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83.薬作りの練習



ルクスは机に、中和剤だと思われる粉が入った瓶を、三つ並べた。


「さて、下級に使う中和剤はどれでしょう」


粉の色は、緑、紫、茶色の三色だ。

先程ルクスが説明していた通り、茶色が下級、紫色が中級、緑色が上級だ。


今回は下級の物を作るので、一番階位の低い茶色の中和剤だな。


私が茶色の粉が入った瓶を指差すと、ルクスは正解だというように頷いた。


「これ」

「はい。正解です。それでは、これをこちらの匙で、こちらのカップに入れましょう」


匙もカップも、緑みのある青色をしている。


これも魔力が漏れ出しやすいかどうかで決めているのだろうか。


そう問いかけると、ルクスはその通りだというように頷いた。


「はい。一時的に入れておくだけの時や、魔力が漏れ出さない素材、少量ならば漏れても問題ない素材であれば、透明や階位の低い道具を使用しても良いですが、今回は漏れやすい素材ですので、こちらの道具を使用します。また素材に合わせて階位を変えないと、侵食が起きたり、場合によっては変質、崩壊してしまったりしますので、階位の高い道具であれば万全ということでもありません」

「ふーん」


侵食や変質、崩壊がどういったことなのかはよく分かっていないのだが、調合が失敗しそうだということは分かる。


私は秤で計量しながら、匙で中和剤をカップに移していった。

45グラムになったところで、中和剤の準備は完了だ。


ルクスに、中和剤が入っている瓶を返すと、彼は蓋をして棚に仕舞っていた。


「ルクス。匙は洗浄する?」

「はい。中級の洗浄と乾燥の魔術を使用します。まぁ洗浄だけして、後は自然に乾かすことも多いです。直ぐに続けて使わないといけない時には、乾燥を使用します。洗浄の魔術は匙についている薬剤などの汚れだけでなく、滲み出したごく少量の魔力や、付着している魔術も洗浄する効果があります。ですので、使用した道具を洗浄することは大事なことです」

「やってみていい?」

「はい。中級の魔術の中では、魔力消費が少なく、基礎的な魔術ですからね。無詠唱か、せめて略式詠唱でささっとできるようになっておきましょう」

「うん。我は世界に求める。汝を清めよ。ワシヒ」


私は匙を手に持ち、詠唱を唱えて、魔術を発動させた。

すると、どこからか、白みがかった透明な水が現れて、匙を包み込む。

私は匙を持っていた指を離して、水の塊を操作する。


これは汚れを取るなら、くるくると回した方がいいのかな?


そう思って私は、水の塊はそのままに、中の匙をくるくると回転させた。


五秒ほど回したところで、水の中から匙を取り出して、水を消失させる。

これは普通の水を消す時と同じエテーレだった。


匙を持って、よく見てみるが、違いが分からない。


「ルクス?」

「はい。出来ていますよ」


ルクスに匙を見せると、彼は大丈夫だと頷いてくれた。


「違いが分からない」

「ふふふ。これは難しい部類の技術なのですが、魔術残滓、魔力残滓、これらを見分けられるようになれば、できますよ」

「私もできるようになる?」

「はい。今すぐ、ではありませんが、今後お教えいたします」

「わかった」


今後教えてくれる、という言葉に、期待の目で頷く。ルクスもそんな私を見て、嬉しそうな表情だ。



私はルクスに匙を片付けてもらった。続けてルクスは、三つの瓶を私の前に並べた。


これらがシキィなのだろう。赤色、青色、黄色の乾燥させた草のようなものが、それぞれ瓶に入っている。



えっと、下級はレダ・シキィ、赤色の草だ。



私がその瓶を指差すと、ルクスは正解だと頷いて、緑みのある青色のピンセットを取り出した。


私はそれを受け取って、ピンセットで草を摘まみ、秤で22.5グラム分を量る。


草はこれまでの道具と同じ緑みのある青色のカップに入れた。これでシキィの計量は完了だ。


今使ったピンセットも、洗浄魔術で洗い、ルクスに返す。



さて次は、と紙に書かれた内容を確認する。


あとは216グラムの水。これは、魔力を含まない完全なる透明な水、が必要らしい。


「ルクス。完全なる透明な水は何?」

「これは先程の魔力を含まない砂や水のように、空の魔石を作る時と同じ要領で作ることができます。長期保存には向いていませんから、その場で作れるのであれば、その方が良いですね」

