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44.日記(閑話)【登場人物とあらすじ】

今回は閑話です。


1223年11月30日 天気:晴れ



今日から、ここに毎日の出来事を書いていくよ。授業の覚書は別の紙にまとめてあるから。



まずは私について。

私はオデット・ネヴァフ。

年齢も、誕生日も分からない。

多分、10歳くらい。性別は女。

色は白い髪に白銀の瞳。

でも、今はディグセを使えるから、青色に変装しているよ。


そして、一番の問題、いや重要なこと。

私の魔術階位は完全なる白で、この国で最高位、世界でも五位以内には入るくらい、階位が高いらしい。魔力量と魔力許容量も同じ。



他に私のことと言えば、私の真名とか、真名の意味があるけれど、それは書いてはいけないらしいので、ここには書かないよ。

でも、色々と言いたいことはある内容だった。だって、いや、なんでもない。



私は召喚魔術によって、無理矢理、この国に呼び出された。

その所為で、記憶が完全じゃない。だから、周りの皆に、常識を教えてもらってる。



それと、魔術。私は魔力量が多いから、それを制御できないと、普通に生活するのも難しい。

だから、普通の生活を目指して、魔術の勉強もしてる。



取り敢えず、初めに立てた目標の一つの、ディグセ、変装の魔術具を作るっていうのは達成したよ。

でも、擬態の魔術も使えるようになりたいし、ルクスから魔術を学ぶのは楽しいから、勉強は続けたいな。




次は私の周りにいる人たちについて。

私をここ、魔術師協会本部まで連れて来てくれたのは、召喚魔術が行われた場所を管理していた騎士と魔術師の二人だった。

あの二人とは、いつかまた、会えるのかな?



ここに連れて来てもらってからは、ルクスと出会った。

ルクスは、魔術師協会で一番偉い、協会長という立場の青年。

色は白黄色の髪と、金色の瞳。

私が来るまでは、この国で最高位の魔術階位の人だったらしい。



ルクスは私の魔術の先生で、私が大切にしたいと思っている人だ。

私を保護してくれて、魔術を教えてくれて、色んなことをしてくれた。

だから、その恩返しがしたい。



ルクスは魔術階位が高い所為で、あまり良くない境遇だったらしい。

周囲に避けられ、疎まれ、怯えられ。

それでもルクスは優しかった。



もしかしたら、同じように高階位な私に対する同情のような優しさなのかもしれないけれど、それでも嬉しかったし、私はそんなルクスにも幸せに過ごしていて欲しいと思う。

だから、自分にできることを増やすためにも、魔術とか色んなことを勉強している。



他には、協会長の補佐官らしい、ジュネ。

お仕事では補佐をしているけれど、普段はルクスの研究時間の管理をしているみたい。

ルクスはよく研究に没頭して、時間も寝食も忘れるほど熱中してしまうらしい。

それを中断させて、食事をさせたり、寝台に入るように言ったり。

うん、何だか、ルクスが小さな子どもみたいだな。で、ジュネが親みたいな。



それから、カルメ。

私のお世話をしてくれている女性で、常識とかの授業もカルメがしてくれている。

昨日はちょっと困ったこともあったけれど、今は普通だ。



あとはルクスとジュネには、従者っていう人がいる。私にカルメがいてくれるように。

ルクスとジュネには護衛も一人ずついる。でも、この人たちとは、まだ話したことはない。




うん、こんな感じかな。

私の周りにはこんなにも沢山の人がいる。

召喚されて、誰にも保護されず、一人で何も分からず、生きていくことにならなくて良かった。

心の底からそう思ってるよ。



一番はルクスだけれど、皆のことも大切、っていうか、良い人たちだと思う。




ここからはこれまでにあったことを書くよ。


まずは召喚されて、保護されて、色々とこの国について説明されて、洗礼と名付け、魔術計測っていうのをやった。


洗礼は真名の意味を知ること。

名付けは真名から名を付けてもらうこと。

魔術計測は階位と魔力量、許容量を計ること。



この世界には真名と名と意味があるんだよね。


意味は親子や夫婦でも教えないことがあるくらいに、秘密で大事なものらしい。

だから、意味が分からなくても良いし、これってどういう意味?って誰かに聞くこともできない。

私は心の奥深くに埋めて、忘れることにしたよ。使わないし、理解できなかったからね。



で、真名は長く付き合っていくことになる人や、親しい人、そういう人に告げるもので、真名には魔力が含まれるから、階位が分かってしまうらしい。階位の低い人は高階位の人の真名を呼べなかったり、一部しか呼べなかったりする。


