異世界ロミオとジュリエット
エルフの里を出て、
エントやドライアドに見送られ、
暫く歩くと、
雄ドラゴンとエルフ女が居た。
「うわー!?エルフの追っ手だー!?」
「殺さないでー!」
雄ドラゴンの方は、
サワイに似た翼竜だが、
首太く短く、
全身尖った固そうな鱗が並び、
サワイより強そうな見た目…
だが腰を抜かして私を見る様は、
精神的には弱そうだ…
まるでゴートが、
ドラゴンだったら、
こうだろうなな感じ。
エルフ女の方は、
金髪色白尖り耳は、
一般的なエルフなのだが、
私に怯えて震えている…
立場弱い、
ダークエルフ、奴隷エルフ、ハーフエルフにも備わっていた、
誇りを感じるドヤ顔さが、
微塵も感じられない…
「いやいや追っ手じゃないし
殺さないわよ…」
「え?今エルフの里から出たのに!?」
「オーベロン王に招かれたけど…
ただの客で家臣じゃない。
貴方たちそもそも誰?」
「本当に本当に、
追っ手じゃないのね!?」
「えーとはじめまして!
僕はクエレブレと言います。
こっちはサナ」
「私は怪物の魔女、
聞いた事有る?」
「あの人間を殺し回って、
勇者を退け、
街を滅ぼすあの!?」
「いやー!殺さないでー!
食べないでー!」
「いやいや…
そうだけどそうじゃない…
貴方たちモンスターを、
人間から守るためだから」
私はどんな風に見られているんだ!?
人間どもはまだしも、
モンスターにまで恐れられるのは、
傷付くなあ…
「えーと…で、
貴方たちは何なの?
ドラゴンとエルフは、
仲悪いと聞いたけど…」
「はい…実は僕たち、
種族を越えて惹かれ合った、
恋人同士なんです…」
「ですが私たちは、
決して許されぬ仲…
ゆえに駆け落ちしているんです」
なるほどドハワールドの、
ロミオとジュリエットか…
連絡ミスせず駆け落ちしたなら、
むしろロミジュリより手際良い…
「なるほど…種族越えた仲なら、
ご覧の通り私もよ…
でもまだこんなとこに居たらダメ。
もっと遠くに逃げないと、
本物の追っ手が来るわよ」
「あっハイ!
おっしゃる通りで…」
「ワイバーンにドラゴニュート、
メタルゴーレムまで!」
「それともし追っ手が来たら、
『手を出したら怪物の魔女が、
黙ってないぞ』と言えば、
多分怯むと思うわ」
「確かに!」
「それに私は怪物帝国と言う、
モンスターの国建国するんだけど、
そこでは貴方たちみたいな、
種族を越えた愛も婚姻認めるわ。
モンスター間も差別はさせない」
「す!凄い…」
「それとゴート、
何か有ったら私たちを呼べる様な、
笛か何か有る?」
「一回しか使えないのなら、
有るには有るだが」
「何から何まで、
ありがとうございます!」
サナは笛を受け取り、
クエレブレに乗って、
飛び去って行った。
ああいうカップルは、
応援したくなる…
オーベロン王も、
人狼の私に言い寄ったり、
少数派エルフ優遇するなら、
あの二体も認めれば良いのに…
そこは甘いな…