ラブコメごっこはほどほどに、でも社会を変える一歩は見逃さない!②
わたしは少し照れながら紅茶を一口すすり、「わたしとしては、孤児院で見た子どもたちの笑顔を守りたいっていう気持ちが強いの。あの子たちが放置されて大人になったとき、社会に居場所がなかったら悲しいでしょ? 誰かが手を差し伸べれば、ちゃんと自立できると思うし……」
その孤児院の光景を思い出すたび、胸があたたかくなり、同時に前世の男として見逃してきた“弱き存在”を今の自分が支えようとしているのに不思議を感じる。でも、もう逃げる気はない。メリッサが微笑ましそうに「エリシア、ほんと嬉しそうに話すわね」と言うから、わたしは「あ、バレてる?」と照れ笑い。
すると、ルイスが急に「あ、実は僕も、昔孤児院を見学したことがあるんです」と話を始める。「あまり深く関わってはいなかったんですけど、一度だけ父と一緒に行って、子どもたちが施設で食事してるのを見て……すごく貧しいとは思わなかったけど、やっぱり十分じゃないって痛感したんです。あの子たちの笑顔がなんだか無理してるように見えて、すごく胸が痛くて……」
そう言いながら、ルイスは少し表情を曇らせる。「だから、エリシア様の話を聞いて、嬉しいというか、本気でやるなら協力したい。ぼくなんか大した力はないけど、父や兄にもう少し掛け合って……」
わたしは「ルイス……ありがとう。気持ちだけでも心強いよ」と答え、自然と二人の間にほんのりした空気が流れる。ルイスがわたしを優しく見つめ、わたしの中の“前世男”は「やめてくれ、照れる……」と叫んでいるが、今の身体はむしろ温かい何かを感じている。
そして、そんな甘い雰囲気を見逃すはずがない、メリッサがクスクス笑って一言。「まあ、エリシアもルイスも、そろいもそろって『孤児好き』というか、『子ども好き』よね。それはそれでとっても素敵だけど……もしかしてお二人が結婚して子どもでも作ったら、めちゃくちゃ親バカになりそう!」
その瞬間、わたしとルイスは一斉に「はぁあああっ!?」と盛大に反応する。まずわたしは「ちょ、ちょっとメリッサ、何言ってるの!?」と顔を真っ赤に。ルイスはさらに顕著で、「そ、そんな、ぼ、ぼくは……べ、別に、結婚だなんて……!」と耳まで真っ赤に染まり、動揺しまくり。
メリッサはさらに追い打ち。「だって、二人とも子どもの話をするとすごく嬉しそうにするじゃない? もし本当に将来そうなったら、子どもにめちゃくちゃ甘くなっちゃうんじゃないかしら。想像するだけで微笑ましいわ」
「か、勝手に想像しないでよ! わたしは男だったわけ……いや、何でもない!」
思わず前世男発言をしそうになり、わたしは慌てて口を閉じる。ルイスも「そ、そんなこと、考えたことありません!」と否定するが、明らかに挙動不審。顔が火照りすぎて、テーブルにうつ伏せになりかける勢いだ。
メリッサは意地悪い笑顔で「いやー、こんなに可愛い二人が夫婦になったら、絶対素敵じゃない? 子どもができたらどっち似になるのかしら」とさらに妄想を広げ、わたしは「も、妄想しすぎ! や、やめてよ!」と絶叫。
サロン内は真っ赤な二人と、ケタケタ笑うメリッサ、そして周囲で控えるメイドが「お、お嬢様……大丈夫ですか?」と心配しつつもクスクス笑いをこらえる、という騒然とした雰囲気に包まれる。
ルイスはもう限界なのか、「ぼ、僕ちょっと……」と赤い顔を手で覆う。メリッサが「はいはい、冗談よ。でもまあ、二人とも子ども思いであることに変わりはないでしょ?」としれっとまとめる。
(この子はほんと……。だからわたしから主催してやろうと思ったのに、結局振り回されてるじゃん!)
わたしは深呼吸して気を取り直し、「……まあ、子ども好きなのは事実だけど、それとこれとは別……。あと、暴走しすぎだよ、メリッサ……」と苦情を言う。メリッサは肩をすくめて「ごめんなさい、でも二人の表情があまりに可愛くて、つい……」と悪びれない。
なんとか落ち着きを取り戻し、わたしたちは再びお茶を飲む。ルイスが「あ、あの……すみません、つい取り乱して……」と縮こまるが、わたしは苦笑しながら「ううん、わたしも同じだから」と答える。そのやり取りを見てメリッサは「ほらね、二人の息はぴったり」とニヤリ。
もうこれ以上ツッコまれては困るので、わたしはあえて話題を少し戻す。「えっと、さっきの社会支援の件だけど……メリッサの家でも何かやってる? 小領主として、孤児への援助とか、税金とか……」
メリッサは「ああ、うちは父が少し前から“食糧の寄付”だけはしてるけど、制度的にまとまってはいないわね。財源の問題もあるし、よそから課税を押し付けられるのは嫌がる人もいるでしょうし……。でもエリシアの案、面白いと思うわ。今度父上にさりげなく話してみる」と前向きな反応。
ルイスも「ぼ、僕もやっぱり、ちゃんと父や兄に掛け合ってみます。もし成功したら、各地でやり始めるかもしれませんし……」と強く頷く。わたしは「ありがとう、二人が協力してくれるなら、さらに可能性が広がりそう」とほっとする。結果、わたしの初主催お茶会は、だいぶ甘酸っぱい騒ぎにもなったけれど、本題の「社会支援の提案」はきちんと認めてもらえた形だ。
それからは穏やかな時間が流れる。わたしが用意した新作タルトを「美味しい!」と二人が絶賛し、メリッサは「これ、どこで手に入れたの?」と興味を示す。ルイスは「見た目が綺麗ですね……」とカット面を褒めつつパクつき、主人公としては「ふふ、わたしも試食したけど美味しかったから絶対喜ぶと思った」と胸を張る。
この段階でルイスが完全に落ち着いたわけでもないが、先ほどの「子どもができたら……」発言の波を乗り越えたおかげで、やや穏やかな会話に戻っている。メリッサも「ふふ、エリシア、今回の企画はなかなかやるじゃない」と満足げ。
(まあ、メリッサが満足してるならいいか……結局、また茶化されたけど、主導権は少しは握れたかな?)