つまり、私の真名をきちんと呼べるのはルクスくらいなのだ。

まぁ、名の方で呼ばれることに慣れて来たし、皆に名前でも呼んでもらえるということが嬉しいので、気にしていない。



そう。名付けっていう儀式で、真名を別の言語で表したものを名として使う、ってルクスが言ってた。

この名は、真名よりは含まれる魔力が少ないので、ルクス以外の人でも私のことを呼べる。



真名の意味に100%の魔力があるとすれば、真名には90%、名には45%くらいの魔力が含まれているらしい。

これは信憑性の低い研究結果らしいのだけれど、真名の意味は明かしてはいけないことなので、研究もほとんどされていないらしい。まぁ仕方ないよね。



洗礼とかの儀式を終えて、昼食をとったら、今度はルクスのお仕事が終わるまで、カルメから常識の授業を受けることになった。


そこで、えっと、カルメの貴族らしい言い回しに誤解してしまった私が、魔力圧を出してしまったんだよね。それで授業は中止になった。


魔力圧は、感情の昂りによって魔力が漏れ出て、向けられた人に圧力のような負荷がかかってしまうこと。

特に魔力制御を習得していない私は、そうなりやすいらしい。


それをルクスが仲裁してくれて、カルメと仲直りした。



その後は魔力制御の授業をしてもらうことになった。

ルクスは意外と厳しい課題を出して来るけれど、毎回丁寧に教えてくれるから、授業が嫌になることはなかったな。


というか、むしろ楽しい。

どんどんできることが増えていって、知らないことを知れる。それが楽しいし、ルクスとお喋りできるのも楽しい。

魔術の話を楽しそうに話しているルクスを見るのも楽しい。


それでここに来て最初の日、私の記憶でも最初の日、一日目は終わった。




二日目はカルメから常識の授業と、ルクスから魔力制御の授業をしてもらった。

今考えてみれば、一日、授業しかしていなかったな。

カルメの授業ではこの場所について教えてもらった。


ここは王国、サタロナ王国という国の、ミーレ領っていう領地の、マギシアっていう街にある協会本部の建物。

サタロナ王国の他には、連合国とか、神聖国とか、帝国とかがある。

王国内には九個の領地があって、各地を貴族が領主となって治めているらしい。

各領地の場所や特産品、特徴なんかを聞いて、授業は終わりになった。

うん、頭が一杯になっちゃったんだよね。



ルクスの魔力制御の授業は、まず魔力を抑えることから始まって、魔力を水みたいに注いだり、火を点けるように出したり、溜めてみたりと色々なことをした。




それで、翌日の今日は三日目だ。

今日は本当に色々なことがあった。


まずカルメの授業は、物とかお金とかの単位を教えてもらったり、簡単な計算をしてみたり、ということだった。



その後、ルクスの研究室で、当初の目標の一つだったディグセを作ることになった。

これが私の初めての魔術だったらしい。

まぁ何も分からないから、初めてとは言い難いのだけれど。


ディグセを作って、早速それを使って、私は初めて外出することになった。行き先は文具屋だった。

そこで、私が使うものを買ってくれる予定だったのだが、結局買って帰ったのは、ペン一本とファイル二個だった。

本当は紙とかインクとか、色々買い揃える予定だったらしい。

でも、本当に運命的な奇跡的な出会いがあったので、私たちはそれどころではなくなってしまった。


それは魔術侵食を受けた動物の魔石を加工したペンだった。

その生い立ちはルクスの心を大きく揺らして、私はこれがその機会なのだと思った。


ルクスの境遇と重なる部分があるこのペンを私が大事にする。

ルクスが私にそうしてくれたように。



だから、ルクスにも自分を大切にして欲しい。


そう告げると、ルクスは泣きそうに目元を赤くしながら、幸せそうな微笑みを浮かべて、ありがとうございます、と言ってくれた。


そしてこのペンは、私の勇気と覚悟と感謝の証になった。


その帰り道、ルクスは大切なものができたと言った。私は良かったな、嬉しいな、と思う反面、それが何なのか気になった。


でも、結局、それが何であれ、私がルクスを大切にしたい、ルクスが大切な人だということは変わらないのだ。



そして、その後はファイルを貰って、使い方を説明してもらった。


今、早速、その二つを目の前に並べて、これまでの出来事とその時に思ったことを書いているんだよ。


何だか、呼吸が浅くなってしまうような儚さと、自然と笑みが零れてしまうような幸福を感じていて、私は上手く言葉にできないでいる。


だから、ちょっと説明が長くなってしまうけれど、でも何度でも同じ気持ちになるし、同じことを考えるから、こうして吐き出すように書いている。


うん、このペンを大切にしよう。

それから、ルクスも大切にしたい。

そのために、できることを増やして、色んなことを学んで、大切なものを大切にする方法を探そう。



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