対(つい)
洗濯機のストレスを書いてみました
一日の勤務を終えて、カナは一週間分の洗濯物を洗う為、庭先にある洗濯機へと洗濯物を突っ込んだ。
カナはコスメ会社のOL業を勤めており、デスクワークが主な仕事である。
時々、新商品のコスメのテストをする場合があり、それの使い心地はどうか、肌のトラブルは無いか、というアンケートをとらされていた。
コスメを使用する度、カナは嗅覚に疲労を感じる。
(うーん……匂いがとれない……これでバス通勤なのが嫌になる)
コスメの匂いが染み付いた洗濯物を入れて、スイッチを押す。
(ふう~っ、明日は休み。
ゆっくり過ごそう。
さあ……シャワーっと!)
洗濯物が回っている間、カナはシャワーを浴びる為、裏口から浴室へと移動した。
パタン……。
裏口のドアが閉まる。
〈行ったか?
行ったな?
風呂、入ってるな?〉
カナがシャワーを浴び始めたのを確かめ、彼は動きの段階に移る。
〈う……ううっ……〉
洗濯機がカタカタと音をたてて、上下に震え出した。
〈ウエエエエエ……ッ!〉
ビチャビチャビチャ……ポトッ!
洗濯機の蓋がカバの口の様に開き、中から靴下が飛び出してきた。
いや、飛び出してきたのではなく、吐いたのだ。
彼、洗濯機の奴が。
〈クッサ!
靴下クッサ!
ウエエエエエ!〉
吐き出された靴下だが、洗濯機がおうどしたせいで、見るも無惨な姿へと変貌を遂げていた。
軍手になっていた。
綺麗な靴下が、泡のおうどまみれになってしまい、茶色がかった軍手と化している。
〈ゼエ……ゼエ……ゼエ……ゼエ……〉
洗濯機のあまりの気持ち悪さに、本来の形を崩してしまった靴下が、よく街の至る場所で見かける片方だけの哀れな軍手になっていたのだ。
〈御主人様には悪いけど、くせえわ!
靴下も御主人様も、くせえ!
やだよ、俺……他の家の子になりたい〉
彼、洗濯機は洗濯物を洗う日になる度、OL特有の匂いとコスメの匂いにまみれた靴下を吐き出しては、軍手に換えていた。
〈御主人様、ワリイ……また、靴下買いに行くはめになっちまったな〉
ホラーの筈が、ファンタジーになりましたね