬だけキラリと線のような光を放つ。

まるで太陽が鏡に反射したような光。


するとカルガラ・クロウの背後からズドン!!という轟音が聞こえる。

振り向くと石門に巨大な横一線の"斬撃の跡"が刻み込まれているのが見えた。


数秒ほど遅れて黒煙が勢いよく周囲に吹き飛ぶ。

姿を現したのは無傷のスレイド。

ショートソードは抜剣され、横に大きく振り抜かれていた。


「"第一秘剣だいいちひけん刃隠はがくれ"」


カルガラ・クロウは絶句する。

しゃがんでいなければ確実に首が飛んでいた。


再びスレイドへと視線を戻す。

左手に持った鞘にはヒビが入り、時間差で粉々に砕け散った。

だがスレイドは構わずショートソードを両手持ちにして斜め下へ持っていき、前方へと重心を倒す。


前足に力を入れて踏み込む。

その踏み込みによって地面が割れると同時にビュン!と音を立ててスレイドの姿が消えた。

ただ"赤くいびつな線"だけが閃光となって走り、一瞬のうちにカルガラ・クロウの眼前へと迫る。


繰り出されたのは上段斬り。

あまりにも速い攻撃だったが、間一髪のところでカルガラ・クロウはクロスガードでショートソードを防いだ。

甲高い金属音が洞窟内に響き渡った。

腕には鉄のアームガードが巻かれていたため剣の攻撃は容易に防げる。

しかし、その攻撃の"重さ"は予想を遥かに超えるものだった。


立っていた地面がきしみ、四方八方に亀裂を生じさせたのだ。


「ぐぅ……なんという力だ……」


少しずつクロスガードが下がる。

するとショートソードの刃がカルガラ・クロウのひたいに触れて血を滲ませていった。

出血は静かに眼球へと流れ落ちて染みていく。

これほどのパワーであれば簡単に頭蓋骨を割り、刃は脳に達するだろう。


「ワタシが負けるのか……十二騎士ナイトのワタシが、こんなルーキー相手に……」


たまらず片膝を着く。

ここまでか……と思われた直後のことだ。

ショートソードの刃がスレイドの攻撃に耐えきれず、真っ二つに折れてしまった。


下方向へと振り抜かれる折れたショートソードを見てスレイドは驚いた表情する。


その一瞬の隙をカルガラ・クロウは見逃さなかった。

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