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最弱ルーキーのナイト・スレイド  作者: フランジュ
冒険者ギルド編・第二章
26/33

落下



ガル・アーナム


セラフィーナの屋敷



部屋の中央に置かれた円卓に着くスレイドとミライ。

他のメンバーは屋敷の入り口へと向かう。

スレイドは小声で彼女に声をかけた。


「お前、大丈夫か?」


「大丈夫よ。これでも、お父さんから、『お前とは一緒にサスペンスドラマは見たくない』って言わしめたんだから」


「どういう意味だよそれ……」


自信満々に語るミライだが、話の内容からしていい意味ではないのは確かだ。


「でも、ちょっと苦戦するかもねぇ」


「どういうことだ?」


「嘘つきが"二人"いる」


「なんだと?」


スレイドは改めて屋敷の入り口へと向かった4人へ視線を向けた。


「誰なんだ?」


「一人目はトンガリ帽子の女の子……ブレア・ブレガーだっけ」


「あの子が?嘘を言ってるようには見えなかったけどな」


「ところがどっこい、言ってることのほとんどが嘘だったわよ。でも"学院にいた"ってのは本当」


「信じられない……あんな少女がなぜ嘘をつく

?」


「理由はわからいけど、"招かざる客"である可能性は十分ある」


「もう一人は誰なんだ?」


スレイドが言うと同時にミライはゴソゴソと上着のポケットに手を入れて"薄い板"を取り出した。


「あ、ごめん、それは後でね」


「おいおい、後って……それじゃ遅いだろ」


「別にいいじゃない。どうせバトルプレイヤーは魔法鉱石ってやつを採取して帰ってくるだけだし。知ったところで何も変わんないでしょ」


確かにバトルプレイヤーはダンジョンに入って魔法鉱石を持って帰ってくるだけだ。

ダンジョン内で"招かざる客"が魔法鉱石を採取する邪魔をしてくる……というのは考えづらい。

強い魔物がいると言われているのに、わざわざ自分から依頼を受けてくれた冒険者たちの足を引っ張ってパーティ全体を危険に晒す真似はしないだろう。


スレイドはため息混じりに席を立ち、他のメンバーを追った。


一方、ミライは椅子に座って足を組み、"薄い板"を耳に当てて誰かと会話しているようだ。


「お姉ちゃん、あたし今は家にいないよ。友達の家にお泊まりしてるからさ。え?買っておいたプリン?あたし知らないよ!どうせまた見つけられいだけでしょ。ちゃんと冷蔵庫の奥まで探してから電話してよね」


どうやら姉と話しているようだったが、会話の内容は意味不明だった。

スレイドは彼女に構うことなくセラフィーナの屋敷を出た。



______________________




ドーラム洞窟



岩で囲まれた薄暗い細道に取り残されたスレイドとブレア。

ダンジョン内での崩落という予期せぬ出来事によって、このまま依頼を続行するべきか否かが問題であった。


魔物の撃破後、2人は決断を迫られていた。

最初に口を開いたのは青髪ツインテールの少女、ブレア・ブレガーだ。


「一旦、町にへ戻りましょう。このダンジョンは私たち二人で進むのは危険だと思います。冒険者ギルドに捜索を頼んだほうがいい」


ブレアが首から下げたネックレスには"木材"が括り付けられている。

つまりスレイドと同じルーキーということだ。

先ほどの彼女の魔法を見るに、かなりの強者に思えるが冒険者としての経験は浅いのだろう。


しかしスレイドはブレアの提案に唇を噛む。


「どうしたのですか?」


「いや、俺たちが戻っている間に他のメンバーがどうなるか……」


「まさか、先に進むと?」


「俺はさ、騎士になりたいんだ。王国騎士ならここで引き返したりはしない」


「確かに責務を果たすという意味でなら騎士は先に進むと思います。しかし、どうやって下へ降りるのです?」


「それは……」


「考え無しに行動するというのは単なる無謀でしかない。まぁ、もしかしたら王国騎士なら飛び降りてでも行くかもしれないですが」


ブレアの言うことはもっともだ。

なんの考えもせずに行動することほど危険なものはない。

まして、今はブレアというパーティメンバーもいる。

自分の行動によって彼女も危険に晒すことになるのだ。


俯くスレイドを見たブレアはため息混じりに言った。


「どうしても行きたいというなら、少し確認したいことがあります」


「……確認?」


「ええ」


一言だけ答えてからブレアは目の前に手のひらを出す。

そして小声で何かを呟くと、腕に小さな蒼い魔法陣が描かれる。


「今から出す土球を掴んで下さい」


「あ、ああ」


ブレアの手のひらに拳ほどの大きさの土球が作りれ、ゆっくりとしたスピードで射出された。

その土球をスレイドは素早くキャッチする。


すると土球はすぐさまスレイドの手の中で"バン!"という音を立てて破裂した。


「なんだこれ!?」


「やっぱり……なぜかはわからないですが、あなたには魔法が効かないようです」


「魔法が……効かない?」


「ええ。もしかして"アンチマジック"のスキルですかね?とても珍しいユニークスキル。確か十二騎士の中に持ってる人間がいると噂で聞いたことがありますが」


「だけど、それがどうかしたのか?」


「これでは私の地属性魔法で階段を作っても壊れてしまう。どうやって下まで降りるか……」


ブレアは真剣に悩んでいるようだったが、さほど時間も掛からず結論に辿り着いたようだ。


「少し荒っぽいですが、これでいくしかない」


「どんな方法なんだ?」


「壊れてしまうなら、壊して降りましょう」


「なんだと?」


意味がわからずスレイドは眉を顰めた。

ブレアは構わず、細道を進み崩落した場所まで行く。

穴となった崩落場所のギリギリで止まり、杖を構える。

再び蒼い小さな魔法陣が腕の周りに展開すると、壁に沿って土の足場が作られた。

それはちょうど2人が立てるほどの大きさだ。


「ここに立って下さい」


「おいおい、まさか飛び降りる気じゃないだろうな?」


「まさか。ちゃんと考えてあります」


息を呑むスレイドはゆっくりと歩みを進める。

そんな姿をブレアは呆れた表情で見ていた。


「早くして下さい」


「わ、わかってるよ!」


もはやブレア・ブレガーという少女を信じるしかない。

何かあればその時はその時と覚悟を固め、深呼吸してからスレイドは勢いよく土の足場に飛び乗った。


すると案の定、土の足場は破裂するようにして弾け飛び、2人はそのまま落下した。


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