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最弱ルーキーのナイト・スレイド  作者: フランジュ
冒険者ギルド編・第一章
17/32

真相

小屋の中、奥の壁際で片膝を床につくスレイド、その隣で倒れて項垂れるグレースは絶体絶命だった。


中央、入り口を背に立つドレッドはロングソードを目元の高さで構える。

その切先はスレイドを捉えていた。


体勢を低くして一歩を踏み出す。

そこから突きの動作に入る瞬間のことだ。


小屋の外から、"ゴツい男"の声が聞こえた。


『ドレッド・マークス!!貴様は完全に包囲されている!!』


ドレッドの動きが止まった。

ありえない人物の声だ。

念には念を入れ、ここに来る前に部下にも確認した。


「なぜナッシュ団長が!?」


あの男は確実にフェアリーズで飲んでいる。

それが何故、こんなところにいるのか。


不意な出来事にドレッドは構えを解く。


この一瞬の隙をスレイドは見逃さなかった。

床を蹴って一気に間合いを詰める。

ドレッドは反応が遅れ、スレイドのショルダータックルを受けて1メートル半ほど後退しつつよろけた。


「うおおおおお!!」


いつもの構えを取り、さらに前に出て間合いをゼロ距離まで詰める。

そして高速の抜剣で柄頭ポンメル鳩尾みぞおちへと叩き込み、すぐさま納剣した。


「がはっ……」


さらにスレイドは逆手で鞘を振り上げて、鞘先をドレッドのあごへ打ち込む。

流れるように右手でグリップを掴み、右腰に一旦、溜めを作ると納剣したまま一気に突きを放つ。

鞘先はドレッドの胸を直撃して鈍い音を響かせた。

数メートルもの距離を凄まじいスピードで吹き飛ばされ、小屋から外へと勢いよく出る。

草が生い茂る地面を何度も転がって、ようやく止まった。



大の字で星を見る。

朦朧とする中、数秒の思考を経てドレッドは負けたことを認識した。

顎を打たれた衝撃なのか体は全く動かない。


誰かが草を踏む音が聞こえてくる。

ドレッドは眼球だけ動かして周りを確認すると、頭上に手提げランプを持った人間がいることがわかった。

小屋からは逆方向、スレイドではない。

ランプの光が近づき眩しくて目を細める。


「誰だ……?」


「ドレッド・マークス、貴様は完全に包囲されている」


その声は"若い女性"だった。

間違いなく聞き覚えのある声だ。


「まさか、誰も……騎士団の連中は……誰も来てないのか?」


「そうよ。あたしだけ」


「ふふふ……情けない……私自身が"この策"に引っかかるとは」


「あーあ、スレイドにあげるつもりだったのに今ので使っちゃった。()()()()()()()()()


「いつから私を怪しいと?」


「え?いつからって、最初から」


「なんだと……どういうことだ?」


「あたしと会った後、グレースと話している時にあなたは嘘を言った。だから、ここ何日かドレッド・マークスという男だけを徹底的に調べ回った」


「嘘……?」


「グレースがテレサさんは今回の事件の犯人の関係者だと言った時、あなたは"仰る通りです"と答えた。それが嘘だった」


ドレッドはかろうじて意識を保つ中、ありえないと思った。

その言葉は確かに嘘だ。

だって放火していたのは"自分"であり、放火した後に酔っぱらいを現場に寝かせておいたのだから。

つまりテレサの夫、また他の捕まった3人の男は放火犯ではない。


「すべての事件で優秀なドレッド・マークスという人間が証拠を見つけて犯人を特定していた。捕まった四人のうち三人は火の熱さで酔いが覚めて放火現場から逃げてる。罪をなすりつけるなら自分で家まで行って捕まえてこないといけない。でも一人で全員を特定して捕まえるのはやりすぎたかもね」


「……」


「犯人でない人間を間違って捕まえていたとするなら言ったこと嘘にはならない。グレースは嘘を言ってなかったから。だけど犯人や関係者を断定するような言葉が嘘なら、なぜ嘘を言うのか?それは"真犯人"であるから」


「だがナッシュ団長は信じないだろう。あの男は鈍感だ」


「ナッシュが何故、フェアリーズに入り浸りになっていたのかわからないの?」


「……まさか、あの男がそこまで知的であるわけがない」


「能ある鷹は爪を隠すって言うでしょ。ナッシュは"証拠のでっち上げの証拠"をフェアリーズで探っていた。彼も最初っからあんたのこと疑ってたのよ。手間は掛かってたみたいだけど」


「そうか……私は知らずに知らずに、とんでもない人間を敵に回していたようだな。そう言えば名を聞いてなかった。あなたは一体、何者なんだ?」


「あたし?」


「他に誰がいるんだ」


「あたしは"北条ミライ"。ただの女子高生だよ」


まさか目的の完結がたった1人の若い女に阻止されるとは思いもよらなかった。

ドレッドは全てを聞き終わると、かろうじて保っていた意思が途切れた。

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