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一夜のケモノ

作者: くんちゃん

第1章:招待状


ハルはスマホの画面を何度もスクロールした。Xのタイムラインに流れてきたハッシュタグ「#KemoShift」。そこには、キラキラした着ぐるみの写真と、「君もケモノになれる夜へ」という謎の言葉。ケモノ好きのハルにはたまらない誘惑だった。


「まさか、ただのイベントの宣伝だよね…?」でも、フォローもしてないアカウントからのDMが、妙に心をざわつかせる。「ハルさん、KemoShift Carnivalへようこそ。着ぐるみ、用意できてる? リンクをタップして選んでね。」


リンクを開くと、画面にずらりと並ぶケモノの着ぐるみ。狼、キツネ、フクロウ、ドラゴン…。ハルは自分で描いた「青いオオカミ」のイラストを思い出し、ドキドキしながら「オリジナルデザイン」を選択。適当に色や模様を入力して送信ボタンを押した。


翌朝、玄関に置かれた段ボール。開けると、そこにはハルがデザインした通りの青いオオカミの着ぐるみ。毛並みはふわふわで、目はまるで生きてるみたいに光ってる。「…これ、ほんとに着るの?」ハルは半信半疑だったけど、週末のイベントに持っていくことにした。


第2章:変身


2025年4月の夜、東京の外れにある古い倉庫街。KemoShift Carnivalの会場は、まるで秘密の遊園地みたいに光っていた。入口でチケット(招待状のQRコード)をスキャンすると、スタッフらしき人がニヤリと笑う。「着ぐるみ、着てから入ってね。ロッカールームはあっち。」


ハルはドキドキしながら着ぐるみを広げた。スーツは意外と軽くて、頭部を被ると視界がクリアに。尻尾を装着して鏡を見ると…そこには青いオオカミがいた。「うわ、めっちゃリアル!」試しに手を動かすと、爪がカチッと音を立て、尻尾が自然に揺れる。会場に入ると、キツネやライオン、ペンギンみたいなケモノたちがウロウロ。みんな楽しそうにハイタッチしたり、写真撮ったりしてる。


でも、なんか変だ。ハルの鼻が、急にいろんな匂いをキャッチし始めた。汗、香水、近くの屋台の焼きそば…そして、ケモノたちの「獣っぽい匂い」。「え、待って、これって…?」突然、体が熱くなり、視界がシャープに。ハルが吠えてみたら、喉から本物の遠吠えが響いた。「うそ、俺、ほんとにオオカミ!?」


会場にスピーカーの声が流れる。「ようこそ、KemoShiftへ! 今夜、君たちは本物のケモノだ。夜明けまでに楽しむがいい…ただし、『鍵のケモノ』を見つけなきゃ、人間には戻れないよ~」


第3章:鍵を探せ


ハルはパニック。まわりを見ると、他のケモノたちもざわざわしてる。「戻れないって、どういうこと!?」そこで、キツネの着ぐるみを着た女の子がハルに話しかけてきた。「ねえ、落ち着いて! 私、ミオ。一緒に鍵を探そうよ。」ミオの声は少し震えてたけど、キツネの耳がピクピク動いてて、なんか可愛い。ハルはとりあえず頷いた。


会場は迷路みたいに広く、ネオンが怪しく光ってる。ハルとミオは、オオカミの嗅覚とキツネの素早さを使って進む。途中で、ドラゴンのケモノ・タクミが合流。「俺、炎吐けるぜ! 鍵なんてすぐ見つけてやる!」タクミはノリノリで、試しに口から小さな火を吹いた。ハルとミオはドン引き。


謎解きのヒントは、会場に散らばる「ケモノの足跡」。ハルの鼻が、微かな「銀の匂い」を捉える。「これ、鍵のケモノの匂いかも!」足跡を追ってたどり着いたのは、会場中央の巨大な鏡。そこには、白いウサギのケモノ・ユキが立っていた。「やっと来たね。…でも、鍵を渡す気はないよ。」ユキの目は悲しそうで、でもどこか決意に満ちていた。


第4章:ケモノの心


ユキは去年のKemoShiftで変身したまま戻れなかった子だった。「人間の世界に戻っても、誰も私の居場所なんてなかった。ケモノの姿なら、自由に笑えたんだ。」ユキの言葉に、ハルは胸が締め付けられる。自分も、学校で目立たない存在だった。ケモノのイラストを描いてるときだけ、自由になれた気がした。


ミオが叫ぶ。「でも、逃げちゃダメだよ! 人間でも、きっと居場所は見つかる!」タクミも続ける。「ケモノの力、めっちゃ楽しいけどさ。俺、家族にまた会いたいぜ。」ハルはユキの手を握った。オオカミの爪が、ユキの白い毛に触れる。「ユキ、俺もケモノの自分、めっちゃ好きだよ。でも、人間の俺も、ちゃんと生きてみたい。」


ユキは涙をこぼしながら頷いた。鏡に手を置くと、光が溢れ、鍵の形をしたペンダントが現れる。「これが…鍵。みんな、ありがとう。」


ハル、ミオ、タクミ、ユキは鍵を手に、鏡の前に立つ。スピーカーの声が最後に囁く。「ケモノの夜、お楽しみいただけたかな? また来年、待ってるよ~」

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