お茶会もそろそろ終盤。わたしは最後に「今日、一番言いたかったこと」だけを強調しておこうと思い、再度話題を社会支援へと戻す。「つまり、こういう福祉を進めるには、孤児院だけじゃなく、例えば子どもたちを育てる施設や、教育の仕組みを整えることが大事なの。もちろん課題は山積みだけど、わたしは無理のない範囲でやっていくつもり。もしまた新しい進捗があったら、二人とも相談に乗ってくれる?」
ルイスは「はい、ぜひ力になりたいです!」と目を輝かせる。メリッサも「わたしにできることがあるなら、喜んで協力するわ。面白そうだし」と、相変わらずの表現をしながら肯定。
何気なく顔を上げると、ルイスがこちらをじっと見つめているのに気づき、わたしはドキリ。彼は先ほどの話でテンションが上がったのか、もしくは単にわたしへの好意が高まったのかわからないが、視線が熱い。メリッサはそれに気づいてニヤッと笑い、「あら、ルイス様ったら、そんなにエリシアを見つめてどうするの?」と口を開きかける。
わたしは「ストップ!」と言わんばかりに手を挙げ、「もう、やめてよ……これ以上からかわないで!」と制止。メリッサは「えー?」と可愛い声を上げて首をかしげるが、わたしが本気で恥ずかしがっていると察すると、微笑みつつ黙ってくれる。
(ありがたい……もう一発くらったら心臓がもたない)
こうしてお茶会は無事終了。最初はどうなるかと不安だったが、三人で社会の話もできたし、ルイスの内面が見えたのも嬉しい。メリッサのおふざけはあったけれど、そこを乗り越えた達成感がある。
わたしは「今日は来てくれてありがとう。楽しんでもらえたなら、わたしも嬉しいわ」と締めの言葉を述べる。メリッサは「ええ、とっても満足よ。また呼んでね。今度はもっと大きなパーティーでもいいかも?」と返し、ルイスは「すごく勉強になりました。お茶も美味しかったです。ありがとうございます!」と深くお辞儀。
送迎の馬車を待つ間、わたしは三人で玄関ホールに立って雑談を続ける。メリッサは「エリシア、やるじゃない。こんな風に自分からお茶会を開くなんて、わたしは喜んで協力するわよ?」と褒めつつ、不意に小声で耳元で囁く。「でもね、あなた、ルイスにもうちょっと優しくしてあげれば? 彼、ほんとにあなたが好きみたいよ」
「す、好きって……そんな直接的な……」わたしは思わず言葉を詰まらせるが、メリッサは「ふふ、顔に出てるんだから仕方ない。ま、あなたがどう答えるかは自由だけど」とウインク。
(やっぱり最後にこういうトラップを仕込んでくるんだ、メリッサは……)
一方、ルイスは少し離れたところで、メイドとやり取りをしつつ馬車の準備をしている。時折こっちを見ては視線を逸らす仕草が可愛い。前世男のわたしとしては複雑だが、今は「ちょっとだけ胸がキュンとする」自分もいるから困る。
(もう、どうやって処理すればいいんだ?)
結局、三人は玄関前で「それじゃあ、また近いうちに」と別れる。メリッサとルイスの馬車は方角が違うが、ほぼ同時に出発するとのこと。わたしは「本当にありがとう、二人とも。気をつけて帰ってね」と見送る。
ルイスは乗り込む直前、振り返って「エリシア様、あの、社会のこと……また詳しくお聞きしたいです。今度はちゃんと話す機会を……」と少しドキドキの瞳で言い残す。わたしは微笑んで「うん、もちろん。いつでも歓迎だよ」と答えると、彼はホッとしたような、でも恥ずかしそうな笑顔で馬車に乗り込む。
メリッサは「じゃあね、面白かったわ。最後に胸の話をしなかっただけ感謝してよ?」と意地の悪い冗談を言い、わたしは「じ、十分したでしょ……」と反論。笑い合ったあと、彼女も馬車に乗り、出発していく。




