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最弱ルーキーのナイト・スレイド  作者: フランジュ
冒険者ギルド編・第二章
24/33

ドーラム洞窟

カードプレイヤーに選ばれたミライを残し、バトルプレイヤーとなったスレイドたちが屋敷を出たのは夕刻前だった。


雨も止み、生い茂る樹木の間から日がさす中、5人は町を出るために歩き始めた。


一旦、目指すは北西にある森林地帯。

ここを抜ければ目的地であるドーラム洞窟がるという。

森の中で一泊の野宿をして、予定では明日の昼頃に洞窟に到着するという流れだ。



先頭を歩くのは金髪の騎士風の男、コルクス・ビッグバーン。

不敵な笑みを浮かべつつ颯爽と風を切るようにして堂々と歩くが、背負った大剣の白い鞘に書かれた『バカ、アホ、マヌケ、ノロマ、さっさとくたばれ』等の悪口は見るに耐えない。


後方、並んで歩くのはスキンヘッドで黒いマントを羽織った盗賊風の男、ヒューイ・テイラー。

隣にはグリーンの長い髪、露出の高い民族衣装を着た褐色肌の女性、ヴィクトリア・ライネ。


さらに後方には大きな三角帽子を被り、学生制服の上から黒いローブを羽織った青髪ツインテールの少女、ブレア・ブレガー。

手には彼女の背丈ほどある大きな木の杖が握れている。

そして、その隣を歩くのはスレイドだった。



スレイドは隣から視線を感じた。

ブレアはスレイドの顔へチラチラと視線を向けている。


耐えきれずスレイドは言った。


「俺の顔に何かついてるのか?」


「いえ、そのイヤリングが気になりまして」


「父の形見なんだ。もしかして知ってるのか?」


「いえ……私の記憶違いかもしれません。"あんなもの"を子供へ送るなんてありえない」


「あんなもの?」


妙な空気だった。

聞き返したスレイドだが、ブレアは答えずに口籠る。

そこに前を歩いていたヴィクトリアが振り向き、突然スレイドへと近づいた。

ブレアを押し除けてスレイドの腕に自分の腕を絡ませてくる。

彼女の背丈はスレイドより小さく、自然と上目遣いになっていた。


「ねぇ、あの彼女とはどんな関係なの?」


「え……彼女って?」


「さっきの"ミライ"って子よ」


「あー、なんだろ?」


考えたこともなかった。

ミライは冒険者ではないのでパーティというのは違う。

かといって、ただの同行者でしかない……というのも違う気がする。

スレイドにとってミライという女性の立ち位置はよくわからない。


だが、それ以上にヴィクトリアの質問の意図がわからなかった。


「なんでそんなことを聞くんだ?」


「この依頼が終わったら、私とパーティを組みましょう」


「え……どうして?」


「あなたが可愛いからよ」


この発言にスレイドの心臓が跳ねた。

密着しているヴィクトリアにバレまいと平常心を保とうとするが、彼女は妖艶な笑みを浮かべている。

恐らくスレイドの感情は手に取るようにわかるのだろう。


「あんな弱そうな小娘よりも、私と組んだ方がいいと思うわ」


「い、いや、俺は……」


「まぁ、考えておいて」


そう言ってヴィクトリアはヒューイの隣へと戻っていく。

ヒューイは呆れ顔で"あまり本気にさせない方がいい"と言っていたが、どうやらヴィクトリア自身は満更でもないようだ。


顔を赤らめたスレイドは頭を掻く。

横から視線を感じたので、恐る恐る見てみるとブレアがため息混じりで凝視していた。


さらにもう一つ、"全身を切り裂くような気配"を感じた気がしたが、それはすぐに消えた。



______________________




北西の森林地帯は広大であった。

洞窟へと道はなぜか開けており、ほぼ一本道と言っていい。


森の中には魔物も生息すると言われていたが、不思議と何とも出会うことなく5人はドーラム洞窟へと辿り着くことになる。


「なぜ、魔物が出てこないの?」


「わからん。魔物は自分より強い存在がいた場合は姿を現さなくなるとは聞いたことがあるが、それは極端な例だ」


ヴィクトリアとヒューイの会話だった。

どうやら魔物にも"強者の気配"というものがわかるらしい。

だが、魔物が感覚的に怖いと感じるほどの強さとなれば相当なものだ。

現在のパーティの中に、そんな人物がいるのだろうか?


疑問は残るが、目的はドーラム洞窟内にある鉱石の採取だ。


彼らが見つめていたのは森林を切り裂くようにできた巨大な岩の切れ目。

ドーラム洞窟へと5人は足を踏み入れていく。


「私が先行しよう」


言ったのはコルクス・ビッグバーンだ。

彼はスタスタと薄暗い洞窟へと入っていき、細い道を灯りも無しに進む。


後に続くのはヒューイとヴィクトリアだった。


「おいおい、この暗い中で灯りも無しに進むのか?」


「私は問題ない」


「オレたちには大アリなんだよ。こんな暗くちゃ戦闘になった時、危険だろ!」


「それなら致し方ない」


そう言ってコルクスは正面に手をかざし、何かを呟く。

すると手のひらから小さな炎の玉が出現して浮遊し始めた。


「これでよかろう?」


「ああ、すまんな」


ぶっきらぼうに答えるヒューイはヴィクトリアと顔を見合わせた。

どちらも考えていることは同じだ。

"彼が背負っている悪口は伊達ではない"ということ。


こうしてコルクス、ヒューイ、ヴィクトリアの順番で先行し、追うようにしてスレイドとブレアという陣形が自然とできあがった。


「やはり……魔物の気配を感じないが」


「そうね、まさか最深部にも魔物がいないとか?」


「魔物は半永久体だ。誰かに倒されない限り、自然死はない……はずだがな」


ここ最近、誰かにこの場所が攻略されたという考えもできた。

そうなれば、この依頼もセラフィーナの"武力を探す"という意図とは違って簡単なものとなるに違いない。


洞窟に入って数刻、ようやくコルクスの魔法の玉はドーム状と化した大きな空間へと出た。

コルクス、ヒューイ、ヴィクトリアの順番で細道を抜ける。


あたりを見渡しつつ、ある程度の距離を進む。

その瞬間、ドーム状の空間の床が大き音を立てて崩落した。


「なんだと!?」


「これはマズイわ!!」


巻き込まれたのは先に細道を抜けたコルクス、ヒューイ、ヴィクトリアだ。

彼らがいたのは空間の中央付近だったため、急いで細道へ戻ろうにも間に合わない。


コルクスの魔法の玉に照らされながら、3人は洞窟の地下へと落ちていった。


残されたのはスレイドとブレアだけ。


「なんてことだ……この高さから落ちて無事なのか?」


「申し訳ないですが、彼らを心配している場合ではないようです」


穴を覗き込むようにして見ていたスレイドだったが、すぐに後方に視線を移す。

ブレアは自分たちが歩いてきた細道の先へと警戒心を強め、杖を構えていた。

暗がりの中、小さくカリカリと何かが地面を這うような音が聞こえてくる。


それは徐々に2人へと近づいてきていた。

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