28.月が照らす夜(閑話)
今回は閑話です。
自室に戻り、誰の気配もしなくなった空間で、私はひっそりと息を吐いていた。
あれはまさに、白昼夢だった。
こんなにも、こんなにも興奮したのは初めてのことだった。
今はその興奮の余韻か、何か幸福のようなものの予感に浸っている。
静謐で平穏だった心の湖は、たった一日で、様変わりしてしまった。
しかし、そんな心の変化を、私は快く受け入れている。
それどころか、まるで心の奥底に秘めていた野望が叶ったかのような、叶わないと諦めていた願いが果たされたかのような、そんな喜びを抱いている。
そして嵐の如く現れた、奇跡的な幸運のようなあの方を、私は絶対に手放したくないと、思っている。
こんなにも誰かに執着するのは、初めてのことだ。
あれもこれも、初めてのことばかりで、思考が追い付かない。
そんな事態に陥ることさえ、初めてのことだった。
私はどこか現実味のない思考のまま、明日の予定を考える。
明日は何をしようか。
何から教えようか。
どのように教えようか。
そんなことに考えを巡らせるだけで楽しくなり、また眠気が遠ざかる。
オデット様はよく眠れただろうか。
明日は元気に朝食に来て下さるだろうか。
魔術のことだけではなく、彼女自身のことを考えるのも楽しい。
言いたいこと、教えたいこと、やりたいこと。
思いが尽きぬ湧き水が、この自分にもあったのだということが、新鮮で驚きで、受け入れ難い。
ただ、そんな思考に振り回されている中でも、直ぐに気付いたことがある。
誰がこのような召喚を行ったのだろう。
これから彼女をどのように扱えば良いのだろう。
不可能にも近い奇跡を起こせる人間が他にも居てはたまらない。
こんな有り得ないような存在であるオデット様をどのように扱っていくか、これも問題だ。
原因への対処と、今後の対策。
やるべきこと、考えるべきことは沢山ある。
さて、明日からも忙しい日々が始まる。
ただ、これまでにない、新鮮さと希望に満ちた輝かしい日々だろうという予感はしている。
オデット様に魔術をお教えするのが、楽しみだ。
これまでに感じたことのない感情に、胸が高鳴るということを知った。
活動報告「1.活動報告を書いてみました」を投稿しました。
少しだけですが、これまでの振り返りと予告を書いています。
書いてみただけなのですが、宜しければご覧ください。




