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最弱ルーキーのナイト・スレイド  作者: フランジュ
冒険者ギルド編・第二章
23/32

自己紹介(2)

一同の視線がスレイドとミライへと向けられている。

注目されることになれていないスレイドは緊張感が増した。


そのままミライの方を見るとブラウンのサイドテールを長い爪で撫でており、あくびをしながら足を組んで椅子に座っていて全く緊張感のかけらもない。


順番的には自分からいくべきか……

そう意を決したように口を引く。


「俺はスレイド。ここから北にある小さな村から来た。前の町でスキル・スフィアを壊してしまって、それから借金まみれになったんだ……だから借金返済のために、この依頼を受けた。得意と言っていいかはわからないが剣術を使う」


皆が苦笑したように見えた。

他の者の自己紹介とは別の意味でインパクトがある。

しかし、ちょうどスレイドの左隣に座る青髪のツインテールの少女・ブレアだけが眉を顰めた。


「スキル・スフィアを壊した……とは、どうやって壊したのですか?」


「触ったら割れたんだよ」


そこにミライが付け足すように"木っ端微塵に粉砕しちゃったのよね"と言った。

笑いを誘うための発言ではあったが、ブレアの表情は険しくなった。


「まさか、ここに張られた魔法障壁も……?」


「ああ、触れたら砕けてしまった」


スレイドは苦笑いしながら頭を掻く。

スキンヘッドの男、ヒューイが笑みをこぼしながら言った。


「なんだよそれ。スキルか何かか?」


「魔法を破壊するスキルなんて聞いたことないけどね」


反応したのは褐色肌の女性、ヴィクトリア。

彼女はさらに続けた。


「まぁ、どちらにせよ怪しさはあるわよね。彼かしら招かざる客って。カワイイ坊やだけど」


「オレも招かざる客はコイツじゃないかと思ったよ。ドネージュ出身の魔法使い見習いの嬢ちゃんと違って、ルーキーで剣士なのにも関わらず魔法障壁を突破するなんてありえん」


「お、俺は違う!」


スレイドの言葉に対して聞く耳を持たないヒューイとヴィクトリアだったが、1人だけ口を開く者がいた。

金髪の騎士風の男、コルクス・ビッグバーンだ。


「君らはそうやって自分がカードプレイヤーに選ばれる確率を上げてるようにも思えるがね。招かざる客の目的はカードプレイヤーになって一気にゲームを終わらせることだと思われる。私には逆に君らのどちらかが招かざる客に見えるよ」


一気に空気が引き締まった気がした。

彼の見た目や言動からは想像しえぬ思慮深さにヒューイとヴィクトリアは息を呑む。


コルクスは続けて、


「それより、まだ自己紹介してない者もいるだろ」


と言った。

するとミライが、"ああ、あたしね"と呟いて自己紹介を始める。


「あたしはミライ。冒険者じゃないから気にしないで。一応、言っとくけどスレイドとは彼の村からずっと一緒だったから、彼が招かざる客ってのは無いわね」


「冒険者じゃない?じゃあ、なんでここにいるんだ?」


「だって面白そうじゃん」


ミライがそう言うとヒューイが呆気に取られた表情をしていた。

ただ1人、コルクスという男だけは腕を組みながらニヤリと笑っていた。


これで全ての自己紹介が終了した。

するとすぐにヒューイが声を上げる。


「じゃあ、カードプレイヤーに誰を選ぶ?」


全員が顔を見合わせる。

選ぶのであれば間違いなく"馬鹿っぽそうな人間"だ。

なにせカードプレイヤーになった者が招かざる客を当ててしまったらバトルプレイヤーの報酬は無い。

かといって、ここで選択を間違えると全員が失格で終わってしまう。

いっその事、総取り狙いで自分がカードプレイヤーに立候補する手もあるが、それは逆に目立ち過ぎて選ばれないだろう。


様々な思考が巡る中、1人だけ手を挙げた。

コルクス・ビッグバーンだ。


「私は彼女がいいと思う。ミライさんだったか」


「あたし?」


「ああ、そうだ」


ミライが首を傾げていると反論する者がいた。

それはヒューイだった。


「ちょっと待て、こいつらパーティでここまで来てるんだぞ。バトルプレイヤーとカードプレイヤーで別れたら、どっちかが必ず報酬を持ち帰れることになるだろ」


この言葉にブレアがため息をつく。

聞こえたのかヒューイの眼光が少女を睨んだ。


「なんだよ。なんか文句でもあるのか?」


「彼らはパーティでここまで来ているということは招かざる客である可能性はかなり低い。確かにあなたが言われるようにバトルプレイヤーとカードプレイヤーどちらの権利も得られるので確実に報酬は持って帰れるかもしれませんが、最初に招かざる客を引く確率を極力下げるためには一番いい方法なんですよ」


ブレアの発言は真っ当な意見であった。

それに"前の町でスキル・スフィアを破壊してしまった"などというわかりやすい嘘もつくまい。

彼らは本当に駆け出し冒険者として借金返済のために依頼を受けたと考えるのが自然だった。


全てを聞いていたヴィクトリアが口を開く。


「じゃあ、彼女に残ってもらいましょうか。冒険者でないならダンジョンでは足手纏いになるでしょうし」


さらに付け加えるようにコルクスが言う。


「まぁ、彼女の声を聞くに頭はあまり良くなさそうだから、カードプレイヤーでも大丈夫だろう」


「は?」


コルクスの言葉に場の空気が一気に冷えた。

感覚だけではない。

本当に凍りつくような寒気が部屋を覆っているようだ。


ミライの鋭い眼光は薄らと赤黒く光を放っているようにも見え、それはコルクスを捉えていた。


……だが、なぜかコルクスは平然と笑みを浮かべている。


「気に障ったなら申し訳ない。いつも一言多いって言われるんだよ」


そう"ハハハ"と笑ってやり過ごすコルクスに対してミライは眉を顰めていた。



ミライが落ち着きを取り戻すのを確認した執事のシャルは移動を始めた。

向かったのはミライの席の隣だった。


「では皆様方、ミライ様がカードプレイヤーでよろしいでしょうか?」


全員が頷く。

すると執事のシャルは円卓へと手を伸ばし、ミライの前にあるカードを巡った。

そこには何も描かれておらず、真っ白であった。


「これでミライ様がカードプレイヤーで決定です。それ以外の方は早速、ドーラム洞窟への移動を開始して下さい。御武運を」


ヒューイ、ヴィクトリア、コルクス、ブレアは立ち上がると屋敷の入り口へと向かう。


スレイドは立ち上がらず小声で隣に座っているミライに声を掛けた。


「お前、大丈夫か?」


「大丈夫よ。これでも、お父さんに『お前と一緒にサスペンスドラマは見たくない』って言わしめたんだから」


「どういう意味だよそれ……」


自信満々に語るミライだが、話の内容からしていい意味ではないのは確かだ。


「でも、ちょっと苦戦するかもねぇ」


「どういうことだ?」


「嘘つきが"二人"いる」


「なんだと?」


スレイドは改めて4人を見た。

スキンヘッドの盗賊風の男、ヒューイ。

グリーンの長い髪の女性、ヴィクトリア。

金色の髪で騎士風の大剣使い、コルクス。

ツインテールの魔法使い見習い、ブレア。


依頼内容では招かざる客は1人のはず。

しかし目的は不明であるが、さらにもう1人、この中に招かざる客がいる。

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