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35.後悔する二人(閑話)

今回は閑話です。


オデット様を送って行ったカルメが早く帰ってきた。

どうやら、オデット様はお疲れのようだ。早くお部屋に戻られたのもその所為だろう。


それもそうだ。あのルクス様の魔力制御の練習を難なくこなしていらっしゃるのだから。


俺はカルメに視線を向ける。カルメは覚悟を決めた表情をしていた。


よし、二人で行こう、死地まで。という決意の元、俺たちは食後のお茶をゆっくりと楽しんでおられるルクス様に声をかけた。


「ルクス様、折り入ってお願いがあります」

「何ですか?」


改まった俺の態度に、ルクス様は不思議そうに首を傾げる。そんなルクス様にカルメが声を上げた。


「どうか、我々に魔力制御をご指導頂けませんでしょうか」

「魔力制御、ですか?ジュネとカルメ、二人がですか?」

「はい」


ルクス様の不思議そうな声に俺たちは声を揃えて、答える。


「二人は十分に制御できていると思いますが」

「いえ、まだまだです」

「これまでのオデット様の制御の練習を拝見して、自分はまだ未熟であると痛感致しました」


俺たちの決意を秘めた声音にルクス様は真剣な表情になって考え込む。


やはり、俺たちには教えてもらえない、か。

いや、俺たちの魔術の才はここで頭打ちなんだろうな。


そう考えた時、ルクス様は慎重に言葉を選んで、俺たちに問いかけた。


「確かに、オデット様の成長は目を瞠るものがあります。しかし、貴方たちはこれまでの経験と実績から十分に魔術に精通していると言えます。これ以上を望むと?」

「…………はい。このままではオデット様にさえ、早々に抜かれることになるでしょう」

「このままでは、いざという時にオデット様を守り切ることができません」


俺たちの別々の、それでも同じ方向を向いた思いに、ルクス様は頷いてくれた。


「分かりました。常に前に立っていたいという気持ちは理解できるつもりです。それに、大切なものを守る術が欲しいという思いも」


ルクス様の口から出た大切なもの、という言葉に俺たちは目を見開いた。


今まで、ルクス様は特別な物を持たずに生きてきたお方だ。

ルクス様にとって特別な物はいつだって、階位に阻まれる物だった。

そんなルクス様に、そんな気持ちが芽生えていたなんて。


俺たちが呆然としている間にも、話は進んでいたようだ。


「いいでしょう。才能がない、というだけでは諦めきれないのならば、その限界まで努力してください。私はそのお手伝いをしましょう」


ルクス様の言葉に俺は心の内に火が灯った気分だった。




そして、その火は直ぐに消え、俺たちの覚悟は砕かれ、その思いは潰えることになる。


まさか俺も、自分がここまで根性がない奴だとは、思っても見なかった。



俺とカルメはそれぞれ、呼吸を乱し、汗を流し、心折れることになった。一晩で。


そして、ルクス様の、オデット様の規格外さ、破天荒さを身を以て知ることとなった。




…………詳しくは、俺の気持ちが立ち直るまで、口外することはできないが、強いて言うならば、やりたいこととできることは違う、ということだけだ。



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