「今回はこの場で作る?」

「はい。こちらに水があります。使用する水は飲用の物を使います。協会では研究者用に、下働きの使用人が水を汲み上げ、厨房の者が煮沸した水を用意しています。これもそこから貰った水です。飲用に煮沸しただけですので、ここから更に透明な水にする必要があります」

「飲用の水は透明じゃないの?」

「はい。ごく少量の魔力が含まれています」


そう言って、ルクスから渡されたカップには、水が入っている。

きちんと透明に見えるのだが、それでも少量の魔力が入っているそうだ。


私はその水に魔力を注いで、魔力で満たす。

そして、その魔力を回収すると、透明な水の出来上がりだ。



完全なる透明な水であることを、ルクスと確認して、私はその水を216グラム分、計量する。


使った道具を洗浄して、並べられた材料を見て、レシピが書かれた紙を見る。


これで材料は全て揃ったな。

水、中和剤、シキィ、そして魔石。

うん、大丈夫だ。


「ルクス、これで大丈夫?」

「はい。それでは、これらの材料をこちらに入れて下さい」


ルクスはまた別の大き目のカップを持って来た。


「入れる順番はどれからでも問題ありませんが、水を最初にした方が良いと言われていますね」

「そうなの?」

「はい。中和剤の粉が舞わないように、ですね。それ以外は効能に変化はありません。どうせ、融合してしまいますからね」

「分かった」


私はカップに水を入れ、次に魔石、シキィ、中和剤を入れた。ルクスがこれまでと同じ色の混ぜ棒を持って来てくれた。


「これでかき混ぜながら、融合の魔術をかけてください。均等に均一になるまで混ぜます。融合の魔術は、一定量の魔力を注ぎ続けることが理想的です。しかし、急いでいる時には、最初の魔力量を多めにして、混ぜる速さを早くし、段々と速度と魔力量を落としていき、最後に普通の魔力量でゆっくりと混ぜる、という調整をすることで、手早く作成することもできます」

「魔力量はどのくらい?」

「下級は20、中級は60、上級は80程度から、それぞれ200、600、800程度になるまで注ぎます。混ぜる速さは1秒に2周程度で、10秒間くらい混ぜ続けることになります」

「分かった」


私は混ぜ棒を受け取って、カップに入れた。左手をカップに翳しながら、右手で混ぜ棒を持つ。


「我は世界に求める。汝らを一つに。フシノ」


私は言われた通りに、20程度の魔力から、たらーっと注ぎ続ける。その間に右手は1秒に2周くらいのペースで混ぜ続ける。


そして注いだ魔力が200程度になったところで、私は魔力を注ぐのを止めて、混ぜるのもやめた。


「できた?」

「…………はい。成功していますよ」


ルクスはカップを持ち上げて、じっくりと見つめてから、頷いてくれた。


うん、きちんと溶けて、混ざっているようだな。


「それでは、こちらの瓶に移して、蓋をして下さい。これは結界魔術がかけられた瓶です。結界魔術を付与した瓶で保管することで、魔力回復薬の劣化を最小限にします」

「へぇー」


私はルクスから渡された茶色みのある黒い瓶に、完成した魔力回復薬を移して、しっかりと蓋をした。


完成した回復薬は茶色だったので、黒い瓶に入れてしまうと分かり難いが、きちんと瓶の中で液体が揺れているのが見える。



初めて自分で作った魔力回復薬を、少しうきうきした気分で眺めていると、ルクスはふふふと笑みを零して、おめでとうございます、と言ってくれた。



うん、記念すべき一作目だ。



道具を洗浄して、片付けて、私たちは休憩を取ることにした。


隣の応接室に戻って、カルメが準備してくれたお茶とお菓子を頂く。


休憩をした後は、再び実験室に戻って、調合の続きをした。


中級と上級の魔力回復薬を、略式詠唱、無詠唱で作成して、ついでに急いでいる時のやり方でも作ってみた。


「できた」

「はい。お見事です。これで魔力回復薬の基礎は大丈夫ですね」

「うん」


魔力回復薬が作れるようになったところで、今日の午後の授業は終了になった。



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