77.魔術の楽しさ(閑話)
今回は閑話です。
魔術の授業は楽しい。
オデット様もそう思ってくれているのが、嬉しい。
それだけでなく、私自身もオデット様に魔術をお教えすることに、楽しさと面白さを感じている。
オデット様が白い炎を作り出した時。
私は興奮が抑えられなかった。この目で、白階位の炎を見ることができようとは。
それに、魔術を学び始めたばかりのオデット様が既にこのような高度な魔術を使えるのであれば、今後はどれほどご成長されるのだろうか。
興奮、期待、嬉しさや喜び。色々なものが心を埋め尽くして、溢れ出てくる。
「ルクス、これ、遊べる?」
「遊ぶ、ですか?」
オデット様が反射の障壁で遊ぶと言った時。
オデット様に魔術をお教え出来るのが私で良かったと、何かしらに感謝してしまった。
オデット様の発想は斬新で面白く、そしてそれを試すのも楽しい。
あぁ、それなら、今後も、オデット様に魔術を沢山、お教えしよう。
私もオデット様も、二人とも楽しめて、嬉しくなれる、勉強なのだから。
オデット様に魔術をお教えするのは、とても楽しい。
それに自分では気づかなかった可能性を、簡単に提示して来るオデット様は、やはり魔術の才がある。
だから、オデット様に魔術をお教えするのは、自分でありたいし、自分はオデット様に魔術の全てをお教えしたいと思っているのだ。
だからこそ、執務が滞って、或いは終わらずに、オデット様の授業を出来なくなってしまうのが、とても悔しい。
悔しいという感情は、オデット様に出会って初めて抱いたものだ。
何故なら、これまでは自分の無力さを嘆くことはなかったから。
大抵のことは難なくこなすことができていたし、階位が高いことを嘆くことも、高階位であってもできないことはあるのだという事実に悔しく思うこともなかった。
そう、全てはオデット様と出会ってからだ。
世界が色付いたように感じる。世界はこんなにも、彩り豊かだったのかと気付かされる。
これまでは魔術をここまで楽しめていなかったと思う。
ジュネたちは私が魔術に傾倒していたと思っているのだろうが、私にはそれしかなかったのだ。
例えば、高階位の者が政治に関心を持ち始めたら。
例えば、魔力量が多い者が、剣術にまで興味を持ち始めたら。
そんなもしもの可能性、周囲の危惧、それらを避けるように私は魔術を選んだのだ。
それも実戦系ではなく、研究系の魔術師を。
高階位であるから、魔術が上手。
そんな隠れ蓑の裏で、息を潜めるように、研究に没頭した。だって、他にやることがないのだから。
協会長の地位に就いてからも、いやそれが内定してからも、研究を続けたのは、隠れ蓑を守るためでもある。
政治的な野望、或いは権力欲のようなものを抱いていないのだと、そう思わせるために、研究は続けることにした。
だけれど、今。オデット様と出会って、その逃げるように没頭していた魔術の研究が、役立っている。
私の隠れ場所であった魔術は、オデット様の遊び場のようになっている。
大切な人と安心してできる魔術は、これほどに面白く、楽しく、そして輝いて見えるのか。
好きなことを好きな相手と取り組める。
あぁ、これは幸せな日々だ。
ブクマ、ありがとうございます。
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